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北京パラリンピック3冠、アルペン村岡桃佳の強さの理由は天性の対応力と頭脳

2022 3/14 11:00田村崇仁
アルペン3冠を達成した村岡桃佳,Ⓒゲッティイメージズ

Ⓒゲッティイメージズ

通算4個の金は冬季大会の日本勢最多

北京冬季パラリンピックはアルペンスキー女子座位で25歳の村岡桃佳(トヨタ自動車)が高速系の滑降とスーパー大回転、技術系の大回転と合わせて3冠を達成し、今大会のヒロインとなった。

座位の1大会で三つの金メダルは冬季大会の日本勢の史上最多記録に並び、自身通算4個目の「金」は単独最多。回転は5位で表彰台を逃したが、スーパー複合の「銀」と合わせ4種目で4個のメダルを手にし、今大会を金3、銀1で終えた。出場5種目全てで表彰台に立った前回2018年平昌大会に続き、2大会連続の全5種目でのメダル獲得はならなかったが、強さを改めて証明した。

北京冬季五輪で日本選手団主将を務めた、スピードスケート女子の高木美帆(日体大職)と同じ1大会4個のメダル。「私自身はまだまだ未熟だが、こうした成績に恥じない人間になりたい」とコメントは控えめだが、パラの日本選手団主将を務める村岡は名実ともにパラアスリート界の顔に成長した。

コンタクト外れても「金」に輝く対応力

村岡の強さを物語るのがスーパー大回転を制し、2冠をもぎ取ったレースだった。スタート直後の崖のような急斜面に加え、2カ所の直角カーブ、さらにはハーフパイプの中を滑るようなすり鉢状の難所も待ち受ける難コース。この試合は、レース中にコンタクトレンズが外れ「一瞬、何も見えなくなった」という大ハプニングが起きた。

裸眼の視力は0.1ほど。それでも冷静さを失わず、レース開始前のコース下見で頭に入れた情報と両サイドに引かれたコースの目安となるブルーラインを頼りに、屈指の難コースを滑り降りた。自分の目標とする滑りとはほど遠くても、持ち前の記憶力と天性の対応力で乗り切った形だ。

周囲が称賛するのは村岡のそんなクレバーさと対応力にある。一度確認したコースのイメージを再現する能力が傑出していると言われる。レース後は、後に滑る男子立位チームに雪面状況などを伝達するが、その情報も極めて的確だ。

競技初日の時速100キロを超える滑降でも攻めるポイント、スピードを抑える局面を事前にシミュレーションし、理想通りのラインを描いた。公式練習で転倒し、風対策にも四苦八苦したが、コースを隅々まで確認して情報を自分の頭で分析。完成形のラインにたどり着いた。

夏冬「二刀流」挑戦で体幹も強化

前回の平昌大会で5個のメダルを獲得し、パラスポーツのシンデレラガールとなってから4年。平昌大会後の夏冬「二刀流」への挑戦も新たな扉を開く原動力となった。半年前に車いす陸上で東京パラに初参戦して100メートルで6位入賞。この経験で体幹が強化され、斜度のある難コースでも安定した高速滑走やターン技術を支えた。

平昌大会後のワールドカップ(W杯)は「勝って当然というプレッシャー」に苦しんだ時期もあったが、陸上への挑戦で心身とも一回り成長。スキーへの情熱と向上心もさらに高まる相乗効果が生まれたといえる。

ロシアのウクライナ侵攻で平和と反戦が打ち出された異例の大会。日本代表選手団の主将は「背中で引っ張る」と覚悟を決めた通り、その重責を果たす大車輪の活躍だった。

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