好素材そろう一戦
昨年はエフフォーリア、シャフリヤールがここを経由し、クラシック制覇。その影響か、今年の出走馬レベルが上がった。エフフォーリアと同じ前走1勝クラス組は不在。その反面、前走重賞組が多数出走してきた。朝日杯FS3、5着のダノンスコーピオンとジオグリフ、ホープフルS7着アケルナルスター、東京スポーツ杯2歳S2着アサヒ。さらに京成杯、シンザン記念からも出走。分散傾向にあるクラシック路線としては珍しく、みんな前年の活躍馬にならってローテーションを組み立ててきた。
今年のクラシック戦線のポイントはイクイノックスが勝った東京スポーツ杯2歳Sと、キラーアビリティが勝ったホープフルS。前者の4着馬ダンテスヴューはきさらぎ賞2着。ホープフルS6着マテンロウレオがそのきさらぎ賞を勝ち、11着オニャンコポンは京成杯を制した。アサヒとアケルナルスターが好走すれば、この見立てはほぼ完成する。
ところが結果は秋の東京新馬戦以来のキャリア1戦馬ダノンベルーガが勝ち、2着ジオグリフ、3着ビーアストニッシド(シンザン記念4着)。さすがにそこまで単純な図式にはならなかった。とはいえ、ダノンベルーガは19年セレクトセール当歳1億6000万円(税抜)で購入された高額馬。その素質の高さと将来性を2戦目で証明してみせた。キャリア1戦での勝利は15年リアルスティール以来2頭目。同馬はクラシック2、4、2着、ドバイターフを勝った。ダノンベルーガもクラシック好勝負が約束されたか。
上がり33.7はエフフォーリアとそん色なし
そのレース内容を振り返ろう。ほぼ一日雨が降り、馬場はやや重。はっきりと道悪と呼べるほど悪化しなかったものの、開催3週目だったことも手伝い、馬場は重め。内側が悪くなり始めた。この点を考慮すれば、決着時計1.47.9は良馬場だった昨年エフフォーリア1.47.6と比べても、見劣らない。
外枠からゲートを決めたダノンベルーガは馬群の外、ジュンブロッサムの背後につけ、リズムを作る。逃げるビーアストニッシドのペースは1000m通過1.01.1。2走前の京都2歳Sと同じく緩い流れに持ち込んだ。
ダノンベルーガはキャリアの浅さを感じさせない静かな追走。最後の直線では外目に出し、残り400mからスパート、上がり33.7で差し切った。最後600mは11.3-11.2-11.8。瞬発力勝負に対応した。思えばデビュー戦も11.2-11.2-11.5を上がり33.1で駆け抜けており、末脚の迫力は間違いなくトップレベル。
エフフォーリアは11.9-11.5-10.8-11.5というラップを上がり33.4で抜け出した。今年はやや重だったことを考えても3歳2月時点での瞬発力は互角。エフフォーリアのような立ち回りではなかったにしろ、レース運びにセンスの高さも感じられた。クラシック有力候補であることは間違いない。
侮れないビーアストニッシド
負けたジオグリフも札幌2歳Sを勝ち、朝日杯FS2番人気の世代上位クラス。前走でマイル戦の流れに付き合わなかったことがよかったか、1800mの今回はスムーズに好位で流れに乗れた。この競馬なら中距離戦線も問題なさそうだ。その一方、今回のような瞬発力勝負では分が悪く、記録した上がりは34.0。ダート替わりで活躍するドレフォン産駒、やはり持久力戦で勝負したい。皐月賞はそういった流れになりやすいので、チャンスはありそうだ。
3着ビーアストニッシドはマイルのシンザン記念は4着も京都2歳Sは逃げて2着。こちらも中距離の先行で持ち味を活かせた。馬場の悪い内目を通りながら、下がりそうで下がらず、しぶとくジオグリフに食い下がった。最後まで決してバテてはおらず、こちらも瞬発力の差が出た印象で、もう少し厳しい流れも耐えられそうだ。今回のようにマークが薄くなれば面白い。
2番人気アサヒは5着。出遅れがすべてだった。中山の未勝利戦でも大出遅れ、流れに乗れず、2着に負けたことがある。常にゲートに課題を抱える。今回もそうだが、クラシックを戦う上で出遅れ癖は痛い。上がり2位33.8と瞬発力はある。それも荒れ気味のインを抜けての記録。スケールは間違いない。ゲート難をクリアすればと言いたいが、得てして短期間でこれを解決するのは難しく、賞金加算、出走権獲得のために消耗してしまいそうなタイプ。とはいえ、力は確実にあるので、長い目で見ていきたい。

ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。共著『競馬 伝説の名勝負』シリーズ全4作(星海社新書)。
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