10名のアマチュアが予選通過した2016年日本女子オープン
2016年日本女子オープンゴルフ選手権では、アマチュアの高校生ゴルファー畑岡奈紗選手が見事な優勝を飾った。畑岡選手はこの優勝により、向こう1年間のシード権を獲得、プロに転向してトーナメントに参戦している。大きなものを手に入れた大会だったが、優勝賞金の2800万円は畑岡選手ではなく、2位に入った堀琴音(ほりことね)選手に与えられた。
実は、この大会には畑岡選手のほかにも、6位タイに入った西村優菜(にしむらゆな)選手、10位タイに入った長野未祈(ながのみのり)選手など10名のアマチュア選手が予選を通過しているが、皆賞金をもらえていない。アマチュア選手は、プロのトーナメントで賞金をもらえないのだろうか。
アマチュアゴルファーの競技への参加について、日本ゴルフ協会が発行するゴルフ規則がある。それに「アマチュアゴルファーは、イベントや競技が始まる前に、そのイベントや競技で提供される賞金を受け取ることを放棄することで、そのイベントや競技に参加できる」という旨が書かれている。
つまり、アマチュア選手である畑岡選手は「アマチュア資格規則」により賞金を放棄して競技に臨み、プロである堀選手は「日本女子オープンゴルフ選手権競技規定」により、次位ながらも該当賞金額を受け取れたということだ。
2012年規定改訂ホールインワン
では、アマチュアゴルファーは、イベントや競技会でいかなる賞金も貰えないのかといえば、そういう訳でもない。2012年の規則改定で、ホールインワンに対する認識が見直されたのだ。
従来、ホールインワンは、ドライビングコンテストや、ニアレストホールなどと、同等の制限を受けてきた。つまり、賞品を出すなら、75,000円以内の商品に限られていたのだ。
それがホールインワン賞に関しては、2012年から賞品である必要はなく、賞金を設定してもよくなり、限度額の75,000円も撤廃さた。また上限も設定されておらず、既に何人かのアマチュアゴルファーがホールインワン賞の賞金を獲得しているのだ。
ホールインワン賞金規則改定の初年度となった、2012年日本女子プロゴルフ開幕戦2日目、地元沖縄のアマチュア高校生ゴルファー、伊波杏莉(いはあんり)選手が、13番ホールでホールインワンを達成、開催コースの琉球ゴルフ倶楽部から賞金50万円を贈られた。伊波選手は残念ながら予選落ちに終わったが、忘れられない大会になった。続いて2014年には、柏原明日架(かしわばらあすか)選手がアクサレディスゴルフトーナメント初日にホールインワンを出し、こちらは賞金30万円と宮崎牛1kgが送られた。
2016年規定改訂チャリティに対する規定
続いて2016年にもアマチュアゴルファーの賞金に関する規定が変更になっている。この規定変更はホールインワンなどの付属的なものではなく、成績順位に見合って配分されるトーナメント制の賞金本体に関するものだった。
今までプロにしか与えられなかった賞金が、アマチュアゴルファーの成績に基づき、チャリティーに寄付されるというものだ。ただ、この規則改定は、トーナメントに参加したアマチュアが主体となり、任意のチャリティー団体に寄付できるといったものではなく、トーナメント主催者の意向によるものだ。主催者は競技を行う前に、チャリティー団体を決めて、日本ゴルフ協会に申し込む必要がある。
したがって、一定順位を収めたアマチュアは、賞金を受け取れるわけではなく、チャリティーの贈り主にもなれない。ただし、一定の順位に入れば、その賞金が確実にどこかのチャリティー団体に寄付されることを意識し、トーナメントに臨むことができる。そして、より実感もわくだろう。
男女ツアーで違うアマチュアの扱い
最近はアマチュア選手の活躍が多くなったためか、トーナメントに出場するアマチュア選手の数も増えてきた。そしてアマチュア選手が成績を残せば、プロを脅かすケースも出てくる。
日本では、日本ゴルフツアー機構が主催する男子プロゴルフツアーと日本女子プロゴルフ協会が主催する女子プロゴルフツアーが主なトーナメントだ。トーナメントへの出場資格や人数は、そのトーナメントにより決められている。
プロの場合は、その年のシード権や、QTによる優先順位などにより、大枠は決まってくるが、アマチュアの出場枠が増えると、はじき出されるプロが出てくる。さらに、予選通過の問題もある。通常のトーナメントでは、予選を行い、予選通過者により決勝が行われ、決勝の順位に従って賞金額が決まってくる。賞金のためにトーナメントを転戦するプロにとって、予選を通過するかどうかは死活問題ともいえる。
男子ツアーの場合、ほとんどのトーナメントの予選通過は60位タイまでだが、上位のアマチュア選手の人数は入れないで、プロのみの順位で上位60位タイまでを数えている。対して女子プロトーナメントの場合は、予選通過者に対して、アマチュアもカウントする厳しいシステムになっている。
実際にはじき出されたプロ7名
アマチュア選手が優勝したプロゴルフトーナメントは、何回かあった。2014年に行われたKKT杯バンテリンレディスオープンもその中の一つだ。この試合はアマチュア5名が出場して行われ、高校1年生の勝みなみ選手が初日首位に立つと、2日目は2位に後退するものの、最終日イ・ボミ選手を1打差抑えて優勝を飾った。
もう一人、当時アマチュアだった森田遥(もりたはるか)選手も予選を通過、5人同スコアの23位タイに入っている。この結果、優勝賞金1800万円は単独2位のイ・ボミ選手がもらい、5人で分配予定だった23位タイの賞金は、22位〜25位までの4人で分けることになった。
決勝進出人数にアマチュアを入れてカウントする女子ツアーでは、このようなケースも起こる。2016年ヨコハマタイヤゴルフトーナメント PRGRレディスカップでは、予選カットで、ドラマが起こった。この大会は2日目終わって42位タイまでの51名が決勝ラウンドに進み、52位タイのプロ7名は予選落ちを喫した。
しかし、決勝進出者51名の中にアマチュアが3名も入っていたのだ。もしアマチュアをカウントしなければ、52位タイは49位タイになり、決勝に進めたのだ。
今後、アマチュア選手が賞金をもらえるようになるかはわからないが、アマチュア選手の台頭がプロの稼ぎに影響を与えることは、間違いないようだ。