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【皐月賞】近5年で3頭の勝ち馬を輩出 共同通信杯組を軸に相手は5頭で勝負

2019 4/11 11:00門田光生
アドマイヤマーズ,Ⓒ三木俊幸
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Ⓒ三木俊幸

全てが覆された桜花賞

桜花賞はシゲルピンクダイヤから買ったにもかかわらず「前哨戦を使っていない馬なんて要らないや」と安易に考え、勝ち馬をノーマークにした筆者のような人間にとって、大いに考えさせられるレースだった。

20年以上も競馬業界にかかわっていると、どうしても固定観念にとらわれてくる。前哨戦を使ってGIを使うのが常識、というのもその一つ。しかし、桜花賞はぶっつけで使ったグランアレグリアが勝利。思えば昨年のアーモンドアイも、これまでの常識では考えられないローテーション(シンザン記念→桜花賞)だったし、昨年のフィエールマンも秋緒戦となった菊花賞を制した。

「シゲルピンクダイヤ本命の予想は的中したか 桜花賞&阪神牝馬Sを振り返る」でも言及しているが、外厩制度(JRAはこの言葉を認めていないが)が主流となっている今、「久々だから」という言葉はナンセンスなのかもしれない。

ちなみに、こっそり押さえていたシゲルピンクダイヤとダノンファンタジーのワイド馬券はゴール前寸前で泡となり、さらに先々週、大阪杯で2番手に挙げたエポカドーロはレース中に鼻血を吹いていたことが判明。私の周りだけ春の到着が遅れているらしい。

データは常に更新されるもの

桜花賞の結果を受けて行われるのが4月14日(日)の皐月賞である。当然ながら、先週まではぶっつけで挑むサートゥルナーリアの取捨がカギだと思っていた。2歳の時点ですでに完成されている印象があり、同じく無敗馬のダノンキングリーが出走するが、こちらの方が一枚上の存在である。

とはいえ、皐月賞がその年の緒戦という馬はここ10年で馬券に絡んでいない。それどころか、1990年代にまでさかのぼっても見当たらない。データ上では推奨どころか「消し」である。

しかし、同様に桜花賞もデータ上で完全な「消し」だったグランアレグリアが勝利。データは常に更新されるもので、その当時は「規格外」と思っていたことが、10年後に「想定内」となっている可能性もある。ここはひとまず保留しておき、ほかの角度から攻めてみる。

皐月賞上位馬の前走,ⒸSPAIA

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まずは前走成績から見ていく。実に8つのレース名が並んでいるが、その中で勝ち馬を出しているのはスプリングS、共同通信杯、弥生賞、そして毎日杯の4レース。

本番と同じ条件の弥生賞は最大9頭の馬券絡みを果たしているが、勝ち馬はたった1頭だけ。一方、ダービーはここ10年で何と5頭もの弥生賞出走馬が優勝。皐月賞だけでなく、ダービーにまでつながるレースということを覚えておいて損はないだろう。

皐月賞上位馬の前走人気と前走着順,ⒸSPAIA

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このデータを見ると、前走着順、人気ともによければよいほど本番の成績がいい。あとは、どのレースレベルが高いかの見極めが大事だといえる。これが一番難しい作業なのだが、これさえ解読すれば当たりにぐっと近づく。

皐月賞上位馬の父系,ⒸSPAIA

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父系はサンデーサイレンス系を含むヘイルトゥリーズン系が圧倒的。あとはノーザンダンサー系、キングカメハメハ系(本来はミスタープロスペクター系だが、キングカメハメハを経由する馬しかいないので)。この3系統以外では厳しいといえる。

またヘイルトゥリーズン系以外の8頭のうち、何と7頭は母の父がヘイルトゥリーズン系。例外は海外からの持ち込み馬のエイシンフラッシュ(2010年の3着馬)だけ。父、または母の父にヘイルトゥリーズンの血を持っていることはほぼ必須条件だ。

皐月賞上位馬の馬体重,ⒸSPAIA

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桜花賞で推奨したうちの1頭であるアクアミラビリスは、馬体を大きく減らして410キロを切っていた。それを見て思ったが、現代のGⅠは牡牝関係なくある程度の馬格は必要。皐月賞でいえば、上位馬は460キロ以上の馬がほとんどである。

