阪神JFと逆の流れが予想される桜花賞
昨年の阪神JFは、4回阪神から25日間のロングラン開催の20日目に行われ、タフな外差し馬場のなかで行われた。ペースも前へ行った2頭がペースを引き上げ、前半4F46秒4-後半4F47秒4。その流れを利して外から差し切ったのがサークルオブライフ。3番手から3着に粘ったのがウォーターナビレラ、その直後の列から同馬を目標に動き、最後に捕らえて2着に好走したのがラブリイユアアイズである。
ナミュールは大きく出遅れ最後方からの競馬。押して押して内のスペースを拾って包まれ、最後の直線で外に出せず馬場の悪い最内を突いて4着。ナムラクレアは中団の内目でレースを進めたが、前の馬が下がってくるあおりを受け、後方の内まで位置を下げた。3~4角の内で包まれる不利があり、上位4頭から離された5着だった。
一転して今回の桜花賞はやや高速馬場。今週からBコースに替わり、先行勢が手薄。差してこそ味が出るというメンバーが多いだけに、内とやや前有利な展開になりそうな気配を感じる。昨年の阪神JFの上位馬が能力値上位となり、今年の桜花賞もそれらが中心視されるが、今回は着順の入れ替わりがあっても不思議ではない。
能力値1~5位の紹介

【能力値1位 ナミュール】
昨年9月の新馬戦で2番手からラスト2Fを10秒8-10秒7で伸びて勝利した内容は驚きで、その時点で高評価した馬。その後は着実に成長し、前走のチューリップ賞を優勝。新馬戦で見せた瞬発力から現3歳牝馬世代の中では潜在スピード、素質はNO.1と評価している馬だけに、将来的にもこの世代の牝馬では活躍の期待値は高い。
今回、問題点があるならば、前走のチューリップ賞を優勝してしまったことだろう。当時のナミュールは確実に桜花賞に出走するためには賞金が足りず、他のライバルたちと比べれば仕上げていたはずだ。その分、今回への上積みは少ないだろう。また出遅れる可能性も否定できず、やや不安点も挙げられるが、潜在能力は高い。能力で押し切ってしまう可能性も十分ある。
【能力値2位 サークルオブライフ】
デビュー2戦目の未勝利戦では、出遅れ最後方からの競馬。そこから捲り上げていく大きなロスを克服しての勝利。その時点で高い潜在能力を感じた馬。その後はアルテミスS、阪神JFを連勝し、2歳牝馬チャンピオンとなった。前走のチューリップ賞では3着に敗れたが、あくまでこの馬にとっては叩き台。今までと違う戦法「先行策」を試し、いかにもトライアルらしいレースぶりだった。今回は前走を踏まえて差し競馬に徹してくるだろう。
この中間の追い切りも強化されており、今回は体調面もピークになると推測され、阪神JF同様の末脚を見せてくれる可能性が高い。問題は今回、内とやや前有利の展開が予想されること。昨年の阪神JFは外差し有利な流れを生かし切っての優勝だった。今回は同時ほどのタフな流れにはなりにくい馬場状態、ピークのデキであっても、脚を余す可能性はある。
【能力値3位 ナムラクレア】
デビュー2戦目のフェニックス賞では、出遅れ最後方から3角3番手まで上がっていく、ロスの大きい競馬ながら勝利。次走の小倉2歳Sもなかなかの好指数で快勝した。例年の小倉2歳Sよりも高い指数で勝利し、その後も活躍する可能性はあると見ていたが、しっかりと世代トップ級の走りを続けている。
賞金は十分に足りていただけに、前走のフィリーズレビューは大幅馬体増での出走。ピークの仕上がりではないなか、しっかりと2着を確保したことは評価できる。懸念は前走のフィリーズレビューは緩みない流れで、それなりに力を出し切る展開になってしまったこと。今回に向けてしっかりお釣りを残せたか、少し微妙だ。今回の1番枠は良い方にも悪い方にも出る枠。阪神JF時のように進路が上手く開かない可能性もあるし、内強襲が決まれば大仕事の可能性もある。
【能力値4位 ウォーターナビレラ】
新馬戦、サフラン賞と前につけて上がり3Fタイム最速で勝利。着差以上に内容の濃いレースで、高い素質と競馬センスを感じさせた。3戦目のファンタジーSでも逃げ馬から離れた2番手を追走。最短距離で楽にラスト1Fで抜け出し、ナムラクレアの追撃を振り切る着差以上の内容で勝利した。
阪神JFも強い内容だった。馬場がタフで緩みない流れを先行し、直線では外から伸びてきたベルクレスタを制して、早め先頭に立つ競馬。最後は脚をタメていたラブリイユアアイズとサークルオブライフに差されてしまったが、明らかに目標にされた分、最後に苦しくなっただけ。負けて強しの3着だった。
前走のチューリップ賞は3~4角で好位の中目で包まれ動けず。直線でも進路を作れずブレーキ気味と、スムーズさを欠いて5着。中途半端に脚をタメる競馬も合わず、脚を余した。前走で力を出し切っていないだけに、今回は順当に上積みが見込める。今回は馬場の良い阪神芝、昨年の阪神JFより明らかに前有利となりやすい馬場状態。今回、前で流れに乗れば最後まで止まらないだろう。
【能力値4位 ラブリイユアアイズ】
デビュー2戦目のクローバー賞では、2番手から道中も積極的に逃げ馬に絡み、3角手前から先頭に立ち快勝。当時としては現3歳世代芝の最高値となる指数を記録し、強さをアピールした。次走の京王杯2歳Sでは内と前が有利のなか出遅れ。道中好位の中目まで位置を押し上げ、コントロールに苦労しながらチグハグな競馬で3着、力を出し切れなかった。しかし、続く阪神JFでは8番人気の過少評価を覆し見事2着。クローバー賞で見せた能力、指数は本物だったことを証明した。
今回のメンバーは阪神JFの再戦ムードのメンバー構成。能力面は上位と言えるが、今回の問題は昨年12月以来の休養明けの一戦となること。ここまでの戦績から現状は叩き良化型の馬である可能性が高く、今回は本領発揮とまでいくかどうか。半信半疑だ。
穴馬は別路線組のアルーリングウェイ
新馬戦は好位から3着以下を引き離し、なかなかの好指数勝ちを決めた馬。デビュー2戦目の万両賞では直線で完全に抜け出し、勝ったかと思われたところから、後のシンザン記念勝ち馬マテンロウオリオンに差されて2着。1着馬は馬場の良い外から決め打ちだっただけに、負けたと言っても勝ち馬以上の好内容だった。
前走のエルフィンSも早め抜け出しから迫るママコチャ、ルージュラテールを抑え込む強い内容で勝利。デビュー戦は1200m、そこから1Fずつ距離を延ばし、前走は1600mを正攻法の競馬で勝利。スタミナ面での不安はない。着差以上に強い内容の競馬が続いているだけに、相手強化のここでも一気に秘めた潜在能力が開花する可能性は十分ある。今回、内枠でロスなく脚をタメられそうな点も強調材料でなる。
※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)ナミュールの前走指数「-15」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも1.5秒速い
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補
ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。
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