最新鋭のマシンが24時間走り続ける
モータースポーツには、世界三大レースと呼ばれる特別なレースが3つある。アメリカで1世紀以上の歴史を持ち、380km/hで行われる究極のスピードレース「インディ500」。逃げ場ゼロの市街地をF1マシンで駆け抜ける世界で最も優雅なレース「モナコGP」。そして、1台のマシンを3人のドライバーが交代で乗り、24時間走り続けるフランスの「ル・マン24時間レース」。これらは、参加するだけで賞賛に値し、優勝すれば歴史に名を残せるほど名誉あるレースだ。
モータースポーツ発祥の地、フランスで生まれたル・マン24時間レースの始まりは1923年。今では最新鋭技術を詰め込んだレース専用マシンを使用しているが、もともとは市販車を使用していたようだ。また、現在はWEC(世界耐久選手権)の一戦に組み込まれている。
WECとは、一番速いプロトタイプカーを使用し総合優勝を争うLMP1クラス、LMP1同様プロトタイプカーを使用するもプライベーターチームで行われるLMP2クラス、市販車をベースにしたGTマシンを使用し、プロドライバーによってレースが行われるGTE-Proクラス、GTE-Proと同じGTマシンを使用するも主にアマチュアドライバーで行われるGTE-Amクラスの4つのカテゴリーに分けられ、混走する耐久レースだ。
プロドライバーとアマチュアドライバーでは運転技術が違うため、スピードに差が出る。そのため、走行中に思わぬドラマを生み出すこともある。だが、そういったイレギュラーな出来事が起こりやすい環境も、レースを面白くする要因の一つなのだ。
名前の通り24時間行われる「ル・マン24時間レース」は、ドライバー、チームスタッフ、運営、観客、関わる全ての人にとって過酷なレースといえる。
3人のドライバーは一台のマシンを交代で乗り、休憩時間は仮眠や食事、マッサージに充てる。ドライバーよりも大変なのは、レース中の仕事はもちろん、車の整備やセッティング、ピットの設営などの準備、レース後の大掛かりな片付けをするチームスタッフだ。3〜4日はまともに寝ることができず、レース中は時間が空いた時に順番に仮眠をとる程度となる。それは運営側も同様だ。
このように、ル・マン24時間レースは多くのスタッフの熱心な仕事ぶりによって成り立っており、ドライバー以外の人々の頑張りを知っておくと、レースの楽しさだけではなく、難しさや厳しさも知ることができる。