完成度が違うサートゥルナーリア

ここで肝心な前哨戦を分析していく。

まずは近年存在感を出している共同通信杯。このレースで注目の無敗馬対決を制したのはダノンキングリー。インで我慢して、そのまま内から突き抜けた。距離に限界がある母系なので、初の2000mがカギになりそう。2着のアドマイヤマーズは押し出されるように逃げて、最後は差される形。朝日杯FSで見せた課題の折れ合いが解決されたとはいえず、少頭数のレースでもあり収穫の少ないレースに思えた。3着のクラージュゲリエは前2頭とはちょっと差があるか。

次に、本番と同じ距離で行われた弥生賞は馬場が悪く判断の難しいレース。ここでの注目は勝った馬よりも、2着馬のシュヴァルツリーゼ。スタート後にぶつけられ、4角でもかなり外を回らされながら猛追を見せた。同厩舎の二冠馬ドゥラメンテを思い出した。4着のニシノデイジーはホープフルSの時と同様に折れ合いに課題が残った。

スプリングSは1番人気のファンタジストが2着に入ったものの、1、3着に人気薄が来て3連単が20万円を超える波乱の決着。ここでは正直、目につく馬はいなかった。若葉Sのヴェロックスは楽勝だったが、体の使い方がぎこちなく未完成の印象。よくなるのはもっと先かも。すみれSはサトノルークスが楽勝。ホープフルSの2着馬アドマイヤジャスタを破ったのは強調できるが、何せ6頭立てのレース。大きな評価は与えづらい。

そして問題のホープフルS。2、3着が次走で負けているのでレベルが高かったかは疑問だが、勝ったサートゥルナーリアはまさに別次元。何せ直線での推進力が他馬とは違った。文句のつけようのない勝ち方である。

軸にふさわしいアドマイヤマーズ

長々と書いてしまったが、前走内容はあくまで主観。前走内容も大事だが、あくまでデータに重きを置いて予想していく。桜花賞では覆ったが、皐月賞もその年の緒戦で好走した馬がいないことからやはりサートゥルナーリアを本命にすることはできない。ただ、桜花賞の反省を踏まえて馬券は押さえる。

共同通信杯からは、勝ち馬のダノンキングリーは前走の馬体重が454キロ。当日に増えていると話は変わってくるが、前走の同程度なら好走条件の460キロ以上に満たないので今回は軽視。また、皐月賞はここ5年の連対馬の10頭中、乗り替わりで圏内に来たのは2頭だけ。前走と同じ騎手の方が圧倒的有利ということで3着のクラージュゲリエも消し。共同通信杯で残ったのはアドマイヤマーズのみ。

弥生賞、スプリングSは人気と着順に注目。データ的には前哨戦で2番人気以内、かつ2着以内の馬が皐月賞でよく馬券に絡んでいる。それを満たしているのはファンタジストだけ。

過去10年で勝っていないのは気になるが、すみれSの1、2着馬と若葉Sの1着馬も同様にこの条件をクリアしている。

候補に残ったのはアドマイヤジャスタ、アドマイヤマーズ、ヴェロックス、サトノルークス、そしてファンタジスト。これらはデータに挙げた血統や馬体重も見事クリア。その中で軸を選ぶとすれば、ここ10年で4頭ずつの勝ち馬を輩出している共同通信杯とスプリングS組。

近5年で3頭の勝ち馬を出している共同通信杯が有利とみてアドマイヤマーズを軸に指名。相手はアドマイヤジャスタ、ヴェロックス、サトノルークス、ファンタジスト、そしてサートゥルナーリアの5頭。

はたして2週連続で年明け緒戦の馬がGIを勝ってしまうのか、それともデータ通りの結果になるのか。歴史の分岐点になる一戦になるかもしれない。

《ライタープロフィール》
門田 光生(かどた みつお)
競馬専門紙「競馬ニホン」で調教班として20年以上在籍。本社予想や「最終逆転」コーナーを担当し、編集部チーフも兼任。現在、サンケイスポーツにて地方競馬の記事を執筆中。