「スポーツ × AI × データ解析でスポーツの観方を変える」

【ダービー卿CT】ハイペースが呼んだ波乱決着! 次走注意はダーリントンホールとザダル

2022 4/4 10:59勝木淳
2022年ダービー卿CTのレース結果,ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

リフレイムの逃げが呼び込んだハイペース

前後半800m45.5-46.8。前半が1.3も速いハイペースになり、タイムトゥヘヴン、フォルコメンの追い込みが決まった。ハンデ戦であり、どの馬にもチャンスがあるこのレース、これで19年から4年連続で前半が1秒以上速い前傾ラップ。今年はトーラスジェミニ、サトノフェイバー、ノルカソルカと逃げ候補複数。だがいずれも近況をみると、ハイペースで飛ばす印象はなく、並びさえ決まれば速くならない公算も高かった。それでも結果はハイペースの追い込み決着だから、やはりダービー卿CTは難しい。

急流を演出したのはこれら逃げ候補ではなく、3番人気のリフレイム。組み合わせ次第で逃げもあるが、戦法云々より前走、最後の直線で外へ行ったようにクセの強いタイプ。右回りは約1年前のフラワーC以来の出走だった。難しいところを抱えたゆえにリズムを重視した結果のハナ主張だ。

先頭に立ったことで問題なく走れたようだが、3番人気リフレイムがハナに立ったことで、がぜんマークが厳しくなり、サトノフェイバーが競りかけ、途中からはトーラスジェミニに並びかけられた。後続も伏兵ではなく、リフレイムが先頭にいたので、追いかけようという意識が強く、縦長にならず、一団で進んだ。ハイペースを一団で進む形は高松宮記念と同じ。こうなると先行勢には辛く、逃げるリフレイムにも負荷がかかる。そうでなくてもリフレイムは序盤からやや行きたがっており、ペースを落とせなかった。

不振脱したダーリントンホール

混戦ゆえに厳しくなった流れを待っていたのが勝ったタイムトゥヘヴン。内枠から一旦下げ、後方から外を通って差した。終始外を攻めた大味な競馬がハマったものだが、タイムトゥヘヴンは昨秋富士S3着と同じく、馬群に入らず外目を攻める競馬が好走パターン。そういった意味では馬の持ち味を生かした競馬だった。1年前のニュージーランドT2着の実績馬。マイル重賞実績では見劣らないものの、近走が冴えず、11番人気は盲点だっただけでなく、ハンデ55キロも恵まれた。格下からくる馬が強く、実績より近況を重視する傾向の裏をかかれた。

母キストゥヘヴンは旧コース最後の桜花賞勝ち馬で以後重賞2勝は中山芝1600mと1800m。小回りの差しは母と同じ。今後は東京の速い上がり時計に対応できるかがカギになる。大野拓弥騎手は19年アンタレスSアナザートゥルース以来約3年ぶりの重賞勝ち。戦前から馬場傾向をつかみ、下げて外を通る作戦を立てていたという。決め打ち系職人タイプらしく、直線に向くまで我慢、最後に仕掛ける戦略が冴えた。

2着12番人気フォルコメン。同じく内枠で下げて後方から。これまでの戦績を考えれば、後方待機策は意外な形。ゲートで遅れ、無理せず後方。勝負所で早めに外目進出はデムーロ騎手がよく見せるパターン。流れが上手くハマったが、早めにまくり気味に押し上げた分、我慢したタイムトゥヘヴンに差された。この2着で脚質転換したのかどうかは微妙なところ。スタートで遅れたことが大きく、発馬次第で再び先行する可能性もある。ただ、後ろから脚を使えた点は収穫で、成績は安定しないが、オープン、GⅢならやれる力はある。

3着1番人気ダーリントンホールはもう少し前で競馬をしたかったようだが、前に行けば急流に巻き込まれた可能性もあり、ためる形になったことで、流れに乗れたともいえる。前走洛陽Sは後半が速く、全体時計が速い競馬で今回とは真逆。それでも2、3着と崩れなかったので、一時の不振は脱した。マイル路線転向が実を結びつつあり、相手次第では重賞2勝目も近いのではないか。

ハイペースであっても一団で進んだ競馬は、結果的に内でごちゃついた。不利を受ける、もしくは十分なスペースがなくて全力を出し切れなかった馬も多く、ハイペースで崩れた先行勢も合わせ次走以降巻き返す馬もいるだろう。特に10着ザダルは小回り不向きな上に緩い馬場を気にして、行きっぷりがよくなったようで、次の東京、良馬場なら一変しそうだ。


2022年ダービー卿CTのレース展開,ⒸSPAIA



ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。共著『競馬 伝説の名勝負』シリーズ全4作(星海社新書)。

《関連記事》
【大阪杯】エフフォーリア、ジャックドールをデータで検証! 対抗するのは阪神重賞実績馬4頭!
【大阪杯】エフフォーリアが出走する中距離頂上決戦の歴史 重賞1勝の名馬・ショウナンマイティ
【大阪杯】やはり現役最強エフフォーリア! 参考レースから浮上する穴候補ヒシイグアス、ポタジェ

 コメント(0件)