3度目の挑戦で戴冠
これまでのJBC3競走に加えて、今年からJBC2歳優駿が新設。そして史上初の大井、門別での2場開催で行われた4レースについて振り返っていこう。
3歳以上の牝馬によるJBCレディスクラシック(JpnⅠ・ダート1800m)。勝利したのは北村友騎手騎乗の2番人気ファッショニスタだった。
道中は逃げるサルサディオーネを行かせて2番手を追走。3コーナーを過ぎたあたりから鞍上の手が動きはじめ、左ムチが1発、2発と入る。直線に向いてからは、すぐ内にいたマドラスチェックとの激しい追い比べが続いたが抜かせず、アタマ差で押し切った。
2018年、2019年と2年連続で同レース3着とGⅠの舞台ではあと一歩というレースが続いていたファッショニスタだったが、6歳秋にして遂にビックタイトル獲得となった。
惜しくも2着に敗れたマドラスチェック。内枠で砂を被る競馬になった時にどうかという不安もあったが、逃げ馬の真後ろにつけて砂を被らないように騎乗した森騎手のファインプレーが光った。
単勝1.3倍と断然人気を集めていたマルシュロレーヌは、前2頭から3馬身差の3着と末脚不発に終わった。前走圧勝したレディスプレリュードは前後半3Fのラップが38.1-37.4だったのに対し、今回は37.3-37.6。瞬発力勝負に強いタイプなだけに、前走と比較すると展開が向かなかったと言えるだろう。
ⒸSPAIA(撮影:三木俊幸)
超ハイペースを差し切ったサブノジュニア
混戦模様となったJBCスプリント(JpnⅠ・ダート1200m)。レースは激しい先行争いとなり、最終的にモズスーパーフレアが逃げる形となったが、前半3Fは12.0-10.1-11.3と超ハイペース。中団の後方追走から直線で外に持ち出し、一気に突き抜けた地元大井のサブノジュニアが大仕事をやってのけた。
今春の東京スプリントで2着となり、その後も地方馬相手に3連勝と着実に力をつけていた。時計面でもJRA勢相手でも十分戦えることを証明していただけに、単に展開に恵まれただけでなく、実力で掴み取った勝利だと言っていい。今後もスプリント戦線の主役級として、地方競馬を引っ張る存在としての活躍に期待したい。
2着は3番手追走からしぶとく粘ったマテラスカイ。前走の東京盃では出遅れて11着と大敗したが、見事に巻き返した。サウジアラビアで行われたサウジアCでも2着となった実力馬、加えて高速馬場を得意とするタイプなので、しっかりとスタート決めればやはり強いと改めて感じたレースだった。
3着のブルドックボスは後方2、3番手から上がり最速の36.1を使って追い込んできた。それだけにスタートで大きく出遅れたのは痛かった。
ⒸSPAIA(撮影:三木俊幸)
初代王者は地元のラッキードリーム
門別競馬場で行われた記念すべき第1回のJBC2歳優駿(JpnⅢ・ダート1800m)。制したのは地元ホッカイドウ競馬のラッキードリームだった。道中は中団のインコースを追走、3角から徐々に位置を上げていき、4角では4番手まで進出。直線では力強く伸び、後方3番手追走から直線で大外に持ち出して伸びてきたトランセンデンスをクビ差凌いでゴールした。
この結果、地元勢がワンツー。南関東等でも活躍馬を輩出しているホッカイドウ競馬の2歳馬のレベルが高いことを証明してみせた。JRA勢では、4番手追走から早めに抜け出したレイニーデイが3着で最先着。先行馬にとって苦しい流れとなった中で、最後までしぶとく粘った点は評価できる。
新馬、プラタナス賞と連勝して挑んだ1番人気タイセイアゲインは、中団からレースを進めたが、JRAの競馬場よりも力のいる門別競馬場の馬場に苦戦したのか、13着に終わった。
日本のダート界では敵なし
今年のJBCを締めくくるメインレース、JBCクラシック(JpnⅠ・ダート2000m)。ここまで行われたレースでは全て1番人気馬が敗れるという結果に終わっていたが、このレースは単勝1.3倍の1番人気に支持されたクリソベリルが勝利した。
ダノンファラオとチュウワウィザードの2頭が並んでレースを引っ張り、前半1000mの通過は1:01.4、クリソベリルは3番手を追走する。直線に向いても一頭だけ手応え抜群、あっさりと抜け出すというレース内容でGⅠ級のレース4勝目。日本国内のレースでは8戦8勝ともはや日本のダート界では敵なしと言わざるを得ないだろう。
2着となった大井巧者のオメガパフュームに騎乗したデムーロ騎手は、クリソベリルの直後をピッタリとマークするという作戦、3着のチュウワウィザードは、瞬発力勝負では分が悪いということからルメール騎手はクリソベリルより前でレースを進めるという作戦で両者ともほぼ完璧なレース運びをみせたが、完敗だった。
地方馬最先着の4着となったミューチャリーは、中団よりやや後ろから1頭だけ追い込んできたものの、チュウワウィザードからさらに3馬身差。能力は出し切っているが、JRA勢の壁は厚く、今回も馬券圏内にはあと一歩届かなかった。
ⒸSPAIA(撮影:三木俊幸)
ライタープロフィール
三木俊幸
編集者として競馬に携わった後、フリーランスとなる。現在は競馬ライターとしてだけでなく、カメラマンとしてJRAや地方競馬など国内外の競馬場で取材活動を行っている。
《関連記事》
【アルゼンチン共和国杯】「4歳6勝」「55.5キロ以上9勝」など データからはかつてほど波乱はなし
【アルゼンチン共和国杯】複勝率0%のデータが2つも ハイブリッド式消去法で残ったのは?
【みやこS】今年は阪神だからこそ馬の個性を見極めたい 当日まで覚えておきたいデータと適性とは