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【金鯱賞】能力値1位の先行馬マリアエレーナが本命候補 フェーングロッテンは逃げたら面白い

2023 3/11 17:00山崎エリカ
2023年金鯱賞出走馬のPP指数,ⒸSPAIA

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過去6年で逃げ馬の3着以内が5回

金鯱賞は2017年に12月からこの時期に移行。それ以降の過去6回中3回が稍重~重で行われたが、それでも高速馬場だった。この開催は最終日に高松宮記念が行われることもあり、芝が悪化した箇所は広範囲にわたって張り替えられているため、タイムが出やすい。また開幕週らしく、内枠の逃げ、先行馬が活躍しているのが特徴だ。

その中でも芝2000mはゴール手前の急勾配の途中からスタートして、向正面半ばまで坂を上っていくコース。この影響でより前が残りやすくなっている。昨年12月の中日新聞杯のように、前半超絶スローペースから向正面の下り坂で一気にペースアップしたときは差し馬が台頭するケースもある。しかし、金鯱賞は過去6年で逃げ馬が1着2回、2着2回、3着1回と活躍しているレース。前残りには要注意だ。

能力値1~5位の紹介

2023年金鯱賞出走馬のPP指数一覧,インフォグラフィック,ⒸSPAIA


【能力値1位 マリアエレーナ】
昨夏の小倉記念で重賞初制覇を達成した馬。同レースは2番枠から好スタートを決め、一旦ハナから外の各馬をいかせて好位の最内と、完璧な入り方で3列目の最内を追走。3~4角で2列目まで上がって4角でひとつ外から楽に先頭に立ち、そこから突き抜けて5馬身差の圧勝、自己最高指数を記録した。

前々走の天皇賞(秋)は自己最高指数を記録した後の一戦らしく、あまり行き脚がつかなかったが、1番枠から積極的に前の位置を取りにいった。しかし、ノースブリッジに進路をカットされラチに接触しそうになり、危険回避のため4列目まで位置を下げる不利があった。そこから4角まで包まれ、直線序盤でも前が壁になり、本来の力を出し切れなかった。

前走の愛知杯は2番枠からトップスタートを切り、そこから逃げの手をチラつかせたが、アブレイズが外から一気に来たことで進路を塞がれ、ここでもスムーズさを欠く競馬で3着だった。近2走は噛み合っていないが、もともとはスタートも二の脚も速く、前半で勝負するタイプ。今度こそ前でスムーズに流れに乗っての巻き返しに期待する。今回の本命候補だ。

【能力値2位 ディープモンスター】
一昨年のクラシック三冠では結果を出せなかったが、古馬になって地力をつけ、前走でようやくOPの関門橋Sを勝利した馬。前走はレッドベルオーブが暴走の大逃げを打ったことで、小倉芝2000mで前半5F56秒6-後半5F61秒3の極端なハイペースだった。本馬は13番枠から五分のスタートを切って、序盤はじわっと好位の外を追走。2角で中目に入れて逃げ馬からかなり離れた好位を追走し、3角で2列目以降がレッドベルオーブを捉えに動く中、最内に入れて4角4列目と、我慢の競馬をさせたことで展開に恵まれた。

本馬は一戦ごとの消耗度が大きいのか、一昨年の菊花賞から休み休み使われていたが、今回は久しぶりの連戦。このことから体質強化が窺えるが、休養明けの前走で自己最高指数を記録した後の一戦となると狙いにくい。また前走はタフな馬場だったが、今回は一転して高速馬場で前と内が有利な展開が想定されることも減点材料だ。

【能力値3位 アラタ】
昨年の金鯱賞はジャックドールが前半5F59秒3-後半5F57秒9のスローペースで逃げ切る展開を、中団馬群の後方からレースを進め0.9秒差(8着)に敗れた。しかし、その後は地力をつけ夏の札幌記念ではジャックドールに0.3秒差(4着)まで迫った。

札幌記念は12番枠からやや出遅れたが、じわっと挽回して好位の外でレースを進めるソダシをマーク。3~4角でも同馬を徹底マークで追走し、4角3列目で直線へ。そこからじわじわ伸び、ラスト1Fでソダシを交わして3着ウインマリリンにクビ差まで迫っての4着だった。

