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データ的には不利でも、有馬記念は「キセキ」が起こるレース

2018 12/20 15:00門田光生
キタサンブラック,ⒸJRA

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ジャパンC組のレコードタイムで走った影響は?

「2分20秒6」

11月25日11R、東京競馬場の着順掲示板にこの数字が浮かび上がった時、正直寒気がした。実況のアナウンサーもこの異常な時計に気付いた瞬間、読み上げる声のトーンが変わったのをよく覚えている。確かに、この日の東京競馬場は3Rでレコードを記録するなど時計が出る日だった。それにしても、この数字は速すぎる。

その数字を見てまず頭に浮かんだのは、ここで好走した馬が次走で反動が出ないかということである。例えが正しいかどうか分からないが、下り坂を利用して自分の持っている以上の速さで駆け下りると、疲れがいつも以上にくる。

それと同じで、馬場に助けられて能力以上の時計で走ったのだから、何かしらの影響が出てもおかしくはないと考える。そこで、過去ジャパンカップで勝ちタイムが速い上位5年を抽出し、その上位5頭が次走で有馬記念に出走した時の成績を調べてみた。

JCの速いタイム,ⒸSPAIA

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JC上位5頭の有馬の順位,ⒸSPAIA

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データを見て驚いたのだが、反動どころか、馬券圏内に来る確率が5割を超えているように好走する確率が高い。速い時計は素直に評価すべきということか。これは、今年のジャパンカップで上位5頭に入ったキセキ、シュヴァルグラン、ミッキースワローにとって心強いデータだろう。

有力はやはりレイデオロ

それにしても、今年の有馬記念は話題に事欠かない。何といっても一番の話題は障害の絶対王者オジュウチョウサンの参戦だろう。

過去に障害の実績馬がGIに挑戦した例がないわけではないが、オジュウチョウサンは過去最強といわれる障害実績に加え、平地でも連勝中。しかも、父はここ10年で4頭の勝ち馬を輩出しているステイゴールド。鞍上には昨年キタサンブラックで勝利した武豊騎手を配してきた。ただの話題作りでの参戦だと軽視すると痛い目に遭うかもしれない。

大将格は、見事復活を遂げた昨年のダービー馬レイデオロ。今年は京都記念、ドバイシーマクラシックと不本意な競馬が続いたが、後半戦は見事に巻き返してきた。この馬の武器は何といっても立ち回りのうまさ。同じくレース巧者のルメール騎手との相性が抜群に思える。中山コースも4戦3勝で不安要素は極めて少ない。

アーモンドアイが早くから回避を宣言していたとはいえ、彼女を抑えて堂々のファン投票1位は、強いレイデオロが復活した証拠でもある。

あとは今年の宝塚記念を勝ったミッキーロケット、凱旋門賞帰りのクリンチャー、今年GⅡ2勝の上り馬パフォーマプロミスなど、伏兵陣も虎視眈々。

影から光へ

狙ってみたいのがキセキ。下表は過去10年に馬券圏内に来た馬で、有馬記念までに秋に何走したかをカウントしたものである。

秋ローテ,ⒸSPAIA

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データから見れば、秋3走目のレイデオロを中心視するのが妥当なのかもしれない。対するキセキは秋4戦目。上記の表を見て分かるように秋4走目の馬は分が悪く、特にここ5年で見ると3着以内に来た馬はいない。

しかし、過去にオグリキャップ、トウカイテイオーが復活したように、有馬記念は「キセキ」が起きるレースでもある。

キセキは天皇賞・秋、ジャパンカップとも2着だったが、この両レースを面白くしたのは、間違いなくこの馬がよどみないペースで引っ張ったからである。影のMVPといっていいだろう。現実もそうだが、努力と過程なくして奇跡は起こらない。目いっぱいの走りを見せて、今年の秋を盛り上げてくれたキセキが、最後にスポットライトを浴びてもいいのではないか。

相手はジャパンカップ組の上位馬シュヴァルグランとミッキースワロー。シュヴァルグランは昨年の有馬記念で直線で進路をカットされての3着と悔しい思いをした。昨年にジャパンカップを勝っているので、今年はこのレースを目標に調整してきた可能性は高い。

ミッキースワローは前2頭が残ったジャパンカップで外を回って目につく伸び。中山コースとの適性も高く、人気的にもこれが一番妙味がありそう。

あとは、やはりレイデオロ。これは人気でも外せない。キセキからこの3頭に絞って週末を楽しみに待ちたい。

《ライタープロフィール》門田 光生(かどた みつお)
競馬専門紙「競馬ニホン」で調教班として20年以上在籍。晩年は編集部チーフも兼任。本社予想、「最終逆転」コーナーを担当。現在、サンケイスポーツにて地方競馬の記事を執筆中。

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