ラスト200m11.7の価値
単勝オッズ一桁台は4歳牝馬メイケイエール、ソングラインの2頭のみ。3番人気は中京巧者ながら重賞実績はGⅢ4着のダディーズビビッド。実績の開きが大きく、相手関係が楽とはいえ、メイケイエールの2馬身半差快勝はスプリンターズSに向けて申し分ないパフォーマンスだった。
勝ち時計1.06.2は開幕週の良馬場という馬場状態がアシストした面もある。ただし、野芝のみながら、当日のクッション値は9.1。決して硬くはなかった。エアレーション作業を行い、週中に雨も多かった中京の芝は適度な軟らかさを保っており、使いこんでいた5月開催のようなレコード連発の高速馬場ではなかった。それでも走りやすい馬場。レコード演出にひと役買った。
スプリント戦の快時計は前半がポイント。レース序盤は内枠からシャンデリアムーンが主張、外枠ファストフォースが近走の不振を振り切るように久々に強気な番手主張。11.8-10.2-10.5、32.5は緩いのぼり区間が続く中京芝1200mとしては相当速い。レシステンシアが引っ張った今年の高松宮記念は33.4。追い込みを誘発したGⅠより速い流れだった。この前半32.5も決着時計1.06.2に影響したのも事実だ。
だが、1.06.2を叩き出したのはメイケイエールがスプリンターとして完成の域に達した合図ではないだろうか。前半は先行勢の後ろ5番手、周りに馬がいない絶好位。かつてのような危うさはどれほど残っているのか。これは池添謙一騎手にしかわからない。レース後のコメントを読む限り難しさは残ってはいるが、課題のひとつ、前半の追走、折り合い面は楽になった模様。端から見る限りだが、いたってスムーズで理想的な前半に映った。
最後の直線はメイケイエールのワンサイド。粘り込みを狙う2着ファストフォース、追いかける3着サンライズオネストとは脚色に明らかな差があった。前半32.5と流れて、急坂をあがったラスト200mは11.7。このラップでまとめられることがメイケイエールの価値であり、この1.06.2の真価ではないか。
単純比較は危険だが、高松宮記念の最後200mは12.4。坂をあがり、先行勢は末を失い、後続が一気に押し寄せた。このとき伸びない外を通り、悔いを残したメイケイエールは経験を重ね、スプリント戦特有の急流に対応、かつ速い上がりを使う、超一流のスプリンターになりつつある。あとはタイトルを奪取するだけだ。