山本“KID”郁徳と同じ右膝靱帯を損傷
これまでも大晦日の格闘技では、多くのビックマッチが怪我を理由に流れたが、格闘技ファンをこれほどまでに嘆かせてしまう結果になったのは久々であろう。
堀口恭司(29)の怪我によって2019年を締めくくる大晦日「RIZIN.20」の欠場が確定し、朝倉海(26)とのリベンジマッチは白紙になった。堀口自身が発したSNS投稿から既に周知の通り、受傷した右膝については既に手術も終えて、順調にリハビリ生活に入っているという。
堀口と言えば「PRIDE」全盛期を幼少期に観て憧れを抱き、MMA格闘技の道を志した選手であり、日本総合格闘技界の歴史において、いまや伝説の一人である故・山本“KID”郁徳との師弟関係の下で実績を積み上げてきた選手。これまで通算31戦28勝3敗と輝かしい実績を持っている。
そのトップ選手が、奇しくもKIDと同じく右膝の靱帯を損傷し、選手として全盛期と言われている最中でトップ戦線から離脱を余儀なくされたことは大きな事件だ。
堀口の怪我は全治10ヵ月と言われている。実はKIDが膝の靱帯を損傷した時も、2008年7月に怪我をして、復帰戦は2009年の5月であり、同じようなタイムスケジュールで10か月の休業期間を経て復帰した。
ただ、KIDは術後の経過が芳しくなく、その後は勝ったり負けたりと鳴かず飛ばずの時代が続き、思うように結果を出すことができなかった。膝の靱帯の再建手術は、たとえ成功したとしても、それまでの最大パフォーマンスに比べたら幾分かは劣る状況となり、選手生命にも大きく影響を与える。
堀口の選手生命に影響?
実は私自身も、競技は違えどスノーボードで通称マンモスキッカーと呼ばれる20m台の大型ジャンプ台で練習中に、右膝の前十字靭帯を断裂する怪我を負ったことがある。
しかも、私の場合は一つのミスで、前十字靭帯断裂に後十字靭帯断裂、更には膝蓋靱帯断裂に内側側副靱帯と4か所が断裂して、よもや足がもげる一歩手前の大ケガだった。
当時、サッカー日本代表の帯同医師でもあった膝の再建手術の権威、池田浩医師に執刀してもらったが、それでも3年半もの間は、正常に膝が機能することがなかった。池田医師曰く、崖から落ちて一命をとりとめて足がもげなかった症例ぐらいしか、一つの事故で4つも膝の靱帯が断裂することなんてないと説明された。
膝の怪我の程度は違えども、堀口の足がもげていなことを一つの判断基準にしたら、私ほどひどい状態ではないとはいえ、膝の怪我はそれほどまでに選手生命に大きな影響を与えるわけだ。ましてやタックルなど、突進力が武器の堀口にとって利き足の右に不安を感じながら今後は戦わなればならないとなると心配は尽きない。
これまでも騙し騙し戦ってきたことを吐露している事情も考えるに、決して軽度の膝の状態ではない事も推察できる。それ故に、今後の彼の格闘家人生が「いばらの道」であることには違いない。
それでも、堀口本人は、これまで同様に気丈にふるまい「日本の格闘技をもっと盛り上げる」と声高らかに宣言している。
言い換えれば、ビックマッチをあと何回できるのかを予兆するものであり、堀口がKIDのように、あと数試合のみ…日本格闘技界を盛り上げるためにカウントダウンが始まったという意味にも捉えることができる。10か月後の復帰戦に期待しつつも、その選手生命のカウントダウンにどうしても落胆を隠せない。
朝倉vs天心へプロモーター動く
一方で、大晦日の試合が白紙になった朝倉海は、「どんな相手を用意されても戦う」と強気な姿勢を示している。
ファン心理としては、驚くほどのビックネームの選手と朝倉海が対戦することに期待してしまう。そうなると、やはり那須川天心の名前が最有力候補の一人となるだろうか。
ファンの間でも既に那須川天心と朝倉海の大晦日対戦を熱望する声は高まっており、これに呼応する形で、両選手へ主催者プロモーターも、あくまで大晦日の対戦候補の一人という前提での打診はあったという。
もちろん、この二人が戦うことになれば、スタンディングのルールならば那須川天心に分があり、総合格闘技ルールならば明らかに朝倉海に分がある。
ただ那須川天心も9月の試合で左拳の怪我をしており全治3か月の診断。これも大晦日に間に合わせることができるのかは、逆算しても微妙なところといえる。
14日の大晦日追加対戦カードの発表記者会見でRIZINの榊原信行CEOが「近々、スペシャルな対戦カードを発表したい」というが、どんな“びっくり対戦カード”が発表になるのか楽しみだ。