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【小倉2歳S】前走新馬勝ちが優勢も、あえて狙ってみたいフェニックス賞1着ナムラクレア

2021 8/29 16:59勝木淳
小倉2歳Sインフォグラフィック,ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

小倉2歳Sといえば、武豊騎手

夏の小倉は昨年が8日間、今年は前半6日、後半8日間の変則日程。小倉デビュー馬が少なかった昨年、このレースは10頭立て。その勝ち馬メイケイエールはその後、重賞2勝で桜花賞3番人気。2着モントライゼもGⅡ勝ち。19年3着ラウダシオンはGⅠ勝ち、18年ファンタジストもGⅡ勝ちなど近年の小倉2歳Sは出世レース。早熟というレッテルを張るべきではない。今年も秋から来春にかけて活躍する馬を見つけたい。ここでは過去10年間のデータからレース傾向を考えていこう。


過去10年小倉2歳S人気別成績,ⒸSPAIA


まずは馬券傾向をつかむために大事な人気別成績から。キャリアが浅く、横の比較がつきにくく、混戦になりやすいレースながら、ここ10年で3番人気以内は【9-5-2-14】と堅調。複勝率も7番人気以内がよく、極端な波乱は少ない。今年も頭数は少なめ、ある程度は人気がアテになりそうだ。

過去10年小倉2歳S騎手別成績,ⒸSPAIA


夏の小倉、騎手といえば、ヨカヨカで重賞を勝った幸英明騎手、勝利数で信頼度をアピールする松山弘平騎手、福永祐一騎手や勝率30%をキープする川田将雅騎手などが浮上するが、ここはやはり武豊騎手。小倉2歳Sの騎手別成績では着度数トップの【3-3-1-1】。この10年騎乗さえすれば、3着以下はたった1回。今年の騎乗があるかはわからないものの、見かけたらチェックしたい。

こちらも騎乗馬がいればという前提がつくが、国分優作騎手【2-0-0-1】も怖い(2勝は14年15番人気1着オーミアリス、19年3番人気1着マイネルグリット)。この夏も小倉で4勝、5、6、9、15番人気とインパクトが大きい。


今年は侮れないフェニックス賞組

浅いキャリアのなかから好走パターンを探るべく、前走成績を中心に掘り下げる。


過去10年小倉2歳S前走クラス別成績,ⒸSPAIA


前走クラスをみると、新馬【6-5-7-47】勝率9.2%、複勝率27.7%、未勝利【2-3-1-33】勝率5.1%、複勝率15.4%、オープン【2-2-1-35】勝率5.0%、複勝率12.5%。夏の2歳重賞らしく新馬組が優勢。前哨戦にあたるフェニックス賞を含むオープンがそこまで機能しない。


過去10年小倉2歳S前走新馬組距離別成績,ⒸSPAIA


新馬の距離別成績をみると、小倉2歳Sと同じ1200mが【6-5-7-39】勝率10.5%、複勝率31.6%。これ以外の距離だと【0-0-0-8】なので、1200mの経験が絶対条件といっていい。なかでも小倉芝1200mの新馬だった馬が【5-4-4-33】。同じ舞台を走った経験はさらに大きなアドバンテージになる。


過去10年小倉2歳S前走小倉芝1200新馬組着差別成績,ⒸSPAIA


1200m戦は基本的には着差がつきにくい。だからこそ派手な勝ち方、つまり大きな着差をつけて勝つ場合、馬の能力が抜けている証ともいえる。したがって0.6~0.9差という大きな着差をつけて勝った馬は【2-2-1-2】勝率28.6%、複勝率71.4%と好成績。上位人気馬が強いというデータにつながる。ただ、今年はこれに該当するような大物感ある馬はいない。

主役候補のショウナンマッハは0.5差1着。0.3~0.5差だと【2-1-1-11】勝率13.3%、複勝率26.7%。やや信頼度は落ちるものの、0.1~0.2差【0-0-1-14】よりはいい。だが、タイム差なしで勝った場合は【1-1-1-6】勝率11.1%、複勝率33.3%と再上昇。大接戦になる重賞だからこそ、勝負強さを発揮することもある。0.2差だったスリーパーダは慎重に判断したい。


過去10年小倉2歳S前走小倉芝1200新馬組位置取り別成績,ⒸSPAIA


もう少し小倉芝1200mの新馬組について。位置取り別成績を出すと、逃げ【2-2-1-14】勝率10.5%、複勝率26.3%、先行【3-1-3-14】勝率14.3%、複勝率33.3%。基本的にはスピード色の濃い馬が強いレースだが、デビュー戦でひと溜め効かせた馬がよりいい。このデータではショウナンマッハよりはスリーパーダが上位だ。


過去10年小倉2歳S前走小倉芝1200新馬組着差別成績,ⒸSPAIA


最後に【1-2-0-24】のフェニックス賞組。今年は1着ナムラクレアがスタンバイ。この組は着順でくっきり明暗がわかれる。1着だった馬は【1-1-0-4】、2着以下は【0-1-0-20】。買うならナムラクレアだ。

しかもその着差が0.1~0.2差だった場合、【1-1-0-2】。さらに位置取りが先行だと【1-1-0-1】。これらデータに当てはまるナムラクレアにフェニックス賞で騎乗したのが松山騎手。ショウナンマッハもデビュー戦は松山騎手なので、どちらかは手放すことになる。この辺の騎手を巡る駆け引きには大いに注目したいところだ。

ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース公式コメンテーターを務める。


小倉2歳Sインフォグラフィック2,ⒸSPAIA



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