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【京都大賞典】ロングスパートで適性発揮 上位陣はジャパンC・有馬記念でも楽しみ

2020 10/12 12:11勝木淳
2020年京都大賞典結果インフォグラフィックⒸSPAIA

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新戦法が完成しつつあるキセキ

10月11日に行われたGⅡ・京都大賞典。1、3番人気のキセキ、グローリーヴェイズほか前走宝塚記念組の疲労がどこまで取れているのか、焦点のひとつはそこだった。

宝塚記念は、凱旋門賞の舞台・パリロンシャン競馬場かと思うほどの、重い馬場のもとで行われた。クロノジェネシスが2着キセキに1秒差をつける圧勝劇だったわけだが、これは馬場の影響も大きかった。そのダメージはひと夏で回復できたのか。結果は17着だったグローリーヴェイズが勝ち、2着キセキがまたも2着と見事な立て直しだった。

まずはキセキ。引っかかった天皇賞(春)を受け、宝塚記念で武豊騎手が施した競馬がヒントとなった。大きく出遅れた阪神大賞典、古くは4歳日経賞の暴走など気性面のコントロールが課題の馬。些細なことでスイッチが入る繊細さを、かつての主戦・川田将雅騎手は早めにスパートする形で制御。名勝負の数々を演じた。

だが、惜敗ばかりで演出役という損な役回りが続いた。そこから脱却せんと武豊騎手が試みた競馬が、前半は後方でストレスを与えず、外をまくり気味に動いてスイッチを入れ、自身のストロングポイントであるロングスパートに持ち込むものだった。

京都大賞典では浜中俊騎手が騎乗。ゲートをゆっくり出ても無理に動かさず、前半は馬のスイッチに触れなかった。動いたのは3角手前の上り坂。4角の下りを利用してスイッチを入れ、大外から強襲した。

かなり勢いをつけたからこそ、4角で大きく膨れてしまった。着差0秒1はその差だろう。またも2着と勝利にあと一歩手が届かなかったのは残念だが、キセキの長所で短所を補う競馬の形が見えてきた。この秋、どこかでそれが結実するのではなかろうか。

ジャパンC、有馬記念で楽しみな上位陣

勝ったグローリーヴェイズは、ダンビュライトが引っ張る1000m通過1分0秒4の平均的な流れによってばらけた先行集団の背後を揉まれることなく追走、隙のない競馬で抜け出した。キセキの脚をよく知る川田騎手が乗っていたのも勝因で、抜け出すタイミングも申し分なかった。

香港でGⅠを勝ち、今回と同舞台の日経新春杯を勝った成績から、適度に時計を要する馬場の2400mがベスト。自身の適性に舞台設定がハマったことも味方した。今後の路線がわからないが、開幕週から不良馬場で行われた東京連続開催の最終日にあるジャパンCは、この馬に適した条件になる可能性が高く、出てくれば楽しみだ。

最後の600mは、11.6-11.6-11.8という減速の小さいラップだったため、勝負圏内は中団までだった。他力本願になる後方勢不発のなか、4角12番手から3着に押し上げたキングオブコージは価値があった。キセキが動いても釣られず、直線を向くまではとにかく我慢、そこから一気に追い出して3着。

休み明けだったにもかかわらず、反応が早かった。目黒記念もだが、横山典弘騎手が完全に手の内に入れた印象。現役屈指の戦略家が意のままに操る馬とあっては、目を離すわけにはいくまい。春の中山の内容から有馬記念で一発、という場面も想像がつく。ロードカナロア産駒ながら、母父ガリレオの影響によって距離適性は心配ない。グローリーヴェイズやキセキとこの着差、もはや格下とは言えない。

京都大賞典は毎日王冠とは異なる視点が必要。距離面から天皇賞(秋)で好走する馬よりジャパンC、有馬記念で走りそうな馬を探したい。グローリーヴェイズ、キセキ、キングオブコージの上位3頭はその視点で考えると合格点。いずれもロングスパート型で、適度に時計がかかる舞台に適性がある。軽い馬場でのレースになりやすい4回東京最終日の天皇賞(秋)より、後半二つのレースで怖い存在となりそうだ。

2020年京都大賞典結果インフォグラフィックⒸSPAIA


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。YouTubeチャンネル『ザ・グレート・カツキの競馬大好きチャンネル』にその化身が出演している。

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