本馬は2年前の福島記念をかなりの後方追走から、展開に恵まれて3着に善戦して以降、行きっぷりが悪くなっていた。しかし、5走前の都大路Sでトップスタートを切り、思い切って逃げたことで本来の出脚を取り戻した。その後はある程度、前の位置を取れるようになったことが近走の好走要因だろう。

前走の中山金杯でもアオリ気味のスタートだったが、そこから立て直して中団の外目でレースをしている。そのことから8番枠から五分のスタート切りながらも、テンに置かれた昨年ほど悪い位置にはならないと見ている。今回は1番枠を利して最短距離を立ち回る競馬ならチャンスがありそうだ。

【能力値4位 ハヤヤッコ】
レパードSを優勝し、ダ2100mのオープンやリステッドでも2着の実績があるステイヤー。また芝では極悪馬場で行われた昨夏の函館記念を優勝した実績がある。同レースは1番枠からかなり押して好位直後の最内を追走し、前がバテて失速していく展開の中、しぶとく粘り優勝した。

時計の掛かる芝で実績がある本馬は、高速馬場への対応が鍵となるが、やや高速馬場だった昨年12月の中日新聞杯でも接戦の5着に善戦している。同レースは3~4角で前がペースを引き上げ、後方の内々が有利な流れ。後方から3~4角の外々を回った4着プログノーシスに対し、本馬は3番枠から最後の直線まで中団最内を立ち回った。展開に恵まれたことは確かだが、同馬とはハナ差だった。

本馬は今回も3番枠。一方、プログノーシスは大外12番枠。今回も内を立ち回れる強みがあるだけに、展開次第では上位争いに加われると見る。

【能力値5位 プログノーシス】
前走の中日新聞杯は4着とデビュー以来初めて3着以内を外した。しかし、勝ち馬キラーアビリティとは0.1秒差と崩れておらず、安定感抜群。また、これまで7戦中6戦でメンバー最速の上がり3Fタイムを記録しているように、強烈な末脚が武器の馬だ。

前走は前半5F61秒9-後半5F57秒5と前半が極端に遅い流れ。本馬は6番枠から五分のスタートを決めるも、ブレーキを掛け後方からの競馬。1~2角で位置を押し上げる気配もなく、後方2番手で我慢。向正面でもまだコントロールして折り合い、後半5Fからペースアップする中を加速し、4角は大外ぶん回し。

直線序盤で進路を確保出来ないまま追い出し、外に出してからは1頭だけ違う脚色で伸びてきた。最後にもうひと伸びしたが、それでも前に届かずの4着。当時、鞍上は陣営の「指示通りに乗った」とコメントしていたが、陣営はもっとゲートをゆっくりと出してスピードに乗せ、展開に合わせて動いていく、ドウデュースが京都記念のときにしたような競馬を期待していたはず。並みの馬なら掲示板を外していても不思議なかった。

本馬は3走前の阪神芝2000mの京橋Sでは、前半5F60秒2-後半5F58秒1のかなりのスローペースを9番枠から出遅れて、前からかなり離れた後方2番手を追走。3角でも後方2番手だったが、3~4角で中目を走り徐々にスピードアップ。4角で外に出され伸び始めはジリジリだったが、ラスト1Fでは中団列から一気に前との差を詰め、1馬身半差で完勝している。

この内容から前と内が有利な流れを後方外からの競馬になっても、強烈な末脚という武器がある以上、今回も崩れずに走ってくると思うが、勝つまでは苦しいと見る。

逃亡劇に期待高まるフェーングロッテン

昨秋の菊花賞は距離の壁に泣いたが、昨夏の新潟記念や前走の中山金杯では3着と好走しているように、芝2000mがベストの馬。前走は5番枠からまずまずのスタートを決め、序盤でウインキートスに絡まれたが、1角でハナを主張し先頭。そこからややスローペースに持ち込み、ハナ+アタマ差の3着に粘った。

本馬は逃げても新潟記念のように好位で折り合っても大丈夫なタイプだが、逃げ馬不在のここは逃げる可能性が高い。マリアエレーナが小倉記念の時のように早めに上がってくると分が悪いが、4歳馬の本馬は成長が見込める。マリアエレーナの出方ひとつで残れるだろう。

※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)マリアエレーナの前走指数「-18」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも1.8秒速い
●指数欄の下線の茶色はダート
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補

ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。

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