近年はイーブンからスロー傾向
ヴィクトリアマイルを圧勝したアーモンドアイの参戦、上半期の海外遠征中止で目標を切り替えた組も多く、安田記念は例年以上に豪華メンバーとなりそうだ。
まずは過去10年間の勝ち馬の傾向をみていく。
以前は前半800mが後半800mより早い、前傾ラップが多かったが、直近5年では後半が早い後傾ラップまで出現。前後半のラップ差が少ないイーブンペースが増えてきた。安田記念は全体時計に変化はないものの流れが変容しつつある。
今年は京王杯SCを逃げ切ったダノンスマッシュが休養の予定から変更、登録してきた。1400mで抑えがきいた逃げを打てたので、即ハイペースとはいかないだろうが、前哨戦を逃げ切った馬が先手を奪うならば後続のマークは厳しくなり、息が入りにくい流れになる可能性は高い。
前半の入りが緩めであれば先行勢が優位、その逆であれば10番手以降の差し馬勢が勝つ傾向なので、展開の読み次第で予想は柔軟に組み立てたいところだろう。
次に枠番別成績をみてみる。
過去10年で1枠は【0-3-2-14】と勝ち馬は出ておらず、8枠も【1-1-1-24】と極端な枠は成績が落ちる一方、真ん中の5枠は【4-1-0-15】、過去10年で4頭の勝ち馬が出ている。
4枠【0-0-1-18】、6枠【0-2-2-16】と両隣りは冴えないので、必ずしも真ん中が優位とはいえないが、枠の有利不利がない東京マイルで行われる割には枠のバイアスがかかるレースである。頭の片隅に入れておきたい。
格下から一気に頂点へ
やや意外なデータとしては前走クラス別成績をあげたい。
前走GⅠ組【2-3-1-27】、GⅡ組【3-6-8-74】でそれぞれ勝率6.1%、3.3%と1着になる確率は出走頭数と比例していない。連対率や複勝率は高く、実績上位のレースから参戦してくる馬のアタマ狙いは慎重に考えたほうがいいかもしれない。アーモンドアイにちょっとだけ、本当に少しだけ気になるデータだ。
反対にオープン特別【2-0-0-8】GⅢ【2-0-0-10】、勝率20.0%、16.7%と少ない頭数から勝ち馬を高確率で出し、2、3着はともにゼロと極端。格下のレースからここに出走する馬のなかに一発単勝狙いの穴馬が潜んでいる。
今年の登録馬ではダービー卿CT1着のクルーガーが該当。前々走の東京新聞杯は同舞台のイーブンペースを先行して5着。前半の800mがゆったりしたペースと読むならば穴に一考だろう。
続けて前走との距離比較を調べる。
距離短縮組は【2-2-3-24】で距離延長【4-3-1-38】より悪いのは注意したい。東京マイルは2000mに適性がある馬が強いという格言めいたものがあるが、安田記念でその格言を信じるのはオススメしない。複勝率は距離短縮組が高いので、短縮馬はわずか届かずというケースが多い。
なお前走マイル戦出走馬は【4-5-6-76】とこちらも3着以内馬を多く出しているが、頭数が多いために勝率4.4%、複勝率16.5%で短縮、延長を下回る結果。この辺に安田記念の難解さがある。今年は同距離組のアーモンドアイ。昨年は距離短縮で3着とデータ通りの結果だっただけに気になるところだ。
ウオッカと同ローテでウオッカ超えなるか
最後にレース別成績を具体的に見てみよう。
正直、前走レース別成績からこの組が優位だという見立ては不可能である。春シーズン末期の安田記念はマイル路線、中距離路線、短距離路線の交差点的なレースなので、傾向がバラバラすぎてローテーション別にこれとはあげにくい。
あえていえば、主要トライアルレースの京王杯SC【2-3-1-30】、マイラーズC【1-1-6-36】とこちらもアタマ狙いは厳しい。複勝率は16.7%、18.2%と頭数が多いもののそこそこな数字なので、機能しないとは言いがたいが、インディチャンプやダノンスマッシュに◎を打ち、単狙いとするのは危険だろう。
そしてそして、前走ヴィクトリアマイル組は【0-2-0-11】と頼りない。2着2回はここ2年のアエロリットで、アパパネは2年連続同ローテで6、16着。さらにさかのぼると08、09年連覇のウオッカが勝利。連覇を達成した09年は大渋滞から極限の瞬発力を発揮した伝説のレースで、ヴィクトリアマイルから連勝だった。
JRA+海外GⅠ7勝とウオッカと肩を並べたアーモンドアイは果たしてウオッカを超えられるだろうか。じっくり検討したい。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』にて記事を執筆。YouTubeチャンネル『ザ・グレート・カツキの競馬大好きチャンネル』にその化身が出演している。