開幕週で先行馬が圧倒的有利
新潟記念は休み明けのユーキャンスマイルが勝利。休み明けの長距離中心ということから、今回は分が悪いかと思ったが、さすがに地力のある馬。仕上がりも良く、鞍上も長い直線を意識した好騎乗だった。
本命に推したカデナは3着。しまいにかける競馬をし、乗り方そのものは完ぺきだったが、伸び負けしたのは陣営が危惧したように長い直線向きでないからだろう。とはいえ、サマーシリーズの勝負駆けは使える材料と分かったのは収穫だ。大事なのは、それを来年まで覚えていられるかだ。
今週から競馬が中央場所に戻ってくる。西の主場・阪神競馬の開幕週はセントウルS。過去、北九州記念やアイビスSDを経由した馬が7勝を挙げているレースだ。2013年ハクサンムーン(1着)、2014年リトルゲルダ(1着)、そして2017年のラインミーティア(2着)がここで好走し、サマースプリントシリーズのチャンピオンの座を射止めている。今回も優勝の可能性がある馬の勝負駆けに注目だ。
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開幕週のスプリント戦では、前へ出た馬が圧倒的に有利。特に、勝ち馬は全て4角で5番手以内の射程圏に取りついていた。前へ出る出足の良さは絶対条件だ。
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年齢が若ければ若いほど勝率が高くなっており、「世代・レベルは関係なし」というところが興味深い。人間同様、スピード勝負はやはり若者の方が有利ということなのか、3歳馬は古馬に比べて斤量面での有利さが出ているように思える。
阪神芝1200mに強い種牡馬は?
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上記3つは、データの差がかなりハッキリと出ている。
まずは前走着順。前走で3着以内に来ている馬が圧倒的。前走大敗で調子を落としている馬の変わり身には期待しづらい。
続いて前走人気。これも人気に支持されていた方がいい。特に2番人気以内なら連対率が3割を超える。
3つ目は前走条件。格が高い馬の方が成績が良く、条件戦またはオープン特別からの連対率は0%と散々。前走が重賞なら、海外帰りでも問題はない。
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阪神芝1200mに強い種牡馬を見てみる。
何でもかんでもサンデーサイレンス系が出てきて血統予想の価値が薄れていく中、芝1200mは様々な系統の種牡馬が顔を出す。血統をかじっていた者にとってはうれしい限り。
1位はロードカナロアで、過去5年のデータのため、5年前は種牡馬デビューしていないがこの成績。適性は相当である。
サンデー系のフジキセキを父に持つダノンシャンティ。種牡馬としての体が完全に出来上がっていない状態で種牡馬入りしたフジキセキが、これだけの実績を残しているのはすばらしいの一言。
現役代表産駒は京都新聞杯などで勝利したスマートオーディン。この馬は古馬になって短距離適性を見せた。元より短距離向きの種牡馬なのだろう。
勝利数が1位の3位アドマイヤムーンは、ちょっと時計のかかる短距離が得意な種牡馬で、4位のアドマイヤマックスも渋い種牡馬。5位にやっと有名どころのキングカメハメハの名前が。ちなみにディープインパクトは勝率4%ちょいと、この条件では振るわない。
全てを満たすのはタワーオブロンドン
京成杯AHと同様に差のあるデータが多い。
①前に行ける脚質が圧倒的
②年齢は若い方がいい
③前走3着以内かつ2番人気以内、そして前走が重賞
④ロードカナロア産駒
⑤サマーシリーズの優勝に目がある馬
この中でもほぼ絶対条件なのは①と③。そして⑤も重要視したい。
今回もサマーシリーズの勝負駆けにこだわる。これまでサマースプリントシリーズに参戦した大半の馬に優勝の可能性があるのだが、現実的なところでいうとアンヴァル、カイザーメランジェ、ダイメイプリンセス、タワーオブロンドン、ペイシャフェリシタの5頭だろう。
このうち、カイザーメランジェとダイメイプリンセスは「最低1勝」のノルマをクリア。勝って決めるのが理想だが、ライバルがコケてくれれば、別に1着でなくてもかまわない。残る3頭は1着が必須。アンヴァル、ペイシャフェリシタは条件付きだが、タワーオブロンドンは勝てば文句なしにチャンピオンとなる。
どれを上に取るかだが、絶対条件の①と③をともに満たしているのはタワーオブロンドン。特に、馬に合わせたローテーションを取ってくる藤沢和厩舎が札幌戦から中1週で使ってくるのだから勝算ありと読むのが正解だろう。
藤沢和厩舎のスプリンターといえば、個人的に思い出すのがレディブロンド。ディープインパクトの姉で、1000万下特別(現2勝クラス)でデビューして、しかも勝ってしまうという離れ業を成し遂げた。
そこから3か月の間に5連勝。スプリンターズS(4着)を経て引退した、まさに疾風のような馬だった。スプリンターは短い間隔でも使えるというのが師の見立てなのかもしれない。もちろん、強行軍で使うからにはサマースプリントチャンピオンという手土産を持って美浦に凱旋のシーンを描いているはず。その思いに乗ってみたい。
アンヴァルは①の脚質と③の前走人気を満たしていないが、阪神の芝1200mにめっぽう強いロードカナロア産駒。サマースプリントの優勝だけでなく、スプリンターズSに出走するためにも賞金加算は至上命題だ。ペイシャフェリシタはよりマイナス点が多いものの、先行脚質と中1週で挑んできた意欲を買う。
馬券対決も最終週。勝負がかかった3頭に託す。馬券はデータとも合致するタワーオブロンドンからアンヴァルへ馬連4000円、ペイシャフェリシタへ1000円。
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《ライタープロフィール》
門田 光生(かどた みつお)
競馬専門紙「競馬ニホン」で調教班として20年以上在籍。本社予想や「最終逆転」コーナーを担当し、編集部チーフも兼任。現在、サンケイスポーツにて地方競馬を中心に予想・記事を執筆中。