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【関屋記念】今年は高速決着か? カギを握るマイスタイル、高速マイルに強い馬とは?

2021 8/8 17:00勝木淳
関屋記念インフォグラフィック,ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

3歳牝馬、4番人気以内、外枠有利

関屋記念といえば、高速決着。3コーナー付近がわずかに高いだけの新潟芝外回りのマイル戦は軽い競馬。最近は他場のマイル戦も高速決着が増え、驚くことも少なくなったが、関屋記念の決着時計は、GⅢレベルでは群を抜いている。昨年は良馬場ながら時計がかかる馬場、前後半800m46.3-46.8と前半が速いタフな流れになり、サトノアーサーの勝ち時計は1分33秒1。リニューアルした01年以降でもっとも遅い記録だった。

例年のパターンは軽い芝、スローペース、極限の瞬発力勝負から高速決着。もちろん昨年のように例年通りいかないことも考えられる。まずは逃げ馬など相手関係を見極め、例年通りか考えたい。最近はまた飛ばすスタイルに戻しつつある、マイスタイルの存在は気になる。それを踏まえ、過去10年間のデータを分析してみる。


過去10年関屋記念人気別成績,ⒸSPAIA


高速決着が多いレースとあって、1番人気【3-2-2-3】勝率30%、複勝率70%、4番人気以内9勝と堅実。タフな流れになった昨年は4、8、1番人気。せいぜい波乱があってもこのぐらいで、10番人気以下は【0-0-0-70】。大振り厳禁だ。


過去10年関屋記念年齢別成績,ⒸSPAIA


軽いレースとなれば、斤量が軽い3歳馬は【1-0-2-7】勝率10%、複勝率30%と注目。特に51キロで出走できる3歳牝馬は【1-0-1-1】。今年はNHKマイルC2着ソングラインがスタンバイ。前走はシュネルマイスターとタイム差なしの1分31秒6、高速決着に不安はない。ただし、4歳以上の古馬は若い馬が優位というわけではない。4歳【2-3-2-17】、5歳【3-5-5-48】、6歳【3-2-0-32】、確率上は出走頭数が少ない分、4歳に分があるものの、優勢と呼べるほどではない。5、6歳馬もしっかりケアしておきたい。


過去10年関屋記念枠別成績,ⒸSPAIA


高速決着であれば、内枠有利と考えがちだが、関屋記念はその逆で7枠【5-1-1-17】勝率20.8%、複勝率29.2%、8枠【3-4-0-18】勝率12.0%、複勝率28%と外枠が強い。1枠【1-0-1-15】、2枠【1-1-2-14】は極端に悪いわけではないが、その分、真ん中が冴えない。新潟芝1600mは前半、向正面からゆったり流れ、馬群はひと塊で進む。前半は静かで激しいスペースの奪い合いが展開される。内枠や真ん中はこの影響を受け、ストレスが馬にかかる。最後は究極の瞬発力勝負、精神的な消耗は想像以上に激しい。外枠は壁を作れないロスもあるが、スペースの奪い合いで優位に立てる。


前走格下でも侮れないグランデマーレ

ここからは前走レース別成績をみながら、それぞれ好走パターンについて探ってみる。


過去10年関屋記念前走クラス別成績,ⒸSPAIA


サマーマイルシリーズとあって前走がGⅢだった馬は【4-8-4-68】、質量ともに多い。ただし、今年の中京記念は小倉芝1800mだったため、出走馬も勝ったアンドラステぐらい。今年に限ってはつながりに疑問は残る。確率でいえば、前走GⅠ【3-1-2-17】勝率13%、複勝率26.1%、前走3勝クラス【2-1-1-5】勝率22.2%、複勝率44.4%に注目したい。


過去10年関屋記念前走GⅠ組レース別成績,ⒸSPAIA


ソングラインが該当する前走NHKマイルCは【1-0-1-4】勝率16.7%、複勝率33.3%。案外とりこぼす印象もある。2着だった馬は【0-0-0-2】。14年7番人気タガノブルグ15着、19年2番人気ケイデンスコール14着と大敗。いずれも牡馬だが、前走は1着との着差0.2以内と悩ましい。サンプルはたった2頭なので、決めつけるのは早計だが、頭には入れておきたい。

次にカラテが該当する前走安田記念は【1-1-0-6】勝率12.5%、複勝率25%とここも取りこぼしがある。前走着順別成績ではカラテが当てはまる10着以下は【1-0-0-4】。12年1番人気ドナウブルーが勝利。カラテは冬の東京新聞杯1分32秒4で勝利。左回りの軽いマイル戦にも対応できるだろう。


過去10年関屋記念前走3勝クラス組距離別成績,ⒸSPAIA


最後に前走3勝クラスについて、距離別成績をみる。前走が1600mだと【1-1-0-3】。16年3番人気ヤングマンパワー1着、11年2番人気エアラフォン2着。阪神マイルで3勝クラスを勝ったグランデマーレは、デビュー2戦目で芝2000m1分58秒9を記録した素質馬。その後は骨折で長期休養を余儀なくされたが、4歳になって2連勝と再び軌道に乗ってきた。重賞でも十分通用するだろう。

最後にこれらデータは関屋記念が例年通りの軽い競馬であればという条件が必須。展開のカギを握るマイスタイルがどういう出方をするのか、展開予想は重要になるだろう。

ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース公式コメンテーターを務める。


関屋記念インフォグラフィック2,ⒸSPAIA



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