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【日本ダービー】「皐月賞組の差し馬」と「別路線組の先行馬」がカギ!前哨戦を振り返る

2020 5/28 11:00東森カツヤ
2020年日本ダービーインフォグラフィックⒸSPAIA

ⒸSPAIA

高配当をもたらすのは別路線組?

日本ダービー、前走レース別回収率



5月31日(日)に東京競馬場で行われるのは日本ダービー(GⅠ・芝2400m)。コントレイルが父ディープインパクトに続いて無敗での2冠を達成するか、皐月賞2着のサリオスが雪辱を果たすか、注目の一戦だ。今回の記事ではダービーを予想する上で大きなヒントとなる前哨戦4レースを振り返る。データとレース内容の両面から浮上してくるのはどの馬だろうか。

まず、ダービーとその前走に関係するデータをいくつか見ていこう。(以下、特にことわりがなければデータは過去10年)

ダービーの前走レース別成績ⒸSPAIA
ダービー5番人気以内馬の前走レース別成績ⒸSPAIA
ダービー6番人気以下馬の前走レース別成績ⒸSPAIA



先週のオークスは桜花賞、フローラS、忘れな草賞の1着馬がそれぞれ1~3着という結果に。ウインマリリンが7番人気、ウインマイティーが13番人気でそれぞれ高配当を演出した。桜花賞馬が人気に応え、別路線組が配当にスパイスを加えた形だ。

ダービーでもこれに似た傾向があり、人気でよく馬券になるのは皐月賞組、人気薄での3着以内は青葉賞や京都新聞杯といった別路線組から出る(なお、NHKマイル組は22頭が出走して全て馬券圏外)。皐月賞組でダービー6番人気以下の馬は【1-0-1-49】と大不振。一方、別路線組は6番人気以下から6頭が馬券に入っていて、路線ごと全滅のNHKマイル組を除外すれば単複回収率も100%を超える。ダービーで高額配当をゲットするには、うまく彼らを絡める必要があるといえよう。

もうひとつ、皐月賞組と別路線組で傾向が分かれているポイントがある。それが脚質である。皐月賞で上がり最速をマークした馬はオルフェーヴル、ワンアンドオンリー、ドゥラメンテ、マカヒキと4勝を挙げている。また、上がり最速ではないがエイシンフラッシュ、レイデオロも皐月賞で後方から追い込む競馬でいい脚を見せていた馬。反対に皐月賞で4コーナーから一つでも着順を下げてゴールした馬は30頭出走して11年3着のベルシャザールしか馬券になっていない(しかも、この年の皐月賞は東京での代替開催)。結論を言ってしまえばセオリー通りで拍子抜けだが、中山の短い直線で差し脚を見せた馬が東京に替わって存分に能力を発揮するということ。

一方で、別路線組からのダービー3着内馬10頭中、過半数の6頭が前走で4コーナーを4番手以内で通過していた。このパターンからは14年3着マイネルフロスト(12番人気)、18年3着コズミックフォース(16番人気)、そして極めつけに19年1着ロジャーバローズ(12番人気)と、2桁人気で激走する馬も多く、一攫千金を夢見る穴党にとっては無視できない。

以上をまとめると、皐月賞組からは人気の差し馬を、別路線組からは穴の先行馬を、それぞれピックアップしていけば的中率とロマンの両取りが可能。

前置きが長くなってしまったが、このことを念頭に各レースの内容を振り返っていく。

コントレイルに死角なし!

皐月賞は前日の大雨で不良まで悪化した馬場が、朝からの好天で回復途上の稍重で施行。連続開催の最終週に加えて、不良馬場で競馬を行ったぶんだけ内側の傷みもあって、近年と比べると外差しの利く馬場だった。

レースラップは以下の通り。
12.2-11.3-12.1-11.8-12.4-12.9-12.2-11.9-11.8-12.1

キメラヴェリテが外枠から強引にハナを奪ったが、見た目に反して1000m通過は59.8という平均ペース。前にも後ろにも平等にチャンスのあるレースだった。

1着コントレイルは懸念された内枠を捌くためか、それまでより後方にじっくりと構える形。向こう正面で外に出すと4コーナーは大外から1頭だけ別次元の手応えで上がっていき、最後はサリオスをきっちりと交わして勝利。もちろん、上がり3Fもメンバー中最速。序盤で中途半端に位置をとらなかった鞍上の判断が見事だった。

「皐月賞組で人気の差し馬」という先述したポイントにも合致するし、東京コースも昨年の東スポ杯で圧巻のレコード勝ちを演じた舞台で不安どころかむしろプラス。今のところは死角らしい死角が見当たらず、デアリングタクトに続いて牡牝ともに無敗の2冠馬誕生が濃厚。

2着サリオスは距離不安もささやかれる中での一戦だったが、好位で完璧に折り合ってみせた。スタートで確保したポジションからほぼ動かず、最後の直線でも目の前が空いて理想的な競馬。それ故にコントレイルに先着された半馬身以上の実力差は感じた。

それでも、デビューから全てマイル、特に前走がハイペースのGⅠで好位から早め抜け出しというレースだった中であれだけピッタリ折り合えるなら、意外とこちらの方が距離延長を上手くこなす可能性がある。逆転の最有力候補であるのは間違いない。

