朝日杯FSのジレンマ
関西圏最後のGⅠである朝日杯フューチュリティステークスは1番人気のサリオスが好位から抜け出し、2着タイセイビジョンに0秒4差をつけて快勝した。勝ち時計は1分33秒0(良)の好記録。3着は追い込んだ伏兵14番人気のグランレイだった。先週のレシステンシアに続く大きなインパクトを残したレースを振り返る。
舞台は同じ阪神マイルながら牝馬戦線と異なり、翌年のクラシック戦線につながらない、そんなジレンマを背負うレースが朝日杯フューチュリティステークスである。2014年から力勝負になりやすい阪神マイルに舞台を移してからもこれは払しょくできていない。
早熟な面があるディープインパクト産駒が強いこのレースだが、今年はどちらかと言えば晩成型が多いハーツクライ産駒が制した。ディープインパクトもキングカメハメハも去った種牡馬界は着実な地殻変動を起こしている。では、成長力が売りのハーツクライ産駒サリオスが勝った今年は来年のクラシック戦線につながるだろか。焦点はここにある。
直前に行われた古馬3勝クラスの元町Sと朝日杯フューチュリティSはどちらも勝ち時計は1分33秒0。これだけでも価値が高いレースであるといえるが、詳しくみていくとさらに興味深い。元町Sは前後半の半マイルが46秒6-46秒4のイーブンなペース。勝ち馬は先手を奪ったモズダディー。逃げ切りが多かった今回開催の阪神芝らしい結果で、モズダディーの自力が光った。
対して朝日杯は好発を決めたビアンフェが飛ばして前半半マイルは45秒4。前半に上りがある阪神マイルとしては極めて厳しいペースで、案の定、後半半マイル47秒6と時計がかかった。その差は2秒2もあり、2、3着が差し追い込みだったのは展開利があった。
となると、3番手から抜け出したサリオスは展開に逆らった勝利であり、2、3着馬とは着差以上の差があったといえよう。最後の直線ではムーア騎手は抜け出して後続を離しても最後までムチを入れて厳しく追い立ており、ハーツクライらしいズブさを見せていた。この反応の悪さはいい意味でマイラーのものではない。ドイツオークス馬にハーツクライという血統からもサリオスは自身の得意な条件で勝ったわけではない。タフなレースになりやすいクラシック本番こそ、この馬に合った競馬になるに違いない。果たして、サリオスは来年、朝日杯FSのジレンマを解消することができるだろうか。注目したい。
4着タガノビューティーは外から2着以下をのみ込むかの勢いで伸びながら、最後の坂で止まった印象。初めての芝でGⅠ4着は力の証明。距離はマイル以下が理想かもしれないが、芝でもダートでも狙ってみたい。
予想陣は門田光生が有利な早生まれ、完成度を重視して〇◎で馬連を手堅く的中。有馬記念へ弾みをつけた。
東大ホースメンクラブ、京都大学競馬研究会が揃って本命にしたビアンフェは2歳戦絶好調のキズナ産駒。この産駒にしてはスピードあふれるレース内容は覚えておきたい。サリオス以外の先行馬壊滅のなかで7着。大バテしたわけではなく、展開が向けばチャンスはすぐに訪れるだろう。