非紳士的プレーとして厳しく罰せられる「インテンショナルノックオン」
ラグビーは紳士のスポーツとされている。一つ間違えば、相手を死に至らしめるような危険と隣り合わせの競技ゆえ、プレーヤーには高潔な人格を備えていることが求められるからだ。たとえレフェリーや他の人に見えないところでもルールを遵守し、正々堂々戦うことこそが「紳士」の定義である。
そして「紳士」にふさわしくない反則は、ここ数年で特に判定が厳しくなり、罰則も重くなった。重罰化された二つの反則について解説する。
インテンショナルノックオン(Intentional knock-on)とは直訳すれば「意図的なノックオン」という意味。通常のノックオンはボールを前に落としてしまうという反則であり、相手ボールのスクラムで試合が再開される。
「インテンショナルノックオン」とは、攻撃側のプレーヤーが放ったパスを守備側のプレーヤーが意図的にはたき落としたと判定された場合に宣告される。攻撃側がパスを成功させていたら、大幅にゲインされたり、トライにつながるなどという場合に、守備側のプレーヤーが犯してしまうことが多い。
こうしたピンチにおいては、一か八か、相手のパスを奪い取るインターセプトで局面の打開を図ろうとする意思が働くためである。首尾よくインターセプトに成功すればそれこそ大逆転に結びつくことすらあるのだが、失敗してインテンショナルノックオンを犯すとその局面だけでなく、試合全体に響くほどのピンチを招いてしまう。
インテンショナルノックオンの判定が下った場合、最低でも攻撃側にはペナルティーキックの権利が与えられる。もしそのパスが通っていればトライが成立したとレフェリーが判断すれば、認定トライが与えられる場合もある。
また、このインテンショナルノックオンが度重なったり、明らかに最初からボールをはたき落としにいったように見えるなど、悪質と判断された場合にはイエローカードが提示され、インテンショナルノックオンを犯したプレーヤーは10分間の一時退場を命じられる。チーム全体にとっての危機を招く、危険な反則なのである。
このプレーは、非合法的に相手の正当なプレーを邪魔したという意味で「非紳士的」なプレーとみなされ、厳罰化されるようになった。近年ではTMO(テレビジョン・マッチ・オフィシャル=ビデオ判定)の普及により、一旦はプレーを続行させても、その後の映像確認により、特にこの反則はしっかりと取られるようになった。
TMOの映像がTVの画面に写されることも多くなってきたので、その際はぜひノックオンを犯した選手の手のひらに注目していただきたい。手のひらが上を向いていれば、ボールを取りに行ったとみなされ、手のひらが下を向いていればボールをはたき落としに行ったとみなされる。
ただのノックオンなのか、インテンショナルノックオンなのかはさすがに一番近いところにいるはずのレフェリーですら判断は難しい。TMOという技術の進歩がもたらしたルールの変化の一つである。