はからずもこちらも猛ペースに
フィリーズレビューと同日施行となるアネモネSは時間差で桜花賞の最終トライアルとなっている。たった2枚の出走権をかけて12頭が出走した。
注目は重馬場の新馬戦で鋭く伸びたバルトリ、中山の菜の花賞惜敗のフェルミスフィア、2歳時に2度の重賞好走があるビッククインバイオに集まった。
レースはファルコンSを除外されて回ってきた関西馬インザムービーがスタートを決めたビッククインバイオを交わし2角手前でハナに立ち、ペースを落とさずに飛ばした。前半800mは46秒5。菜の花賞が48秒4、フェアリーSでも47秒0だったので、一連の中山マイルの3歳牝馬限定戦としては厳しい前半となった。
直線入口でインザムービーを捕らえたのは番手のビッククインバイオ。ここまで強い相手と戦ってきた経験から力強く坂をあがってくる。あと100m、50mという地点で脚が鈍り、それを背後にいたインターミッションが捕らえ、フェルミスフィアが追う。ビッククインバイオからこぼれた出走権を2頭がつかむかというところで後方待機策のフィオリキアリが大外を伸びてフェルミスフィアから奪ってみせた。
フィリーズレビュー同様に切なくなるほどの険しい攻防だった。結果的に桜花賞出走権をつかんだのはインターミッションとフィオリキアリ。前者はマイナス10キロで馬体重400キロ。桜花賞という晴れ舞台をなんとしてもつかみたい、そんな渾身の仕上げだった。後者は関西馬。西のフィリーズレビューではなく、少しでも手薄なアネモネSへの出走。権利を取るべく覚悟の東上だった。本番は阪神、トライアルも阪神、東上する必要はないにも関わらず若駒にとって負担になりかねない輸送を強いる。これもまた桜花賞出走への希望をかけたチャレンジだった。
同日東風Sと比較すると……
ではそのアネモネSはどう評価すべきだろう。陣営の想いについては十分触れたので、ここからはいささかドライに馬券的な意味合いからジャッジしたい。
アネモネSの直前に同距離の古馬オープン特別の東風Sがある。本来は古馬2勝クラスぐらいと比較するのが適当であり、オープンと比較するのは厳しいわけだが、直前に同距離のレースがあるのは珍しいことでもあり、比較対象としてみたい。
アネモネS 1分35秒5 (前半800m46秒5-後半800m49秒0)
12.3 - 11.1 - 11.3 - 11.8 - 11.8 - 12.3 - 11.9 - 13.0
東風S 1分34秒1 (前半800m45秒6-後半800m48秒5)
12.3 - 10.7 - 11.1 - 11.5 - 11.8 - 12.0 - 11.9 - 12.8
どちらもハイペースであったが、全体的に僅かな差の積み重ねが全体時計に影響したようである。ビッククインバイオが先頭に立った残り400~200mは古馬と互角であり、やはり力があることがわかる。最後の13秒0で後続に捕まったわけだが、今後も1400m戦であれば3歳オープンでも戦える力は十分にある。どちらかといえば前半のラップに差があるので、前半で先行したビッククインバイオと東風Sとラップに差が少ない後半に脚を使った正攻法の競馬をした1着インターミッション、3着フェルミスフィアあたりは評価した方がよさそうだ。2着フィオリキアリの脚力も同様だが、最後に1、3着馬が苦しくなったぶん突っ込んできたという見方をすべきか。
全体時計の1秒4差はオープンとの比較で凡戦とも言えないが、例年並みのレベルであったと判断するのであれば、やはり桜花賞で勝負になるか否かは厳しいと言わざるをえない。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて「
築地と競馬と」でグランプリ受賞。中山競馬場のパドックに出没。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌「優駿」にて記事を執筆。
