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【日本ダービー】皐月賞組からは能力高いイクイノックス有力 期待は能力で逆転可能なピースオブエイトとデシエルト

2022 5/28 17:00山崎エリカ
2022年日本ダービー指数アイキャッチ,ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

当日はやや内有利になる可能性が高い

BコースからCコース替わりで行われる日本ダービーは、2019年に1番枠のロジャーバローズが2列目の最内を追走して12番人気で優勝したように、内有利のレース。昨年は開催日に雨が降ることが多く、内側が悪化し、外差し馬場。1番枠から最短距離を立ち回ったエフフォーリアが2着に敗れたが、先週は中目、外目が伸びていたことから、今年はやや内有利が想定される。

能力値1~5位の紹介

2022年日本ダービーPP指数,ⒸSPAIA


【能力値1位 ジオグリフ】
昨年6月の東京新馬戦でラスト2F11秒0-11秒3の流れを差し切って勝利した素質馬。レースの走破タイムも2歳6月の時点ということを考えればなかなか優秀だった。この新馬戦の上位3頭は全て強いのではないかと『2歳馬ジャッジ』で評価したが、その期待に応え上位3頭のジオグリフ、アサヒ、アスクビクターモアはその後も活躍、ジオグリフは皐月賞馬になった。

同馬はデビュー2戦目の札幌2歳Sを優勝したあと休養に入り、始動戦は距離不足の朝日杯FS。当然、能力は出し切れなかった。その始動戦で無理をさせなかったことが、その後の順当な上昇につながり、共同通信杯2着、そして皐月賞では展開もピッタリ噛み合って優勝した。

皐月賞は14番枠から五分のスタートを切り、好位の外目でしっかりと折り合いを意識しながら追走。2角でイクイノックスを先に行かせ、同馬を目標にして動く形。4角で外に出し、先に動き先頭に立ったイクイノックスを競り落として優勝した。鞍上の福永騎手がとても上手く乗り、順当な勝利だった。

しかし、今回は前走ほど順調にいくとは限らない。まず、ほとんどの皐月賞馬が苦しむのは、前走で能力を出し切って疲れが残る点。また、皐月賞を優勝したことでマークされる立場になる点も挙げられる。ジオグリフは高い能力の持ち主で、今回もチャンスはあるが、全幅の信頼とまではいかない。

【能力値1位 マテンロウオリオン】
デビュー2戦目の万両賞では、メンバーで断トツの上がり3F33秒4で勝利した馬。同レース当日は外差し馬場。出遅れ最後方で脚を温存し、直線で外に出しての勝利だったため、この時点ではまだフロック視していた。

しかし、シンザン記念ではまずまずのスタートを切り、手応えも良く、コントロールし切れなかったため、掛かり気味に2列目の内に入れていく形となった。そこから終始ブレーキ気味に前の馬との距離を保ち、最後の直線で最内を突き押し切る、堂々の内容で勝利。高い能力の持ち主であることを強くアピールした。

休養明けの前々走ニュージーランドTは2着。1番枠から五分のスタートを切り、前半は好位の内目を追走したが、道中で徐々に控えて中団で脚を温存する形。3角で外に出し、4角では外々を回るロスはあったが、逃げたジャングロがペースを引き上げてくれたため、展開に恵まれた。出来れば差し切って優勝したかったが、ジャングロにはアタマ差及ばず敗れた。

前走のNHKマイルCは1番枠から出遅れたこともあり、後方内々から末脚を伸ばすことを選択。後方2番手で脚を温存、3~4角で中目を通して、4角出口で外へ誘導した。ラスト1Fで前の馬が失速するも、先に動き先頭だったダノンスコーピオンを差し切れず、ここでも2着に敗れた。

前々走はスタミナが不足する休養明けのぶんもあったにせよ、それ以上に展開が向いた前走でも終いの甘さを見せたのは物足りない。芝1600m戦でラスト2F11秒5-12秒3の流れで甘さを見せた馬が、距離延長は好材料とは言えない。芝2400m戦のここは軽視したい。

