「ヨーイドン」の末脚比べ
8月30日(日)に新潟競馬場で行われる新潟2歳S(GⅢ・芝1600m)。この夏にデビューを迎えたばかりの若駒11頭が新潟マイルに集結した。ここを勝って世代2頭目の重賞ウィナーの座を手にするのは果たしてどの馬か。今週もデータを踏まえて検討していこう。
はじめに、当該レースにおける過去10年の傾向を分析する。

重賞とはいえ、2歳戦ということでやはり末脚勝負の傾向が強い。4角で先頭または2番手だった馬で3着以内に好走したのは、わずか4頭のみなのに対して、4角10番手以下から好走した馬は11頭。2012年から2014年にかけては4角10番手以下の馬が2着以内を占めている。ラスト3Fは平均33.8、レースの質としては完全に「ヨーイドン」の競馬となっている。今年は11頭と少頭数となったこともあり、この傾向はまず疑いようがない。
2010年に人気薄の「マイネル軍団」2頭がワンツーを達成し波乱となったが、それ以降は9年連続で「前走・上がり3位以下」の馬は1頭も馬券になっていない。当然ながら末脚が最も重要な評価軸となるわけだが、出走馬の多くがこの条件をクリアしているため絞り込むのは簡単でない。もう少しデータを細かく見ていく必要がありそうだ。
左回り経験がほしい

前走で新馬勝ちを収めた馬は、未勝利を勝ちあがった馬と比べて良く見られがちであるが、連対率で比較すると前者は14.7%、後者は14.3%と、このレースに限ればほとんど差はない。比較的に人気になりにくいことを踏まえれば、新馬戦での取りこぼしは大目に見るのが良いだろう。

左回りの新潟コースへの対応ついては、以前に左回りの経験がなかった馬は過去10年で一度も連対できていない点に注意したい。デビューして間もない2歳馬なだけに、初めての左回りでスムーズさを欠くような場面も十分にありうるということだろう。阪神で新馬戦を勝利した人気の2頭にとってはやや心もとないデータといえる。
期待馬を破った勢いを評価
本命はブルーシンフォニーとする。新馬戦では直線で追い出しを待たされるかたちになったが、外に切り替えてからはあっさり抜け出して快勝。稍重で勝ちタイム自体は平凡であるが、ラスト3Fがほぼ減速しないラップを刻んでいるなかで外から先行馬を差し切っており、ロスを考えれば世代でもトップクラスのポテンシャルを秘めていると考える。引き続き左回りのマイルが舞台ということで、大きな死角もないとみる。
対抗はショックアクション。前走は今回と同じコースの未勝利戦で0秒7差の楽勝。早め先頭から粘って3着だった新馬戦とはうってかわって、好位の外目で脚を溜める競馬で勝ち上がりを果たした。追い出してからの反応が良く、やはり足を溜める競馬のほうが向いているタイプのようだ。こちらも稍重の馬場で上がりタイム自体は強調できないが、レース内容から考えると、末脚比べでも十分勝負になるはずだ。
3番手にはハヴァスを推したい。新馬戦では外枠から前に行きたがるのをジョッキーがどうにかなだめながらの競馬であったが、それでも4角2番手から上がり34.2の末脚を使って勝利。若さをのぞかせながらも能力の高さを見せつけた印象だ。道中でもっと落ち着いて運べればさらにキレる脚を使えるとみる。オッズ込みで期待したい一頭だ。
4番手にシュヴァリエローズ。前走は人気を分け合った相手との競り合いを制して新馬勝ち。この馬もスタートが良すぎて少し掛かる面を見せており、成長次第でさらに高いパフォーマンスが見込める一頭だ。初めての輸送・左回りコースへの対応がカギとなるが、能力的には当然ここでも上位争いに食い込んでくるだろう。
以下、相手にはジュラメントとフラーズダルムのキズナ産駒2頭まで押さえておく。前者は重賞で斤量が54kgに増えるのが不安材料ではあるが、成長次第では克服する可能性はあるだろう。逃げても速い上がりを使えるタイプであり、重賞でもチャンスはあるとみた。
▽新潟2歳S予想▽
◎ブルーシンフォニー
○ショックアクション
▲ハヴァス
△シュヴァリエローズ
×ジュラメント
×フラーズダルム
《ライタープロフィール》
東大ホースメンクラブ
約30年にわたる伝統をもつ東京大学の競馬サークル。現役東大生が日夜さまざまな角度から競馬を研究している。現在「東大ホースメンクラブの愉快な仲間たちのブログ」で予想を公開中。