舞台は阪神芝2400m
秋競馬到来を告げる伝統のGⅡ京都大賞典が阪神で行われるのは、94年マーベラスクラウンが勝って以来のこと。このときは芝2500mが舞台。今回は外回りコースができたことで、京都と同じ芝2400m。ここでは過去10年、阪神芝2400m、古馬3勝クラス以上の30レースをサンプルにこの舞台のコース傾向について考えていきたい。
阪神芝2400mは、内回り2000m戦と同じ正面直線半ばからスタート。先行争いが最初の急坂付近で行われ、その後は外回り残り600m付近まではほぼ平坦。4コーナーからくだりに転じ、ラスト200mで2度目の急坂を迎える。
2度の急坂越えは予想外に厳しく、最後の急坂で先行勢が苦しむ場面も多い。また、差し馬は残り600m付近で迎えるくだり坂を利用してスパートしやすい。コースとしては差し馬有利ではあるものの、隊列がすんなり決まり、序盤がゆったりした流れになれば、先行勢も十分脚をためられる。
全体的にタフな競馬になるコースで、たとえば今年3月の3勝クラス御堂筋Sはやや重で最後の200mは13.0。古馬オープンは、かつて大阪-ハンブルクCが16年までこのコースで行われていたが、現在はない。最後の古馬オープンは16年の同レース、勝ったのは中団から差してきたクリプトグラム。前後半1200mは1分12秒0-1分13秒4、最後の200mは12.7だった。京都芝2400mとは求められる適性がまるで違う。
ディープインパクト産駒不振、狙いは持続型血統
阪神芝2400mの特徴について述べたところで、ここからは人気、枠番、騎手、種牡馬などから適性について考えてみたい。
1番人気は【11-2-5-12】勝率36.7%、複勝率60%と悪くない。というかデータ的には1番人気だけがアテになる。2番人気は勝率6.7%、複勝率43.3%と勝率が一気に落ちる。一方、複勝率でみると、5番人気以内は30%以上あるので、波乱はそこまで期待できない。しかし、6番人気【4-1-2-23】勝率13.3%、複勝率23.3%、8番人気【2-3-2-21】勝率7.1%、複勝率25%など中穴ゾーンにも警戒したい。
枠番でみると、1枠が【6-4-3-20】勝率18.2%、複勝率39.4%で頭一つ抜けている。以下は大きな差はないが、7枠【2-1-5-43】勝率3.9%、複勝率15.7%、8枠【4-1-3-46】勝率7.4%、複勝率14.8%と外枠がちょっと悪い。開幕週に行われる京都大賞典は1枠には注意したい。
古馬3勝クラス以上の30レースに限ってみると、着度数別では浜中俊騎手【4-2-3-9】勝率22.2%、複勝率50%、福永祐一騎手【4-2-2-8】勝率25%、複勝率50%、C.ルメール騎手【4-1-1-4】勝率40%、複勝率60%がトップ3。だが福永騎手、ルメール騎手は同日、東京で騎乗予定。
浜中騎手の動向に注意しつつ、関東の騎手で成績がいい戸崎圭太騎手【2-1-0-3】勝率33.3%、複勝率50%が不気味。上記の16年大阪-ハンブルクCのクリプトグラムも戸崎騎手騎乗だった。京都大賞典ではヒートオンビートに騎乗予定だ。
続いて種牡馬別成績。ディープインパクトが【1-1-4-19】勝率4%、複勝率24%と不振。極端に速い上がりが必要ないコースのため、瞬発力を殺されるからだろう。上位はハーツクライ、ステイゴールド、マンハッタンカフェ、ネオユニヴァース、ブラックタイドといったスタミナタイプのサンデー系、またはキングカメハメハ、ルーラーシップ、ハービンジャーなど持続力型の種牡馬が並ぶ。
産駒が複数出走予定のオルフェーヴルは【1-0-2-2】勝率20%、複勝率60%。サンプル数が少ないが、その父ステイゴールドが上位にいることを考えれば、数字を伸ばす可能性はある。
距離短縮組に妙味あり
いくつかのファクターから適性が見えてきたところで、最後は前走距離についてさらにデータを見ていきたい。
前走距離が2400mより短いと【12-15-15-126】勝率7.1%、複勝率25%、2400mだった馬は【11-10-12-96】勝率8.5%、複勝率25.6%、2400mより長いと【7-5-3-46】勝率11.5%、複勝率24.6%。効率よく狙うのであれば、前走2400mより長い距離を走った、距離短縮組だろう。出走メンバーをみると、天皇賞(春)以来のオセアグレイトなど複数がここに該当する。
コースの特徴で述べたようにタフな流れになりやすいため、スタミナを活かすレースができる馬の成績がいい。では前走2500m以上のレースに出走していた馬の、前走の位置取り別成績を見ると、逃げ【3-0-1-4】勝率37.5%、複勝率50%、先行【1-3-0-10】勝率7.1%、複勝率28.6%あたりが狙い目。
中団【1-1-2-15】勝率5.3%、複勝率21.1%も悪くなく、後方やまくりだった馬も侮れないが、距離短縮組で狙いたいのは前走先行組だろう。なぜなら前走先行した馬の単複回収値は247%、232%と妙味たっぷり。前走目黒記念のヒートオンビート、日経賞以来の出走になるダンビュライトが当てはまる。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース公式コメンテーターを務める。共著『競馬 伝説の名勝負 1995-1999 90年代後半戦』(星海社新書)。
《関連記事》
・デアリングタクト、コントレイルも敗戦の春競馬 「雨の日の競馬は荒れる」は本当なのか
・上手な付き合い方のコツは?ルメール騎手の「買える、買えない条件」
・「関東馬の復権」「G1のルメール・川田・福永理論」 2021年上半期のG1をデータで振り返る