今年は混戦模様の好メンバー
今週はダート重賞・エルムS。夏の北海道開催を彩る、ダート古馬のぶつかり合いが見られる一戦だ。先週のクイーンSに続き、オリンピックの影響で今年は函館開催となる。
今年は昨年王者・タイムフライヤーが連覇を狙って参戦。加えて、9歳馬ウェスタールンド、8歳馬ケイティブレイブ、ヴェンジェンスといった実力あるベテラン勢と、デルマルーヴル、ロードブレス、ダンツキャッスルといった勢いにのる5歳世代、さらには4歳馬アメリカンシードなどが顔を揃えた。
過去にはプリエミネンス、アドマイヤドン、ローマンレジェンドらを輩出した一戦。歴代の2着馬・3着馬たちも、エスポワールシチー、グレープブランデー、タイムパラドックスといったビッグネームが並ぶ。今回はそんな期待のダート戦・エルムSの歴史を振り返る。
4、5歳馬が上位の中心に
ここ5年の優勝馬を振り返ると、2016年こそ7番人気馬が勝利しているものの、ここ3年は2、2、1番人気が優勝。一見すると比較的安定感のある一戦のように見える。しかし実は2013年以降、1番人気が7連敗中だったため、昨年のタイムフライヤーの快走はそうした呪縛からの解放を意味する勝利でもあった。
2017年には単勝1.5倍のテイエムジンソクが2着、2013年には単勝1.6倍のブライトラインが3着に敗れているように、1番人気馬が支持率の高さにかかわらず敗れることがある。新潟開催だった2009年には、当時既に頭角を現しつつあった3歳馬トランセンドが4着に敗れている。
ベテランの参戦も多いが、ここ10年の勝ち馬はほとんどが4、5歳馬で、その以外の年齢で勝利したのは2014年ローマンレジェンド(6歳)のみ。また、2016年の覇者であるセン馬リッカルドは、翌年・翌々年にも挑戦しいずれも6着と善戦している。そのほかのセン馬も、ここ10年で2~4着が各1回という安定感を見せる。
リピーターが多い割に"連覇"は過去一度
2017年の覇者・ロンドンタウンは、それまでに交流重賞・佐賀記念は制していたものの、JRA重賞は初制覇だった。同馬はその次走に国際招待競走・コリアCを選択。韓国へと渡り、そこでクリソライトとの日本馬ワンツーフィニッシュを成し遂げた。ロンドンタウンは翌年もエルムS(4着)をステップにコリアCを連覇している。
上述したリッカルドやロンドンタウンらが複数年出走しているように、エルムSは「お決まりの夏の過ごし方」として何度も挑戦してくる馬が一定数いるレースでもある。当然、連続して好走する馬も少なくない。しかし重賞になった1997年以降で連覇を達成したのは2004年・2005年の勝ち馬パーソナルラッシュのみ。ちなみにそのパーソナルラッシュも、3連覇を目指した2006年は12着に敗れている。
興味深いのは2010年・2011年。勝ち馬はそれぞれクリールパッション・ランフォルセだが、注目してほしいのはその2、3着馬だ。なんと、2年連続で2着オーロマイスター、3着エーシンモアオバーなのである。特にエーシンモアオバーは6度もエルムSに出走。3着、3着、4着、2着、11着、3着という立派な成績を残した。ちなみにクリールパッションも6度エルムSに出走し、こちらも安定した成績を残した。
母父ナリタトップロードVS母父テイエムオペラオー
このレースに縁の深い血統といえば、最近だとフジキセキだろう。昨年の3着馬アナザートゥルースは母父フジキセキ、上述したロンドンタウンや2018年3着のミツバはカネヒキリ産駒なので父父フジキセキである。サンデー系の血を持つ馬が好走するパターンの多いレースで、フジキセキの血を持つ馬の好走も頷ける。今年の出走馬だと、ロードブレスの母の母父がフジキセキだ。
また、面白い血統を持つ馬の好走も見られるのが、このエルムSの見所でもある。2018年の覇者であり、その後も2着、4着と善戦したハイランドピークはトーセンブライト産駒。2016年は1着フサイチリシャール産駒、2着アドマイヤボス産駒、3着アグネスデジタル産駒での決着だった。過去にはマヤノトップガン産駒のメイショウトウコンもここを制している。
今年はロードブレスの母父がナリタトップロード、トップウイナーの母父がテイエムオペラオーと、クラシックで火花を散らした2頭の対決も見られる。ぜひ、血統にもご注目しつつ、北のダート戦を堪能してほしい。
ライタープロフィール
緒方きしん
競馬ライター。1990年生まれ、札幌育ち。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、エアグルーヴ、ダイワスカーレット。
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