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【プロキオンS】ゲンパチルシファー得意舞台で重賞V! 前後半で異なる適性が問われた一戦

2022 7/11 11:07勝木淳
2022年プロキオンSレース結果,ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

引くに引けない先行勢

7月中京開催は今年も小倉に振り替えられ、プロキオンSは小倉ダート1700mで施行。小回りダート1700mは札幌、函館、福島、小倉で行われ、同じコーナー4回の1800mとは異なり、1400mあたりで走っていた馬が通用するケースも目立つ。基本的にはスタミナよりスピード優先で、前半からある程度のペースについて行けないと勝負にならない。一方で前へ行くという意識がどの馬も強いとオーバーペースに陥る。今年のプロキオンSはまさにそんな競馬になった。

出走16頭中半数の8頭がブリンカー着用。なかでも砂を被り、揉まれると力を出せないエアアルマスは最内枠を引いた。是が非でも先行、馬群に入らないようにしなければならない。昨年、このレースを逃げて3着のメイショウウズマサ、番手から2着に粘ったトップウイナーもいて、1コーナーでの並びは読みにくかった。結果、この3頭がレースの流れを左右した。

好発を切ったのはメイショウウズマサだが、内のエアアルマスの主張に今年は一旦控える姿勢。それだけエアアルマスの主張は激しく、なにがなんでも行くという構えだった。エアアルマス、メイショウウズマサで並びが落ち着きそうになった1コーナー。今度はスタートからステッキを入れて先行態勢をつくったトップウイナーが外から勢いよく競りかける。前に馬がいない状態のトップウイナーも抑えられない。

結果エアアルマスが突っ張る形になり、控えそうだったメイショウウズマサも両側を挟まれることを嫌い、エアアルマスに呼応。前半のラップは7.0-10.6-11.7-12.1-11.9。ペースが落ちそうで落ちない、いわゆる息の入らない流れになった。

1700m戦でここまで突っ込んで入ってしまうと、後半はスピードだけでは押しきれず、スタミナを問う競馬に変貌。1着ゲンパチルシファーと3着サクラアリュールは、前走東京ダート2100mスレイプニルSで3、2着。先着したサクラアリュールが12番人気、負けたゲンパチルシファーが4番人気だったのはやりすぎな気もするが、小倉ダート1700mの実績を考えればいたし方なし。むしろ、直近で東京ダート2100mを走った馬が通用するような、スタミナを問う流れになるとは考えにくかった。

好走条件が狭い2、3着馬

後半はペースが上がらず、後半800mは12.4-12.9-12.4-12.7。先行した3頭は4コーナーでわずかに12.4にペースアップするので精一杯だった。勝ったゲンパチルシファーはこれまで小倉ダート1700m【1-1-2-0】。先行勢の速い流れにも対応できるスピードがあり、その背後の絶好位置を確保した。先行3頭は苦しくなり、下がるだろうという読み。3コーナー手前で外に出し、交わすために進路を確保していた。荒っぽく動かず、自ら激流に巻き込まれないように先行勢が下がるまで待つ余裕もあった。

それもすべて序盤でその背後をきっちりとったからこそ。後ろからまくってきた2、3着馬との差はここにあった。やはり小倉ダート1700mで勝ちきるには序盤で好位をとれるスピードが必要。そこに前走2100mで先行して粘った経験が加わった。5歳秋から成長、適性範囲は広い。

2着はヒストリーメイカー。こちらは本来1700m向きではなく、21、22年マーチS2、3着など最後にスタミナを問う競馬に強い。最後の600mが38.0と重賞にしては上がりを要する流れを味方につけた。実際に序盤のハイペースでは遅れ気味で、向正面に入ると早々に置かれないよう鞍上がハミをかけていた。それで残り600m付近から手応えがかえって楽になった。ここがレースで問われた適性の分かれ目。最後は流れが向いた。とはいえ、中盤からずっと追いどおしでも最後に伸びたのはさすがで、もっと前半で流れに乗れれば、重賞制覇のチャンスもある。

3着サクラアリュールもヒストリーメイカーと同じ。序盤は後方にいたが、徐々に追走が楽になり、馬群の真ん中を押し上げ4コーナーでは絶好の手応え。直線ではうまく外に出せたが、小回り向きの瞬時の加速力でゲンパチルシファーに劣った。上がり最速2着だった前走の舞台がベスト条件だろう。器用さはないので、好走条件を選ぶタイプ。今後も見極めたい。

2022年プロキオンS、コーナー通過順,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。共著『競馬 伝説の名勝負』シリーズ全4作(星海社新書)。

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