【能力値3位 イクイノックス】
デビュー2戦目、昨秋の東京スポーツ杯2歳Sはラスト2F11秒9-11秒4と加速し勝利。重賞は新馬戦と違い、レースの流れも厳しくなるもの。大半のレースで上がり3Fの速さから「素晴らしい瞬発力」と表現されたとしても、最後の1Fは減速しフィニッシュとなるのが常だ。しかし、同馬は最後まで加速、まだ余裕があったことを見せつけた。

マイナス点は東京スポーツ杯2歳Sで、後方内々で脚をタメての差し競馬だったこと。上がり3Fの数字、上がり1Fの数字が優秀だったとしても、先行して記録したものと、差し、追い込みで記録したものでは価値が全く違う。もし先行策から最後まで加速していたなら怪物認定だったが、そこまでではなかった。

しかし、昨年の2歳芝中長距離路線でトップタイの指数を記録。それもまだ余裕があった可能性を感じさせたことを考えれば、今春のクラシック路線の主役は間違いないと見ていた。実際、前走の皐月賞は東京スポーツ杯2歳S以来、約5ヵ月ぶりの実戦。叩き台の臨戦過程ながら2着と好走した。

前走は18番枠からやや出遅れたが、二の脚の速さですぐに中団まで上がり、2角過ぎには好位の外に付ける形。しかし、結果的にこれが仇となった。

同馬は4角でジオグリフが上がってくるのを待って仕掛けたが、レースが平均ペースで流れたなか、前半で折り合い欠き気味に早めに位置を押し上げたこと、さらに最後の直線でも先に先頭に立ったことで消耗し、ジオグリフの末脚に屈してしまった。スタミナが不足する休養明けだったこともあり、最後に息切れしてしまった形だ。

ルメール騎手が「ダービーが一番の目標だったし、いいタイミングでトップコンディションになった」とコメントしているように、イクイノックスはここが大目標。休養明けの前走で想定以上の走りを見せ、自己最高指数を記録。それだけに2019年に断然の1番人気に支持されながらも4着に敗れたサートゥルナーリアのような怖さはあるが、順調に上昇すれば勝ち負けになるだろう。現3歳世代NO.1の素質馬だけに、ここは期待したい。

【能力値4位 ダノンベルーガ】
昨年11月の東京新馬戦をラスト2F11秒2-11秒5で差し切って勝利。上がり3Fはメンバー断トツの33秒1。2着に2馬身差、3着に7馬身差をつけての圧勝、新馬戦としてはかなり優秀な指数だった。その強さは本物で、次走共同通信杯ではさらなる成長を見せて快勝。そして皐月賞では4着となった。

皐月賞は1番枠からまずまずのスタートを切り、そこから好位のやや後ろを取った。道中も前の馬との距離を保って追走していく形。3角で前の馬との距離を詰め、3列目から4角で狭い最内を通って2列目まで押し上げて直線へ。

直線序盤で先頭のアスクビクターモアに内から並びかけ、同馬を競り落としたところを外から差されての4着。レースが平均ペースで流れたなか、勝ちにいく内容での4着は高く評価ができる。

ただ前走は世間で言われているほど、馬場の内側が致命的に悪くはなかったと見ている。もし致命的なほど悪かったなら、逃げたアスクビクターモアは大失速しているはずだ。かつてセイウンスカイが優勝した皐月賞では馬場の外側が極端に悪く、外を通ったスペシャルウィークとボールドエンペラーがダービーで巻き返した。しかし、今年の皐月賞は外有利ではあったが、内も致命的と言えるほど悪くはなかっただろう。

そのことがダノンベルーガの人気を過剰に上げているなら、嫌な材料だ。しかし、それを抜きにしてもここまでまだキャリア3戦。皐月賞のレース内容も良かっただけに、高い評価をすべき馬であることは間違いない。

【能力値5位 ドウデュース】
昨夏の小倉新馬戦はラスト2F11秒4-11秒1の流れを差し切り勝ち。高い潜在能力を感じさせ、高評価した馬だ。その後は期待どおりに成長、朝日杯FSを優勝して2歳チャンピオンになった。3歳になってからも弥生賞2着、皐月賞3着と着実に高いレベルの走りを続けている。

