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【フィリーズレビュー】エーポス勝利も敗れた中で桜花賞で侮れない馬とは?

2020 3/16 14:37勝木淳
フィリーズレビューインフォグラフィックⒸSPAIA

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超ハイペースを徹底分析

チューリップ賞が桜花賞有力馬たちによる文字通りの試走であったのとは対照的に今年もフィリーズレビューはただ一歩前へ進む、桜花賞への望みをつなぐ戦いとなった。

最終的に1番人気に支持されたカリオストロが前走の万両賞と同様に先手を奪ったが、ハナに立つまでにナイントゥファイブらの抵抗があり、てこずった印象があった。その後も後続のプレッシャーによってペースは落ちず、前半600mは33秒4、これは昨年までの10年でもっとも速いラップ。自身の万両賞での記録は34秒1であり、明らかなオーバーペース。直線でカリオストロを交わしたナイントゥファイブが先頭に立った刹那、その直後のインに潜んでいたヤマカツマーメイドが捕らえに出るも、坂を上がってからやや苦しくなったところに中団馬群のインにいたエーポスが鋭く伸びて差し切った。

とにかく権利をという馬と人の執念渦巻く直線の攻防は見ごたえ十分だったが、後半600mは36秒0、二転三転は当然ともいえる前傾ラップであった。それでも追い込み勢が上位を占めず、内枠の中団待機馬と先行2頭で決まった点をどう評価するべきだろうか。

カリオストロが4着に抵抗していることからもハイペースながら先行馬に有利な馬場状態であったことは確かであり、その場合はやはり差してきたエーポスの評価は下げられない。ただラップ的には先行策から一旦先頭に立ったヤマカツマーメイドも侮れまい。1400mのファンタジーSでレシステンシアと0秒5差、マイルの阪神JFでは同馬に1秒2差。ベストは1400mではないかという見方もあるだろうが、GⅠでは一歩引いた競馬だったので、この2着で自信をつけて本番先行するようであれば怖い存在だ。

というのも超ハイペースながら勝ち時計は1分21秒0。昨年までの10年間と比較しても17年と同タイムであり、決して凡戦ではない。前半600m33秒4で突っ込んでいる以上、後半600m36秒0は案外悪くはなく、終いはしっかりまとまっているのではなかろうか。

今年と同タイムだった17年フィリーズレビューで先行策から2着に粘ったレーヌミノルは桜の女王に輝いている。その年の桜花賞は単勝1.4倍ソウルスターリングが3着、先行したレーヌミノルが同馬を振り切って勝った。単純比較は難しいが、ヤマカツマーメイドはこれまで重賞戦線でもまれた経験もあり、改めて先行策をとれば、このレースの経験からレシステンシアの厳しいペースに対応できるのではないか。あながち甘く見てはいけない存在だ。

このレースからわかる1400m戦対策

1400mという距離は昔から難しい。GⅠの施行がないいわゆる非根幹距離であり、1400m巧者というのはいつの時代も存在し、そのたびに1400mのGⅠがあればという声があがる。1200m戦のようなスピードでは乗り切れず、マイル戦のようにひと溜め利かせるような余裕はない。ペースによって問われる要素が変化する。スローペースであればスピード型が流れに乗りやすく、スタミナのロスを抑えられ、ハイペースとなると最後にスタミナが問われスピード型の脚は鈍り、マイルからの距離短縮組に有利となる。

今年のフィリーズレビューが好例で、上位3着以内は6頭出走していた前走マイル戦組で占められた。フィリーズレビューのような前傾ラップになりがちなレースでは距離短縮組を狙い、京王杯SCのような後傾ラップになりやすいレースでは距離延長組を狙うというのは作戦のひとつだろう。

つまり1400m戦は事前のペース判断が予想する上で重要になる。先行型が揃ったレースであっても同型が引いて単騎逃げとなりペースが落ちることもあり、先行型不在であってもであれば自分がと行く馬が複数あらわれ、引くに引けなくなることもある。展開予想とはもっとも微妙なラインを読むようなもので簡単ではないが、これを読みこなせるようになると、競馬きっともっと楽しくなる(馬券も当たる)。

ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて「 築地と競馬と」でグランプリ受賞。中山競馬場のパドックに出没。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌「優駿」にて記事を執筆。

フィリーズレビューインフォグラフィックⒸSPAIA

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