逃げ馬ではなく先行馬を買え
今週日曜はGⅢ・東京新聞杯が行われる。同コースで施行される春のGⅠに向けてのステップレースとして、重要な価値を保ち続ける伝統の一戦だ。昨年の富士SでGⅠ馬ラウダシオン以下を退け、マイルCSでも6着に健闘したヴァンドギャルドを中心に、寒さの残る東京競馬場に実力馬が出揃った。
馬券における取捨に悩むのが、昨年のこのレース2着馬シャドウディーヴァや東京巧者ダイワキャグニーといったエリザベス女王杯・日経新春杯の2200m戦から大幅な距離短縮で臨む馬たちの取り扱いだ。
今週のコラムは「距離短縮」をテーマに、距離短縮で買える馬の条件、相性のいい騎手、パフォーマンスを上げる種牡馬をピックアップしていく(使用するデータは2016年2月6日~2021年1月31日)。
まず、距離短縮組では前走どのような走りを見せた馬を買えばいいのか。複勝率ベースで見るとやはり前走で逃げや先行、すなわちスピードを見せていた馬が強いが、前走逃げ馬(複勝率24.3%)よりも先行馬(同26.8%)のほうが好走している。前走先行馬は「リステッド以上」に限定すると単回収率116%と収支プラス域、さらに芝では120%台に突入する。
芝のGⅢである東京新聞杯はまさにぴったりで、該当馬はダイワキャグニーがスタンバイ。同馬が該当するキングカメハメハ産駒は「距離短縮」「芝GⅢ・前走先行」で勝率24.0%、単勝回収率235%と抜群の相性で、該当条件では目下4戦連続連対中。
全8勝がこの競馬場という現役屈指の東京巧者、前走から中9週以下で臨んだレースで【5-0-3-2】複勝率80.0%(前走が全て着外という点が穴党にはうれしい)という好データを引っ提げて府中のターフに戻ってくる今回は期待したい。
距離短縮界の横綱、カレンブラックヒル

ここからは東京新聞杯にあてはまらないものも含め、距離短縮で狙える条件を挙げていく。まずは種牡馬から。何をおいてもおすすめしたいのがカレンブラックヒル。2019年に初年度産駒がデビューしたばかりとあってサンプルが少ないものの、4割近い複勝率の上に回収率が単複ともに170%台と「距離短縮界の横綱」を名乗るに足る成績を残している。
マイルまでなら芝・ダートを問わずに好走している点が強みで、5番人気以下でも複勝率が24.3%、複勝回収率200%オーバーと人気薄でも関係なし。持ち前のスピードで直線を悠々と逃げる産駒に注目だ。
主要なスピード系種牡馬であるロードカナロアも大関級の威力を持つ一頭。前走で1400m・1600mを使ってからの短縮がベストで、該当条件では単勝回収率132%を記録している。特に新潟や東京、中京といった直線の長いコースでは複勝率42.3%、単勝回収率217%とお金が落ちている。速さで他馬を振り落とす血の威力を目の当たりにできるだろう。
現役時代は天皇賞(春)にも出走するなど距離短縮のイメージがあまりないキズナも、芝で単勝回収率126%を誇り、関脇を張れる実力がある。前走追い込み組も単複回収率120%以上だが、主に狙いたいのはやはり前走先行組。複勝率36.7%・単回収率265%と財布を潤しそうな数字が並んでいる。
芝×距離短縮×前走先行の川田騎手、確変中

最後に距離短縮で買えるジョッキーを紹介する。まずは日本競馬界屈指のポジション取り巧者でおなじみ、川田将雅騎手。芝では複勝率56.3%とかなりの確率で好走している上に単回収率101%・複回収率97%と妙味十分。前走先行馬に騎乗した場合は鉄板級で、昨年7月以降では【9-1-9-4】複勝率82.6%と崩れを知らない。確変状態に入っている今が稼ぎ時だ。
同じ芝ではいうなら、関西のトップジョッキーとして名を上げ始めた北村友一騎手も見逃せない。全体の単回収率は川田騎手と同じ101%をマークしている。同騎手の特徴は内枠を引いた時の破壊力で、4枠から内に限定すると過去5年で4度単勝回収率110%以上、うち2度は250%超え。距離にシビアな面のある馬をコース取りで足らせる手腕の高さを物語っている。
ダートでは、関東の中堅として確固たる地位を築いている田辺裕信騎手を推奨。単勝回収率は96%とわずかに100%を下回るが、信頼の置けるレベルにある。さらに輝くのは乗り替わりで、単勝回収率は120%に上昇。条件戦を中心に勝ち星を重ねており、過去5年では37頭が田辺騎手の一発回答によって各々のクラスを卒業していった。ここ一番の起用には単勝馬券を握って声援を送りたいところだ。
《ライタープロフィール》
東大ホースメンクラブ
約30年にわたる伝統をもつ東京大学の競馬サークル。現役東大生が日夜さまざまな角度から競馬を研究している。現在「東大ホースメンクラブの愉快な仲間たちのブログ」で予想を公開中。
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