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睡眠時間はほぼなし 日本人6人が出場するル・マン24時間レースとは

2019 6/12 15:00河村大志
ル・マン24時間レース2018Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

最新鋭のマシンが24時間走り続ける

モータースポーツには、世界三大レースと呼ばれる特別なレースが3つある。アメリカで1世紀以上の歴史を持ち、380km/hで行われる究極のスピードレース「インディ500」。逃げ場ゼロの市街地をF1マシンで駆け抜ける世界で最も優雅なレース「モナコGP」。そして、1台のマシンを3人のドライバーが交代で乗り、24時間走り続けるフランスの「ル・マン24時間レース」。これらは、参加するだけで賞賛に値し、優勝すれば歴史に名を残せるほど名誉あるレースだ。

モータースポーツ発祥の地、フランスで生まれたル・マン24時間レースの始まりは1923年。今では最新鋭技術を詰め込んだレース専用マシンを使用しているが、もともとは市販車を使用していたようだ。また、現在はWEC(世界耐久選手権)の一戦に組み込まれている。

WECとは、一番速いプロトタイプカーを使用し総合優勝を争うLMP1クラス、LMP1同様プロトタイプカーを使用するもプライベーターチームで行われるLMP2クラス、市販車をベースにしたGTマシンを使用し、プロドライバーによってレースが行われるGTE-Proクラス、GTE-Proと同じGTマシンを使用するも主にアマチュアドライバーで行われるGTE-Amクラスの4つのカテゴリーに分けられ、混走する耐久レースだ。

プロドライバーとアマチュアドライバーでは運転技術が違うため、スピードに差が出る。そのため、走行中に思わぬドラマを生み出すこともある。だが、そういったイレギュラーな出来事が起こりやすい環境も、レースを面白くする要因の一つなのだ。

名前の通り24時間行われる「ル・マン24時間レース」は、ドライバー、チームスタッフ、運営、観客、関わる全ての人にとって過酷なレースといえる。

3人のドライバーは一台のマシンを交代で乗り、休憩時間は仮眠や食事、マッサージに充てる。ドライバーよりも大変なのは、レース中の仕事はもちろん、車の整備やセッティング、ピットの設営などの準備、レース後の大掛かりな片付けをするチームスタッフだ。3〜4日はまともに寝ることができず、レース中は時間が空いた時に順番に仮眠をとる程度となる。それは運営側も同様だ。

このように、ル・マン24時間レースは多くのスタッフの熱心な仕事ぶりによって成り立っており、ドライバー以外の人々の頑張りを知っておくと、レースの楽しさだけではなく、難しさや厳しさも知ることができる。

歴史であり、お祭りであり、文化である

フランスの文化ともいえるル・マン24時間レース。その舞台となるサルトサーキットがあるル・マン市では、レースが始まる前からお祭りモードだ。長い歴史があるということは、その国や町でレースが認知されており、支持され受け入れられているということだろう。

毎年恒例の公開車検をはじめ、ドライバーたちが乗ったクルマが街中を走るパレードには多くの観客が足を運び、賑わいをみせる。レースを支える運営には、毎年多くのボランティアが参加しており、彼らの姿からはレースに対する感謝と尊敬の念を感じる。

長く、世界最高のレースの一つとして続いているル・マン24時間レース。その魅力は、最先端マシンと世界最高ドライバーの共演だけではない。国や地域に根付き、共に歩んできた歴史が唯一無二の存在として世界中の人々を魅了している。

今年は、ル・マン連覇と今シーズンのWECのシリーズチャンピオン目指す中嶋一貴、同じトヨタでル・マン初優勝を目指す小林可夢偉など、日本人ドライバーが6名参加する予定だ。

6月15、16日、今や文化ともいえるモータースポーツ「ル・マン24時間レース」の素晴らしさを是非感じていただきたい。


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