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【エリザベス女王杯】5歳牝馬の底力! ラッキーライラックの強さから3歳勢の評価まで徹底解説

2020 11/16 11:16勝木淳
2020年エリザベス女王杯レース展開インフォグラフィックⒸSPAIA
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競馬は着実に進化する

天皇賞(秋)に続き、ポイントは5歳だった。過去10年のエリザベス女王杯で5歳は【1-2-1-48】、勝ったのは重馬場だった12年レインボーダリアのみ。反対に3歳【3-4-3-29】4歳【6-3-6-45】で秋シーズンらしく世代交代を象徴するような結果が多かった。上位人気のラッキーライラック、ノームコア、伏兵のサラキア、センテリュオなどの5歳勢は世代交代にどこまで抵抗できるのか、これがテーマだった。

結果は天皇賞(秋)のアーモンドアイと同様に5歳ラッキーライラックが連覇を飾り、2着も同世代のサラキア、4歳ラヴズオンリーユーは3着。5歳世代の層の厚さと強さを見せる形となった。4、5歳でのエリザベス女王杯連覇はメジロドーベル以来2頭目。そうそう達成できる記録ではない。

アーモンドアイが代表格になる5歳世代だが、振り返れば桜花賞まではラッキーライラックが女王候補だった。2歳GⅠを勝ち、チューリップ賞もクリア。女王の座に王手をかけてからが長かった。クラシックではアーモンドアイの後塵を拝し、折り合いという自身との戦いにも悩まされた。長いトンネルを抜けたのは4歳秋のエリザベス女王杯。スミヨン騎手にエスコートされ、インを突き抜けた。

大阪杯の後、再び勝ちきれない競馬が2戦続いたなかで勝った5歳のエリザベス女王杯。好不調の差が大きく、立て直しにくい牝馬、そういった概念を払拭するような勝利だった。競馬は着実に未来へ向けて進化している。その先駆けがこの5歳世代ではなかろうか。

まさかの逃げ、ノームコア

2人気ノームコアが好発を決め、周囲が抑えたことによってハナに立つ展開は予想外だった。札幌記念で12頭立ての6番手で1角を回ったノームコアが初角で後続を離すような逃げを打った。無理に抑え込んでリズムを乱すよりはという意図だろうが、これは読めなかった。やはり競馬は難しい。ノームコアのペースは2角手前までは早かったものの、向正面に入ると12秒台のラップで落ち着く。緩い流れではなかったが、番手にいたリアアメリアが後続馬群にフタをするような形になり、宝塚記念のような後半早めにレースが動くことはなかった。

結果として最後の600mは11.9-11.1-11.8、このコースとしては珍しく上がり勝負になった。これらを見越して自ら動いたラッキーライラック。スタート直後にいつでもどこでも動ける位置を無理なくとる。ここ3週間のルメール騎手の戦略は徹底している。その結果、4角から記録された11秒1というラップをラッキーライラックは好位で踏んだ。勝つべくして勝ったという感じだ。阪神芝2200mを自力でまくって勝つ、まさにステイゴールド一族の必勝パターン。ルメール騎手はこれを知っていたのだろうか。

対照的だったのはノームコア。普段は後ろからコーナーで早めにエンジンをかけながらギアチェンジするタイプで、こういった瞬時にギアチェンジしなければならない急加速ラップに対応できなかった。前半のラップがやや速かったことで、勝負所で強気に出られず、結果的に不得手な上がりの競馬に持ち込んでしまった。それでも16着は負けすぎで、なにもなければいいが……。

上位にとりたい3着ラヴズオンリーユー

2着サラキアは夏の小倉でそれまでのイメージを覆す走りを披露して以来、ひと皮むけた印象。つづく府中牝馬Sで不得手だった道悪を克服、本格化気配そのままにここでも好走した。ラッキーライラックの仕掛けにひと呼吸遅らせて動いたことが功を奏した。どんな流れでも溜めて溜めて最後に爆発させるような競馬が合っているものの、今回が2着だったように先に動く馬を捕らえられない形も多くなりそうで、本格化とはいえ相手関係と展開次第という課題は残った。

3着ラヴズオンリーユーは対照的にラッキーライラックの動きに合わせて早めにスパートした結果、サラキアに捕まっての3着。ラッキーライラックを知り尽くすデムーロ騎手だけに動かないわけにはいかなかった。同馬を脅かすシーンには至らなかったが、レースの決め手となった11.1を刻んだ区間で馬群の外を回り、もっとも厳しい競馬をした。4歳代表も十分力があるところをみせた。

「デアリングタクトは本当に強いか」論争

3歳最先着は4着ウインマリリン。人気になりにくいタイプだが秋華賞以外は大きく崩れていない堅実派で、いつでも好位で流れに乗れる強みがある。戦前に差し馬優勢とランクづけされ、人気の盲点になったときに一発を期待したい。ジャパンCに向けて世代論、とくに「デアリングタクトは本当に強いのか」論争がそこかしこで勃発するだろうが、秋華賞3着以下の3歳馬がエリザベス女王杯4、6、7、10、14着は健闘したといえる。

スプリンターズSが秋の中山に移行した2000年以来、秋のGⅠで1人気5連勝ははじめてのこと。この記録も注目したい。秋はその年の集大成に向け主役がそれぞれ偉業をかけてGⅠに出走する。ラッキーライラックの連覇でここまでそれら偉業はすべて達成された。見えない不安が襲いかかり、心揺るがせる日常を手探りで生きている我々に競馬は難しくもあるがとても優しくもある。極上のドラマを見せてくれる秋競馬はまだまだ続く。

エリザベス女王杯レース展開


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。YouTubeチャンネル『ザ・グレート・カツキの競馬大好きチャンネル』にその化身が出演している。


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