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【函館SS】函館と似ているが微妙に違う札幌芝1200m 「4歳は西高東低」など当日まで覚えておきたいデータは?

2021 6/6 16:59勝木淳
2021年函館SSに関するデータⒸSPAIA
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札幌と函館の違い

今年は五輪の影響で夏競馬の日程は大きく変更された。待望の北海道シリーズは例年の函館、札幌ではなく、札幌、函館の順で開催される。6月から7月は俗に蝦夷梅雨と呼ばれる季節で、道南の函館はその影響を受けるが、内陸にある道央の札幌はそこまで心配がいらない。今年の北海道シリーズは安定した馬場状態で開催が進むのではなかろうか。

ただし開催が入れ替わったことで、今年の北海道シリーズは過去のデータから傾向を探るデータ党にはやや厳しいことになるだろう。サマースプリントシリーズ開幕戦・函館SSも過去の函館施行のデータの取り扱いには注意したいところだ。ここでは過去10年、札幌競馬場の芝1200m、古馬オープン以上の17レースをベースにコースデータから好走馬を探っていく。

まず札幌と函館の芝1200mの違いについて考えよう。そこまで差はないのではと思われがちだが、厳密には色々と違いがある。正面直線は約260mで同じだが、函館は向正面残り1000m地点から残り400m付近まで緩やかに上り、4コーナーで下るので、坂適性が問われる。一方札幌はほぼ起伏がない平坦コース。

またコーナーは函館がタイトで、札幌は大回りのため、曲線部分が長く、札幌は函館ほど小回り適性が問われない。芝1200m戦の前半600mを比較すると、函館はほぼ向正面と3コーナーの入り口、対して札幌は直線部分が短く、3コーナーにかなりかかる。

つまり、函館と札幌ではペースが違う。函館はハイラップになりやすく、札幌はそこまで速くない場合が多い。よって、札幌芝1200mの前半600mが33秒台前半になった場合、超がつくハイペースであると判断したほうがいい。まずはこういったコースの違いを頭に入れて馬券検討へ進みたい。


主力は4、5歳

ここからは札幌のデータをみていこう。まずは全体的な傾向をつかむために人気別成績から。


過去10年人気別成績ⒸSPAIA


1番人気は【6-3-2-6】勝率35.3%、複勝率64.7%。同条件の函館は1番人気の勝率23.1%、複勝率61.5%、札幌の10番人気以下は【1-0-1-85】、函館【1-3-2-55】なので、残念ながら札幌は函館ほど波乱が期待できない。だいたい4番人気以内の成績がいいので、まず目線は上位人気に置きたい。


過去10年人気別成績ⒸSPAIA


夏競馬といえば3歳。とりわけ斤量差が着順に大きく影響する短距離戦ではがぜん注目だが、札幌芝1200mのオープン以上では3歳【1-3-0-26】勝率3.3%、複勝率13.3%とイマイチ。3歳に注目は条件戦での話で、オープンとなると壁を感じる。となると、主力は4歳【5-5-7-28】勝率11.1%、複勝率37.8%と5歳【8-3-6-54】勝率11.3%、複勝率23.9%で異論はない。


4歳で狙うならビアンフェ

ではここからは4歳と5歳について傾向の違いをみていこう。


過去10年4歳馬所属別成績ⒸSPAIA


北海道シリーズは基本、現地滞在で行われ、輸送がなく、地元の有利不利もない。そうなると東西の馬質や実力差がはっきり出るようで、4歳馬はこの条件では美浦【0-2-2-12】複勝率25%、栗東【5-3-5-16】勝率17.2%、複勝率44.8%と西が圧倒的。4歳は関西馬と覚えておこう。


過去10年4歳馬前走距離別成績ⒸSPAIA


前走距離に注目すると、前走が1200mだった馬が【5-4-6-23】勝率13.2%、複勝率39.5%。延長も短縮も極端に数が少ないのは、札幌が北海道シリーズの後半で、函館芝1200mからの転戦馬が多いという事情もある。ともかくスプリント戦特有の流れに慣れていることは大きいようで、短縮組のギルデッドミラーよりオーシャンS3着だったビアンフェを信用したい。

過去10年4歳馬前走着順別成績ⒸSPAIA


ざっくり4歳の前走着順別成績をみると、前走1着は【1-1-3-5】勝率10%、複勝率50%で好走はするも連勝は少ない。一方、前走2着は【2-0-0-3】勝率40%と勝ち切る傾向が強い。また6~9着は【1-1-2-8】で掲示板を外した馬が2、3着に顔をのぞかせる場面は想定したい。前記のギルデッドミラーも連下級には入れておこう。


カレンモエは買えるのか

ではここからは同じデータを5歳でみていこう。

過去10年5歳馬所属別成績ⒸSPAIA


4歳のところで関西馬断然と書いたが、5歳は話が違う。美浦は【5-1-2-27】勝率14.3%、複勝率22.9%、対して栗東は【3-2-4-27】勝率8.3%、複勝率25%なので、5歳は関東馬の成績がいい。西高東低とひとくくりにすると痛い目に遭う。今回は使えなくても覚えておきたいデータだ。


過去10年5歳馬前走距離別成績ⒸSPAIA


前走距離を比較したデータをみると、4歳と同じく前走が1200mだった馬が【7-2-5-47】勝率11.5%、複勝率23%といい。1200m未満も【1-1-1-2】でいいが、該当するのは1000か1150mしかなく、韋駄天Sから転戦する馬がいないようなので、今回は5歳も前走1200m組に注目。カレンモエやジャスティンあたりがいい。

反対に1200m超だった5歳馬は【0-0-0-5】で好走がない。この5頭のうちキーンランドCで上位人気に推され、凡走した馬もいる(11年2番人気9着ジョーカプチーノ、18年3番人気9着ムーンクエイク)。京王杯SC4着だったミッキーブリランテなど、該当馬には注意したい。


過去10年5歳馬前走着順別成績ⒸSPAIA


最後に5歳の前走着順について。こちらは4歳と比べて、連勝馬が出現する。前走1着は【3-1-3-13】勝率15%、複勝率35%。一方4歳で成績がよかった前走2着は【0-0-0-2】。たった2頭ではなんとも言えないが、カレンモエが該当するデータで、4歳と傾向が違うということは頭に入れておこう。凡走馬についても、6~9着【1-1-0-12】とそこまで巻き返してくる馬はいない。

このように主力世代の4、5歳は好走傾向が微妙に異なる。詳細に掘り下げることで見えてくる、世代間の違いに注意したい。

ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース公式コメンテーターを務める。


2021年函館SSに関するデータインフォグラフィックⒸSPAIA



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