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【目黒記念】ダービーデーの最終レース特有の難しさ 冷静な組み立てが光ったボッケリーニ、ついに本格化へ

2022 5/30 11:55勝木淳
2022年目黒記念回顧,ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

ダービーの結果を忘れ、ダービー前に感じたことを思い出す

感動の日本ダービー直後に行われた伝統のGⅡ・目黒記念は内枠から好位をとったボッケリーニが抜け出し、早めに追いあげたマイネルウィルトスが2着、逃げたウインキートスが3着と、ダービーとは対照的な結果になった。

目黒記念の難しさはダービーからゲートが100m後ろに下がっただけの舞台設定と、ダービー直後という状況にある。かつて目黒記念は思わぬハイペースが発生し人気薄の追い込みが決まることもあったが、昨年はスローペースで先行決着した。一方、今年のダービーは外枠から終始外目を通り、追い込んだドウデュースが勝ち、2着は大外枠、ドウデュースの後ろにいたイクイノックス。これが予想を難しくした。

ダービーの枠順発表直後、人気馬がそろって外枠に入ったことで、騒然となった。今週から仮柵がさらに外に出るCコース替わりで、ダービーは内枠、特に1枠が絶対有利という傾向があったからだ。

土曜日から芝レースを徹底的に監視、内か外か、自分の予想に結論を出すために注目した。インから抜け出した馬がふらふらして最後に伸びを欠くと、最内は伸びないのではと勘繰った。実際はCコース替わりらしく内側の状態がよかったが、ダービーは1000m通過58.9と厳しめの流れだったことも影響。ペースと実力差で外枠が優勢だった。

目黒記念は逃げ候補不在でスローペースが予想された。ダービーとは真逆の想定だからこそ、ダービーの結果を忘れ、内枠伏兵に注目した感覚を思い出し、さらに内有利のCコースに着目すれば、ボッケリーニには自然とたどり着けただろう。

兄ラブリーデイと同じく晩成の血が目覚めたボッケリーニ

ボッケリーニは2番枠からスタートを決め、仕掛けながら周囲の出方をうかがい、行きたい馬を行かせてインの4番手をとった。この時点で勝負あった。飛ばす必要がないウインキートスは向正面13秒台で進み、前半1000m通過1.02.5とスローペース。一団で進む馬群のなかで後続はひたすらプレッシャーをかけ合った。

2着マイネルウィルトスは馬群の中に押し込められないように1コーナー入り口でアリストテレスを弾いて、外に出した。終始内に入らないようにレースを進めたのは、2着に来たアルゼンチン共和国杯の経験が大きい。

後半も早めに追いあげ開始。残り1000m地点からレースは動き、ラップは11.9-11.7-11.3-11.2-12.2。動いたのはマイネルウィルトスだけ。好判断だった。反対にマイペースだったウインキートスはもう少しゆっくりスパートしたかったのではないか。そしてボッケリーニは外目から各馬が動き出すのを待ちながら、ウインキートスとバジオウの間を狙いつつ、最後の直線を迎えた。これだけ展開が向けば、実績最上位トップハンデの力差がいきる。

重賞は20年中日新聞杯以来2勝目。全兄ラブリーデイは5歳夏に本格化した晩成型。6歳で重賞2勝目、今年はGⅡで3、2、1着、2000m以上の距離で結果を出し、融通が利くようになってきた。ようやく本格化といったところ。今後はラブリーデイが5歳夏から秋に4連勝したのと同じ道をたどれるか注目だ。

2~4着はハナ差の際どい勝負。マイネルウィルトスはスローであっても早めに動いて瞬発力勝負を避けられればしぶとい。3コーナーで動いた好判断がいきた。東京は今回のような競馬ができれば得意舞台。こちらも父スクリーンヒーローの晩成型。秋のアルゼンチン共和国杯で上位人気に推されても、外せないだろう。

3着ウインキートスはスローの瞬発力勝負だった昨年とは異なり、ゆったりペースを刻んでも、最後はロングスパート型の競馬。それでもしぶとかったあたり、昨年よりパワーアップした印象。後ろからの競馬で結果が出なかったように、今回の先行、自力勝負がベスト。この好走で戦法も定まるだろう。今後も牝馬同士の軽いレースではなく、牡馬相手の厳しいレースで光ってほしい。

4着は唯一後方から追い込んだディアマンミノル。今回がそうだったように、重賞では流れと逆の競馬をすると苦しい。それでも最後の伸びを見る限り、これがこの馬にとってベストの競馬ではないか。上がり最速33.4はその証拠。ただし展開待ちなので、安定はしない。流れを読んでピンポイントで狙っていきたい。

2022年目黒記念回顧通過順,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。共著『競馬 伝説の名勝負』シリーズ全4作(星海社新書)。

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