「スポーツ × AI × データ解析でスポーツの観方を変える」

【アルゼンチン共和国杯】目黒記念と真逆の流れ 穴はユーキャンスマイルよりも前でレースを運べる馬

2020 11/8 07:00山崎エリカ
イメージ画像
このエントリーをはてなブックマークに追加

ⒸSPAIA

目黒記念とアルゼンチン共和国杯は真逆の流れ

東京芝2500mで施行されるレースは、1年間で目黒記念とアルゼンチン共和国杯の2レースのみ。しかし、この2レースはペースが真逆になることが多く、目黒記念とアルゼンチン共和国杯の適性はあまりリンクしない。

目黒記念は日本ダービーの後の一戦ということで、騎手がヒートアップして、積極的にレースを運び、緩みない流れることが多い。このため逃げ、先行馬に苦しい流れになることが多く、今年の目黒記念では1~4番手でレースを運んだ4頭が14着、16着、17着、18着に敗れた。

一方、アルゼンチン共和国杯はペースが遅くなることが多く、昨年はムイトオブリガードが最内3番手からレースの流れに乗って優勝した。また、今回出走の差し馬アイスバブルは前記のアルゼンチン共和国杯では11着に敗れているが、過去2年の目黒記念では2着の実績馬である。今年も快速馬不在。スローペースが濃厚のメンバー構成だけに、内枠&先行馬が有利になるとみている。

能力値、最高値ともに1位はユーキャンスマイル

アルゼンチン共和国杯PP指数



今年3月の阪神大賞典の優勝馬。他にも新潟記念勝ちの実績があり、距離2000m以上であれば、この馬の持ち味である鋭い末脚が生かせる。GⅠ競走でも善戦しているように、ここでは距離も能力も申し分ない。

問題は前走、芝3200m戦で中団からレースを運んだ後の一戦であるということ。この馬はもともと出脚が速くないので、トップハンデ58kgを背負って、スタートから坂を上るとなると、位置取りが後方からになる危険性もある。楽に中団くらいの位置が取れれば3着以内には来れる可能性が高いが、1番人気になるようならこの馬よりも前でレースを運べる馬の一発に期待してみるのも面白い。

能力値2位はサンレイポケット、3~5位は?

【能力値2位 サンレイポケット】
新潟記念、毎日王冠と中距離重賞でともに3着。新潟記念は夏の連続開催の最終週らしく、各馬が最後の直線の外へ外へと出して行き、ラスト4Fが11.9-10.8-0.7-11.6と速くなったが、サンレイポケットは中団の外から鋭い末脚でゴール前の大接戦に加わってきた。サトノガーネットの上がり3F31秒9の脅威の末脚に目を奪われがちだが、この馬の末脚も立派なもの。また、毎日王冠はスタートしてから押してポジションを取りに行ったにもかかわらず、最後までしっかりと伸びていた。

このようにしぶとく鋭い末脚を堅実に使えるのがこの馬の強みだが、エンジンの掛かりが遅いのが弱点。追いだされてからすぐに加速しないことが、勝ち切れない結果につながっている。極悪馬場の2400m戦、ジェーンSを制していることから今回の距離もこなせそうだが、ここも善戦までの可能性が高いだろう。

【能力値3位 メイショウテンゲン】
今年のダイヤモンドSで2着、強豪相手の阪神大賞典でも3着の実績。この馬は二の脚もかなり遅く、出遅れ癖もある。そのため現状は芝3000m以上がベスト。しかし、五分のスタートさえ切れれば、高速馬場の芝2500m戦でも通用しても不思議ない。この馬はこれまで15戦して出遅れなかったのはたったの3回だが、その3回は芝1800mの未勝利戦1着と、弥生賞優勝、阪神大賞典3着と全て好走している。

阪神大賞典はキセキの暴走、マクリで前が崩れて展開に恵まれた面が大きいが、この馬が優勝した弥生賞馬は重馬場だったにせよ、中団からまずまず鋭い脚が使えていた。出遅れれば序盤で置かれてしまう可能性が高く、その場合は展開に恵まれないと厳しいが、侮れない馬である。

【能力値4位 アールスター】
前々走の小倉記念で重賞初制覇を達成した。しかし、今夏の小倉は1週目は超絶高速馬場で、この馬はハイペースの中団からロスなく立ち回っての優勝。鞍上が上手く乗った結果だった。前走の新潟記念は好スタートを切って馬場の悪い内から勝ちに行ったのが敗因だけに、今回はある程度は巻き返して来るとは見ている。しかし、前々走の小倉記念はかなり噛み合っただけに、その時と同様の走りまでは望みづらい。 【能力値5位 ゴールドギア】
芝2400mで前半5F61.7-後半5F58.1の超絶スローペースとなった3走前、緑風SでPP指数の最高値を記録しているように、前半で脚をタメて瞬発力を生かすタイプ。今年に入ってからも4戦連続でメンバー最速の上がり3Fを記録し、前々走の目黒記念でも、勝ち馬キングオブコージに次ぐ末脚を使っている。

緑風S同様に超絶スローペースの末脚比べとなった前走、新潟記念では少し足りなかったが、直線で馬場の良い外に出せなかったのも伸び切れなった理由のひとつ。前走以上に走れてもいいはずだが、相手が強いだけにNO.1クラスの末脚が使えるかどうかが疑問。過大評価は禁物だ。

穴馬は前目でレースを運べる馬

【サトノルークス】
3歳春に芝2000mのすみれSを先行して勝利し、セントライト記念、菊花賞ともに2着と好走したように、長距離適性が高い。今年に入ってからは芝2000m戦で2戦連続で凡退と人気を裏切っている。しかし、緒戦の前々走の鳴尾記念こそ5Fの距離短縮だったこともあり、完全にレースの流れに乗れずに不発に終わったが、前走の小倉記念では勝ちに行く競馬をしており、結果展開が向かなかったという内容。大幅に良化を感じさせた。

今回は得意距離に変わる。前走で速い流れを経験していることで今回は流れに乗りやすいはずだ。しっかり好位で折り合えれば、菊花賞2着の実績馬がここで復活という可能性は十分に見込める。

【ラストドラフト】
デビュー2戦目で京成杯を勝利し、3歳冬には中日新聞杯で2着した実力馬。前走のケフェウスのレースラップは、12.7-11.0-12.2-11.4-11.0-11.8-12.0-12.0-12.3。向正面でポポカテペトルがまくったことでラスト5F目が後半最速11秒0のとてもタフな流れになった。これでは逃げたランスオブプラーナとポポカテペトルが仲良くしんがりとブービーに敗れるのも必然だ。つまり、6ヵ月の休養明けで先行したラストドラフトも負けるべくして負けているということ。

前走では楽に先行するスピードを見せていることから、調子に問題なく今回は良化が見込める。スローペースが濃厚の今回で、前で流れに乗れる強みが生きる可能性は十分にあるし、内枠も好材料。

※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)ユーキャンスマイルの前走指数「-21」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも2.1秒速い
●指数欄の背景色の緑は芝、茶色はダート
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補

ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる女性予想家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。


《関連記事》
【アルゼンチン共和国杯】複勝率0%のデータが2つも ハイブリッド式消去法で残ったのは?
【アルゼンチン共和国杯】「4歳6勝」「55.5キロ以上9勝」など データからはかつてほど波乱はなし
【みやこS予想】「4歳馬」が圧倒、「前走3番人気以内」が必須条件 ベストタッチダウン最有力