ただ朝日杯FS当日は馬場の内がひどく傷んでおり、外のほうが伸びる馬場。逃げ馬が揃いレースが緩みなく流れたことで、中団外目でレースを進めた同馬は馬場と展開にかなり恵まれての優勝だった。

前走の皐月賞もラスト1Fでグンと伸びてはきた。しかし、かつて『豊マジック』と言われた皐月賞のナリタタイシンのように、後方から瞬発力を最大限に生かす競馬をしながら、イクイノックス、ジオグリフを捕らえ切れなかった。他馬を圧倒するにはやや力が足りない印象がある。今回も争覇圏内の一頭だが、何か恵まれる点を鞍上が作り出せるかどうかがカギになりそうだ。

穴は能力での逆転に期待、ピースオブエイトとデシエルト

【ピースオブエイト】
昨年7月の新馬戦を、好位からラスト2F11秒6-11秒2とゴールに向けて強烈に加速しながら勝利した素質馬。このレースの上位3頭はみな強く、その時点で昨年の関西圏の新馬戦ではNO.1の新馬戦だったと評価した。その後ピースオブエイトはもちろん、グランディア、ヴェローナシチーもしっかり活躍をしている。

ピースオブエイトは昨夏の新馬戦を勝利したあと休養に入った。復帰したのは3月のアルメリア賞、新馬戦で見せた素質の高さをどの程度見せてくれるか期待していた。結果は期待以上のもので、いきなり重賞通用レベルの好指数を記録し勝利した。

さらに驚かされたのは毎日杯。休養明けでいきなり重賞通用レベルの指数で走れば、並の馬なら疲れが残り2走ボケという結果になりやすいもの。ところが同馬はあっさり毎日杯も勝利した。ただでさえ毎日杯当日はタフな馬場状態で、前に行っては厳しい馬場だった。

スタート直後にハナを奪った時点で、「これは厳しいレースになった」と見ていたが、直線では二枚腰の粘りを見せて優勝。実質厳しいペースを粘り切ったことは、着差以上に高く評価できる。また新馬戦から瞬発力比べのレースしか経験していない状況で、いきなりタフな競馬に対応したことも驚きだった。

今回は毎日杯から疲れをとりながら、ダービー一本の臨戦過程。そう、先週のオークス2着馬スタニングローズと同じである。キャリアはまだ浅く3戦3勝。全く底を見せていないとはこの馬のことを言うのだろう。

今回は5番枠、前走のレース内容から前を見ながら良い位置でロスなくレースが進められそうだ。BコースからCコースに替わることで、やや内有利の馬場が想定される上に、上位人気に支持されそうな実績馬はみな外枠に入った。好位から突き抜け、終わってみれば1強だったというストーリーも十分に期待できる。

【デシエルト】
デビューからダートで2連勝した馬。それも折り合いを欠いたり、ロスのある競馬ながら好指数をマークしての2連勝だった。しかし、素晴らしい馬体、飛ぶような走法でいかにも芝馬に見える。今年のクラシックを前にもっとも注目していたのは、同馬が芝でどのような走りを見せてくれるかだった。

初芝の若葉Sは逃げて圧勝。並の馬なら初芝の一戦では能力を出し切れないものだが、やはりデシエルトは素晴らしい芝適性、能力を持った馬だった。皐月賞はスタート直後に躓いて16着惨敗。逃げられなかったことで終始掛かり気味になってしまった。気性面に問題があることを再認識させられる結果だったが、力負けでないことは明らか。

今回は距離が伸びる分だけ、先行争いは激しくならないはず。それならば自分の競馬をすることができるだろう。まともに走ったらどのくらい強いのか。自分の競馬ができれば若葉Sを圧勝したスピード、スタミナがダービーの舞台で見れる可能性は十分あるだろう。

※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)ジオグリフの前走指数「-19」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも1.9秒速い
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補

ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。

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