日本一速い小倉芝1200m
名古屋市に本社を置く中部日本放送は、1951年に現在のMBSラジオ(大阪)とともに日本初の民間ラジオ放送局として開局した。平日午後の情報番組がJNN系列局でネット展開するなど中京ローカルにとどまらない。その略称がCBCである。
CBC賞は当然、中京競馬場で施行される。ところが今年の舞台は、関西圏の競馬開催の変更により、小倉芝1200m。CBCといえば名古屋だが、競馬の舞台は小倉。間違えないようにしたい。小倉でCBC賞が行われるのは99年(勝ち馬アグネスワールド)以来。当時は暮れの中京開催の代替だった。ここでは小倉芝1200mの傾向について、過去10年の夏開催、3歳以上戦、3勝クラス以上の28レースをもとに探っていく。
まず小倉芝1200mについて考えよう。小倉競馬場は高低差こそさほどではないが、2コーナー付近が頂上になっている。芝1200mは福島と同じように2コーナー奥にゲートが置かれる。つまり、頂上から序盤はゆるやかに下り、3コーナーに向かう。
中山ほど一気に下るわけではないが、構造に共通点は多い。また函館と同じように前半600m区間に曲線部分が占める割合は少なく、くだり勾配も手伝い、自然と前半は速くなる。中山芝1200mもタイムが速くなる傾向があるが、小倉芝1200mは中山のように最後に急坂があるわけではなく、全体時計がさらに速い。そのためJRAの芝1200mレコードは2歳、古馬ともに小倉競馬場で記録されたものである。開幕週のCBC賞は、良馬場であればまず高速決着だ。
4歳、外枠が優勢
コース形態を踏まえた上で、今度は人気、年齢、枠順などについてデータをみていこう。
高速決着となれば人気馬が強そうなものだが、3勝クラス以上のデータでは、1番人気は【2-6-3-17】勝率7.1%、複勝率39.3%、28レース中2勝はもの足りない。高速決着だからこそ、ちょっとした不利などわずかな要素に左右されるのではないか。勝率でみれば、1~9番人気はだいたい互角といってよく、どこからでも入れるレースになりやすい。
今年はヨカヨカなど3歳馬の参戦があるので、年齢別成績をみる。3歳は【0-3-4-32】で勝ち馬は出ていない。これは3勝クラス以上という条件ならではの数字だ。
7~9月の小倉で3勝クラス以上に出走できる3歳馬はそもそも少なく、ヨカヨカのように3歳限定戦でトップレベルに食い込んでいた馬が多い。クラシックに全力投球してきた馬にとって、間隔をとらずに夏競馬へ参戦するのは容易くはない。こういった事情がこの数字に反映されているだろう。ヨカヨカも桜花賞から葵Sとタフな経験を続けてきただけに、飛躍のきっかけになった地元小倉出走であっても安易に飛びつけない。
古馬勢は4歳【12-5-12-42】勝率16.8%、複勝率40.8%が突出。単回収率135%、複回収率111%と妙味もあり、まずは4歳馬に狙いをつけよう。タイセイビジョン、ビオグラフィーなどこのレースも候補は多い。
小倉芝1200mはフルゲート18頭。出馬が殺到するレースが多く、18頭立てのレースが目立つ。それが反映しているのか、内枠より外枠が有利な傾向にある。フルゲートの6頭分にあたる1~3枠は【6-6-5-120】、7、8枠は【12-9-8-101】と外枠が顕著にいい。回収率も7枠単197%、複94%、8枠単112%、複86%と外枠はおいしい。
何度も書くが、高速馬場の短距離戦はわずかな不利も着順に大きく影響する。内枠は距離ロスを防げるメリットより包まれるなどのリスクが大きいようだ。反対に外枠は距離ロスがあっても、比較的流れに乗りやすい。馬場状態がいい夏開催でもこういった傾向があることは覚えておこう。
前走1200m超を逃げた馬は不振
次に前走成績から好走パターンについて突っ込んでみたい。
前走距離を比較すると、前走が1200mだった馬は【19-20-20-231】勝率6.6%、複勝率20.3%。1200m未満は【4-3-4-40】勝率7.8%、複勝率21.6%。1200m未満の延長となると、JRAでは1000か1150mしかなく、出走数が少ないという事情がある。アイビスSD後の北九州記念の数字が反映されているので、ここはあまり気にするものではない。前走が1200m超の短縮組は【5-5-4-63】勝率6.5%、複勝率18.2%。高速決着のスプリント戦への対応という意味ではやや短縮組は不利といえるか。
前走が1200mだった馬の位置取り別成績をみると、逃げ【2-3-1-20】、先行【7-7-8-63】が中団【7-8-7-96】や後方【3-2-4-50】よりもいい。当然ながらある程度流れに乗れるスピードがないと厳しいが、中団や後方が極端に悪いというわけではない。前走1200m組は前に行った馬に注意しつつ、といった感じか。
では短縮組はどうだろうか。まず1200m超で逃げた馬は【0-1-0-8】とイマイチ。前走京王杯SCを逃げたビオグラフィーやNHKマイルCで先手をとったピクシーナイトはここに触れてしまう。いいのは先行【2-3-4-17】と中団【2-1-0-24】あたりまでか。後方は【1-0-0-14】で逃げと同じく厳しい。短縮馬は極端な競馬ではない馬をチョイスしたい。上記2頭より戦歴は地味だが、前走安土城S(芝1400m)で先行して3着だったメイショウチタンがデータに合致する。4歳牡馬、外枠に入れば期待値は高まる。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース公式コメンテーターを務める。
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