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【エルムS】昨年に続きマリーンS1、2着馬のワンツー フルデプスリーダー連勝のポイントとは

2022 8/8 11:04勝木淳
2022年エルムS、レース結果,ⒸSPAIA

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マリーンS1、2着が9、6番人気

北海道のダート路線は函館の大沼SからマリーンS、札幌の重賞エルムSへ続く。滞在が基本の北海道はどの路線も顔ぶれがある程度固定される。ダートのオープンも同じ。どの馬も最終的にはエルムSを目標にする。目的地であるエルムSは過去10年で前走マリーンS【5-2-1-32】、かつ3着以内は【5-2-1-9】。マリーンSの結果は本番につながる。

こんなデータを紹介したのは一週間前。そして結果はマリーンS1、2着のフルデプスリーダー、ウェルドーンで決着。ここまで傾向通りに決まるとは、とレース後に天を仰いだ。この2頭は9、6番人気と見事に人気を落としていたので余計だ。

エルムSは重賞なので、北海道シリーズを戦った馬に加え、別路線組もここを狙って参戦。さらに大沼Sから間隔をとる馬、マリーンSを叩き台と割り切ってここに挑む実績馬がいて、マリーンS上位馬の人気が落ちるケースがある。今年はまさにそれであり、穴目をとる絶好機だった。

札幌で頼れる丹内祐次騎手

今年は最内枠にロードエクレールが入り、揉まれ弱いアメリカンシードもいて、序盤は流れる公算が高かった。しかし、レースはロードエクレールがスタートでやや遅れ、アイオライトが抜群のスタートでハナに立った。逃げるとマークが厳しくなるため、前走大沼Sで控える競馬を試み、見事に勝利。脚質転換に成功したかと思われた。ところが実際はマークをかいくぐる伏線だったようで、今回は迷わずハナに行き、レース後に菱田裕二騎手が「いちばんいい選択がとれた」とコメント。競馬は読めない。

先行争いを制したアイオライトのマイペースとなれば、流れは速くない。1000m通過推定1.01.6では先行勢有利。確信をもってウェルドーンが早めにアイオライトを捕らえ、オメガレインボー、ブラッティーキッドらが仕掛けた。

その背後にいたのがフルデプスリーダー。マリーンSより下がった位置にいたことが幸いし、前の仕掛けを見ながら進む最高のパターンに持ち込めた。そもそも同じダート1700mでもコーナーが緩く、函館より差しが決まる札幌で、マリーンSより少し下がった位置からの競馬は理想的な運び。さすがは丹内祐次騎手、札幌を知り尽くしている。

函館出身の丹内騎手は函館開催で注目を集めるが、今年は【6-23-15-74】と少し足りない競馬も多かった。一方、開幕2週間で札幌は【3-4-4-30】。2017年以降でも札幌34勝、函館28勝で、勝率も札幌の方が上。回収値も札幌が高く、注目される函館より札幌がおいしい。札幌開催も折り返し地点。残り4週間、上手に付き合いたい。

フルデプスリーダーは1400mだとオープンでは差してあと一歩という競馬が多かったが、1700mに出走すると先行力が出てレース振りが安定する。今回はそこに差せる脚も加わった。この距離での安定感は今後も買いたいところ。ただ1700mのオープンはレース選択が難しい。1400mに戻っても今回のような末脚を使えるか。競馬の幅が広がり、1800mもこなせる可能性はある。

通用のメド立ったブラッティーキッド

2着ウェルドーンはマリーンSに続く2着も、今回は一旦先頭と見せ場たっぷり。最後の200mは12.7と時計を要しフルデプスリーダーに捕まったが、距離というより抜け出して気を抜いたところがあった様子。流れが落ち着き先行勢のものと、早めに動いた読みも当たった。昨年の関東オークス勝ち、ジャパンダートダービー3着、レディスプレリュード3着と交流重賞の実績もあり、大井の外回りにも強い。小回りもいいが、広いコースにも適性がありそうだ。東京マイルでスピードを活かす競馬も面白いのではないか。

3着はマリーンS4着のオメガレインボー。叩いて今回は積極策、好位で流れに乗った。距離の守備範囲が広く崩れないタイプ。短距離よりは先行できる1600~1700mあたりがよさそうだ。

1番人気ブラッティーキッドは4着。重賞の流れに戸惑うような場面はなかったが、4コーナーで手応えが怪しくなり、兵庫から続く連勝は8で止まった。ダートでは3勝クラス脱出直後の重賞挑戦は大敗も多く、難しい。それでも4着という結果は悪くない。ここまで流れに乗れたのは収穫。まだ4歳で、これからチャンスはある。

2022年エルムS回顧,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。共著『競馬 伝説の名勝負』シリーズ全4作(星海社新書)。

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