3着ガロアクリークはスプリングSの勝ち馬。人気はなかったが、皐月賞でも末脚を引き出すレースに徹して3着確保。ただ、ダービーで前走0.6秒以上の着差で負けていた馬が【1-0-2-67】というデータがあり、今年の皐月賞で言えば3着以下はこれに該当するのが懸念。

4着ウインカーネリアンはキメラヴェリテを行かせて、自分はやや楽なペースでの2番手。最後まで馬場のいいラインを選びながら走り切っての4着。立ち回りの巧さが活かせる中山の方が合っている印象もあり、冒頭で述べた「皐月賞で4コーナーから着順を下げた馬」にも該当。再度の激走には懐疑的。

5着サトノフラッグは外から上がってくるコントレイルに抵抗するように進出するも、最後の直線で伸びあぐねて完敗という内容。ここまで述べてきたデータに照らしても微妙。

しかし、今回騎乗する武豊騎手が乗った弥生賞では大外からマクリ差しの快勝。皐月賞というよりダービーの予行演習に近い騎乗であり、タイプ的には東京向きなのは確か。以前マーフィー騎手が「今年のダービーを勝つ」と“予言”していた馬でもある。

青葉賞馬不在もヴァルコスに妙味

青葉賞からは残念ながら勝ち馬オーソリティが回避も、2着ヴァルコスがエントリー。
レースラップは以下の通り。
12.3-10.8-12.2-12.6-12.5-12.5-12.2-11.7-11.6-11.6-11.5-11.5

勝ち時計2.23.0は青葉賞のレースレコード。後半1000mから仕掛け始めるようなラップ構成ながら、最後の1ハロンで減速がない、ハイレベルな一戦といっていい。

このような速い馬場で、しかも早めにペースが上がるレースでは内で仕掛けをじっと待つ、もしくは期せずして仕掛け遅れた馬が好走しやすい。実際、この青葉賞も1、2、4着はいずれも道中内ラチ沿いを走っていた馬。

そんな背景を考慮すると、中盤で自ら追って上がっていき、外々を回りながら見せ場十分の2着だったヴァルコスの内容は出色だ。血統背景的にはひと夏越して、距離も延びる菊花賞が大目標に映るが、現状でどこまで上位に食い込めるか。オッズも含めて魅力的な1頭。青葉賞組はダービーを勝てない、という有名なジンクスを覆すか。

京都新聞杯はハイペースで差し馬台頭

京都新聞杯のラップタイムは以下の通り。
12.4-10.3-11.8-11.9-11.9-12.5-12.7-12.0-12.5-11.7-12.0

もともと今春の京都開催は差し馬の台頭が目立つ馬場傾向だが、そんな中で前半1000m通過58.3というハイペースで進んだ京都新聞杯。当然ながら差し、追い込み馬有利なレースだった。今年エントリーしている1、2着馬はどちらも展開の向いた差しで、この組は敬遠したい気持ち。

1着ディープボンドは好発を決めた後、先行争いの4頭を見送る形で控えて5番手。瞬時に加速できない面がある馬なので、かえってアドマイヤビルゴなどが苦しくなるところに脚を残せたのが勝因。これでアザレア賞から中1週、中2週、中2週というローテで、そのうち2回が関東輸送。常識で考えれば好走は難しそうだ。

2着マンオブスピリットはゆったりと後方に構え、4角でも軽く内に潜って息を入れながら展開を最大限味方につけての2着。さらに相手が強化される今回でどうこう、というほどのパフォーマンスには見えなかった。

プリンシパルS組は苦戦傾向も…

最後にプリンシパルS。先週のオークスでいうところのスイートピーS組とよく似た立ち位置で、最近では18年3着のコズミックフォース以外の馬券圏内がなく、トライアルとしての存在感が低下しているレース。

ラップタイムは以下の通り。
13.2-11.9-11.6-12.4-12.5-12.5-11.9-11.0-10.9-11.9

前半1000m通過が61.6、上がり3Fが33.8というスローの上がり勝負で、勝ち馬ビターエンダーはこの展開を無難に先行抜け出し。このレース単体ではそれほど高評価を与えられるものではない。
しかしながら、現状でキメラヴェリテ、ブラックマジックが除外対象のため、今年のダービーは逃げ馬不在。先行勢向きの展開になることが予想される。ビターエンダーは皐月賞にも出走して大敗はしているが、「別路線組の先行馬」に該当。また、同馬は中山で2度とも案外な競馬だったが、東京では前走の勝利と共同通信杯2着を含む4戦で全て馬券圏内の東京巧者。一発の可能性は秘めている。

前哨戦のまとめ

前哨戦回顧からの推奨馬はコントレイル、サリオス、ヴァルコス、ビターエンダーの4頭。この中で1頭本命を決めるならやはりコントレイルか。皐月賞組の差し馬で人気馬。その皐月賞は大外を堂々と回ってねじ伏せる圧巻の競馬で、東京コースも経験済み。枠順が大事なレースなので、よほど変な枠さえ引かなければ、という条件付きか。

今年のダービーは無観客で行われるため、現地へ観戦に赴けないのは極めて残念である。しかしこの我慢が一年後の競馬を、ひいてはスポーツ界全てを救うと信じて、テレビの前から熱い声援を送りたいと思う。

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