1番人気【1-0-0-9】、穴は関西馬から
函館記念といえば、三連覇を達成したエリモハリアー。その人気は6、1、7番人気、妙味たっぷりの三連覇だった。2年連続14番人気で出走して1、2着だったクラフトマンシップなど、函館記念は"ここだけ走る"という個性派が多かった。
近年はそういったタイプが少なくなったが、波乱の傾向は変わらない。昨年は15番人気アドマイヤジャスタ1着、13番人気ドゥオーモ2着、3連単は340万円を超えた。波乱前提といってもいい函館記念について過去10年のデータをもとに探っていこう。
まず1番人気は【1-0-0-9】と衝撃的。19年マイスタイルが勝利したのみで、2、3着もいない。ここまでアテにならない重賞は数少ない。さらに2番人気も【1-0-0-9】、14年ラブイズブーシェが馬券に絡んだだけだ。上位人気で買うなら、3番人気【3-0-2-5】勝率30%、複勝率50%だろう。
1着馬でいえば、3~5番人気が7勝と集中している。逆に穴の定番6番人気は【0-0-0-10】とさっぱり。穴は7~9番人気【0-5-7-18】あたりか。このゾーンを買うなら連軸で考えたい。なお10番人気以下は【1-5-1-62】、狙いたくなる気持ちはあるが、確率的には効率が悪い。傾向から考えると、1着は3~5番人気、2、3着に7番人気以下という組み合わせだろうか。
4歳【2-3-1-14】勝率10%、複勝率30%が一応好走ゾーンだが、5歳も【3-0-5-32】複勝率20%で悪くなく、6歳【2-1-2-44】、7歳【2-4-0-21】、8歳以上【1-2-1-16】など全世代で気を抜けない。年齢で取捨選択をするのは危険だろう。今年も5歳以上のベテランが大挙出走予定で不気味な存在だ。
東西別成績をみると、関東馬【4-4-3-63】勝率5.4%、複勝率14.9%、関西馬【6-6-7-66】勝率7.1%、複勝率22.4%とさほど差はない。北海道は東西ともに滞在が基本、輸送の有利不利もなく、同じ調教コースで調教を積むためかフラットな目線で構えたほうがいい。
ただし、関東馬の単複回収率はそれぞれ40%、60%。関西馬の単複回収率は131%、147%。注目はここにある。関東馬は比較的上位人気での好走が目立ち、穴は関西馬から出る。昨年の1、2着や18年13番人気3着エテルナミノル、17年14番人気2着タマモベストプレイなど関西馬の穴はお宝満載だ。
前走重賞5着以内6勝、巴賞3着以内【0-0-1-8】
それではここからは斤量や前走など好走パターンをさらに掘り下げていきたい。まずは斤量別成績から。
ハンデ戦は重ハンデから、とはよくいわれるが、函館記念も確かに斤量を背負った組は侮れず、57.5キロ以上は【1-2-1-10】と結果を出している。だが、57キロが【0-0-1-13】と不振。4歳以上の基本重量である57キロがこの成績、函館記念の難解さはこのあたりにある。好走ゾーンは54~56キロ【9-3-7-83】。軽量馬は52~53キロ【0-4-1-16】あたりまで。かつてほど極端に軽い馬は来ていない。54~56キロを主軸に、出走していれば57.5キロ以上、52~53キロへという馬券がパターンだろうか。
前走成績について、ざっくりと重賞組の着順別成績をみる。掲示板以内とそれ以外とでわけて考えると、掲示板を外した馬の成績が悪い。5着以内は【6-2-1-10】と勝ち切る傾向。波乱前提とはいいつつ、素直に前走重賞でそれなりに好走してきた馬がいい。問題はそういった馬が人気を落としがちであるという点にある。波乱前提というレースではこういうことはしばしば起こるものだ。今年の出走馬でいえば、トーセンスーリヤとカフェファラオが該当。
反対に、掲示板を外した組は【2-2-5-47】。好走馬も出すが、波乱を狙ってこのゾーンに手を出すのはあまり勧められない。重賞6着以下のバイオスパーク、アイスバブル、ワセダインブルーなどは慎重に扱いたい。
オープン・リステッドの着順別成績は3着以内【1-0-2-21】だが、内訳をみると、1着【0-0-0-11】、2着【0-0-1-5】と不振。ここは波乱前提で強気にいきたい。対して3着が【1-0-1-5】、ほかは6~9着【1-4-1-22】など負けた組の巻き返しがある。福島民報杯1着マイネルウィルトスは危険で、大阪城S9着レッドジェニアルあたりが狙いだ。
例年、中1週で出走してくる馬の多い巴賞組。この取捨選択がカギになる。というのも、巴賞3着以内は【0-0-1-18】で悲惨。馬券圏内は16年9番人気3着ツクバアズマオーしかいない。サトノエルドールやマイネルファンロン、ナイママは今年好走できるだろうか。巴賞好走馬の不振が波乱を巻き起こしているという側面はある。巴賞組を買うのであれば、5着以下【1-5-1-25】から選びたい。
さらに巴賞組の位置取り別成績を出すと、中団【1-2-1-15】、後方【0-2-0-9】と差してきた馬の成績がいい。5着以下で中団より後ろにいた馬のなかに思わぬお宝がありそうだ。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース公式コメンテーターを務める。
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