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【福島記念】先入観を投げ捨てろ! データは語っていた福島記念「必勝法」

2020 11/16 12:08勝木淳
2020年福島記念レース展開インフォグラフィックⒸSPAIA
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福島記念の人気順別成績から

トップシーズンである秋のローカル開催は福島。その最終週に組まれた福島記念は裏街道のごとく。集う出走馬は一長一短、序列のはっきりしないどんぐりの背比べ。そういった印象から我々はついつい福島記念に馬券的妙味を求めてしまう。そんな戦前に抱くイメージこそ、その目を霞ませてしまう。先入観や印象こそ我々の馬券にとって最大の敵なのだ。

福島記念といえば荒れるという先入観。たしかに10年12人気1着ダンスインザモア、14年13人気2着フラアンジェリコなど大穴の激走はある。こうした印象に引っ張られがちだが、過去10年で1人気【3-3-2-2】、2人気【3-1-2-4】、3人気【1-2-2-5】と上位人気は堅実に走る。昔から福島のファンは馬券が上手いといわれる。堅実な上位人気馬の狭間にときおり入り込む大穴が我々をどうにも惑わせる。今年もその傾向通り、2人気バイオスパークが勝ち、2着は1人気のヴァンケドミンゴ、3着に5人気テリトーリアル。馬連は2人気、3連単24人気では穴党はぐうの音も出ない。

見ごたえあった4角の攻防

競馬は戦前の予想通り3人気トーラスジェミニが引っ張り、11秒台後半から12秒そこそこの淀みないラップを刻む。ペースを落とさないで後続の脚を削る戦法はこの1年ローカルのオープンを賑わせた同馬の武器だ。上位人気の逃げ馬に自分の形へ持ち込ませまいとテリトーリアルが番手からプレッシャーをかける。

それが堪えたのか、距離がやや長かったか、トーラスジェミニが4角手前で一杯。早めに先頭に立たされてしまったのはテリトーリアルにとって誤算だったか。もう少しトーラスジェミニに我慢してもらって抜け出す形が理想だっただろう。中山と東京どちらでも好走する競馬場を問わないタイプだが、ムラっぽいところもあるので、上位人気に支持されにくい。今後も注意だろう。

勝ったバイオスパークは内枠から枠なりにインコースの中団を確保。勝負所では前にいたマイネルハニーが外に動くのを読みきり、それを待っていたかのようにラチ沿いを突いた。これでJRA全10場重賞制覇の池添謙一騎手らしい戦略力だった。開催最終日でも比較的天候に恵まれた秋開催は内側の馬場も傷んでいなかった。この点もバイオスパークに味方した。

福島記念は過去10年で1~3枠が7勝と内枠有利なレースであるというデータも改めて強調しておこう。人気といい枠番といい、頼るのは印象ではなくデータだということを痛感する競馬だった。

2着ヴァンケドミンゴは七夕賞3着など、レース前の時点で福島芝【4-0-1-0】の屈指のコース巧者。やはりここでも崩れはしなかった。道中はバイオスパークと同位置の外を追走。同馬との着差は4角で前が壁になり、それを嫌って外に進路を求めた分だろう。勝ち馬にきれいにインをこじ開けられてはしかたない。こちらはまだ4歳なので今後も福島の中距離戦では買わない手はない。今回同様に上位人気は必至だろうが、だからといって嫌う理由は見当たらない。

エリザベス女王杯ではなく、得意の福島に照準を定めた大ベテランのデンコウアンジュは後方から唯一掲示板(4着)まできた。相変わらず不器用で外を回す競馬でないと力を出せないところもあるが、いぶし銀・柴田善臣騎手と手が合う印象。牡馬相手に56キロでこの走りは本当に頭が下がる。

福島記念レース展開


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。YouTubeチャンネル『ザ・グレート・カツキの競馬大好きチャンネル』にその化身が出演している。



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