1世紀ぶりの開会式はセーヌ川、常識覆す計画
実に1世紀ぶりとなる2024年パリ五輪開幕まで7月26日で2年を迎えた。近代五輪の創始者、ピエール・ド・クーベルタン男爵の母国に聖火が戻ってくる歴史的な祭典は、新型コロナウイルス禍で1年延期された東京大会で開催可否を巡り国内外の逆風が吹き荒れ、傷ついた五輪のイメージを回復する「分岐点」としても期待される。
世界屈指の観光名所を舞台に、コンコルド広場やベルサイユ宮殿など既存施設を最大限活用した華やかな大会の計画もさることながら、最大の特徴は「初物づくし」という点だろう。
2年前に合わせて公表された大会組織委員会の資料によると、常識を覆す斬新な演出で最も注目されるのは、パリ市中心部を流れるセーヌ川(全長780キロ)での開会式だ。大会スローガンはパラリンピックと共通で「GAMES・WIDE・OPEN(広く開かれた大会に)」。その精神の通り、通常はスタジアムで開く開会式を「開放感」を重視して競技場外で行うというのだから、さすが「芸術の都」の創造力というほかない。
最近はユース五輪でこうした競技場外の例もあるが、選手らは約160隻の船でセーヌ川を下り「入場行進」する計画。60万人規模の市民らを河岸や橋に観客として受け入れ、無料での観覧も可能にする方針だ。
組織委は「開会式やマラソンは観客と一体となって今大会の象徴になる」と強調する。もちろん競技場外で行う開会式は夏季五輪史上初めて。一方で地元メディアによると、テロのリスクなど安全確保が大きな課題となり、パリ五輪組織委員会とパリ警視庁が安全面で激しく対立したとも伝えられる。
選手は史上初めて男女同数、女子マラソンが最終日
ジェンダー平等を推進する流れは東京大会から加速しており、パリ五輪の女子の参加比率は東京の約48%を上回って50%になり、史上初めて男女同数の大会が実現するのも見どころだ。さらに女子マラソンを男子の翌日の五輪閉幕日となる最終日に初めて実施することも公表された。
歴史をひも解けば、1900年の第2回パリ大会から女子選手にも門戸が開かれ、テニスやゴルフに22人が出場した。古代五輪は「女人禁制」で行われ、近代五輪の父であるクーベルタン男爵も当初は女子選手の参加に反対の姿勢だったといわれるが、時代の流れで男女同数(男子5250人、女子5250人)が実現するのは不思議な縁といわざるを得ない。
組織委は2年前に合わせて公表した詳細な日程で、男女平等の精神を反映し、卓球は初めて女子の種目で競技を締めくくり、大会最後の金メダルはバスケットボール女子で決まることにもなった。
初採用のブレイクダンスはコンコルド広場
パリ五輪では新世代に人気のブレイクダンスがデビューするのも楽しみなポイントだ。東京大会で脚光を浴びたスケートボードなど都市型スポーツは観光名所のコンコルド広場で実施されるというのも新たな時代を象徴している。
大半の競技会場がサンドニ地区の選手村から半径10キロ圏内の「コンパクト五輪」。組織委は約1000万枚に上る五輪観戦チケットの価格も発表し、最低価格は全種目24ユーロ(約3400円)で計100万枚以上を占めることになった。
お手頃な価格設定で若者も引き込み、「オープン」「市民参加型」をコンセプトに掲げる「開かれた祭典」にする試みだ。
バッハ会長も「新時代の五輪」に期待
国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長はパリ五輪開幕まで2年の7月26日に現地を訪問し「世界は新時代の五輪となるパリ大会に迎えられるだろう。男女平等、若者向けの都市型スポーツ、新しい経験、フランスの人々のユニークな文化と温かいもてなしに支えられ、記念すべき大会になる」と公式サイトで期待感を込めた。
長期政権を築くバッハ会長も任期中としてはパリ大会が最後の五輪となる。新たな五輪の転換期として思い入れは相当なものだろう。
大会は2024年7月24日にサッカー男子などで競技が始まり、7月26日が開会式で8月11日に閉幕する。パラリンピックは8月28日から9月8日まで行われる日程となる。
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