プロゴルフツアー初出場の高校生1年生がまさかの優勝
PGAツアー2016-17年シーズン、公傷制度で臨む石川遼選手へは、苦しい戦いが続いている。与えられた試合数は20試合。この20試合と、2015-16年シーズンで既に消化した6試合の、フェデックスポイント、又は、賞金額によって来季の出場権が決まる。かつて日本ゴルフ界のホープとして、期待を集めた石川選手は、あの時の輝きをもう一度取り戻せるのだろうか。
2007年5月に行われたマンシングウェアオープンKSBカップで、その事件は起こった。日本プロゴルフツアーに初出場の高校1年生が、トッププロを抑えて優勝を勝ち取ったのだ。15歳9か月での優勝は日本はおろか、世界でも初めての出来事だった。
この優勝で2009年までのシード権を獲得した石川選手は、翌2008年1月プロ宣言を行い、プロゴルファーの道を歩き始める。高校生プロの誕生だった。プロ初勝利は2008年の関西オープンゴルフ選手権競技、ツアー初優勝はやはり2008年のマイナビABCチャンピオンシップだった。
プロ1年目でツアー初勝利を挙げるとともに、賞金額も1億円越えで5位に入り、前年の優勝がフロック(まぐれあたりの意)でなかったことを証明して、トッププロの仲間入りを果たした。
国内で輝き続ける2009年は最年少で賞金王に
2009年になって、石川選手の活躍にはますます拍車がかかる。マスターズ初出場もこの年だった。結果は予選落ちだったが、国内では、?全英への道?ミズノオープンよみうりクラシックで初優勝を挙げ、全英オープンへの出場権をつかむ。しかし、全英オープンでも予選落ちとメジャーではまだ活躍できなかった。この後、全米プロゴルフ選手権にも出場したが、予選は通過するものの、56位に沈んでいる。
それでも国内では活躍が続く。7月末のサン・クロレラクラシックで2勝目を挙げると、9月のフジサンケイクラシックでは5打差の圧勝で3勝目を挙げ、10月のコカ・コーラ東海クラシックでは4勝目を挙げる。
この年の賞金レースは池田勇太選手との一騎打ちになった。抜きつ抜かれつのシーソーゲームで、最終戦まで持ち越された。最終戦は19位と振るわなかったものの、結局、石川選手が賞金王を獲得する。弱冠18歳、賞金額183,524,051円の堂々たる最年少賞金王だった。
この間に世界ランキングも上昇。2008年末の60位から2009年末は30位と4大メジャー大会への出場が可能となる。
世界には早すぎたのか?メジャー大会で感じた世界の壁
2010年は4大メジャーすべてに出場する。マスターズでは1打及ばず2年連続の予選落ちとなったが、初出場となった全米オープンでは、初日-1で回り、首位と1打差の4位タイと好スタートを切る。2日目はイーブンだったが、2位タイに浮上、優勝が狙える位置で決勝に進んだ。
しかし石川選手の頑張りもここまでだった。3日目+4と7位タイまで後退すると、最終日は+9と崩れ、33位タイで終わった。石川選手は前半の戦いには手ごたえを感じたものの、後半の失速には体力、精神力が足りなかったと感想を述べている。
メジャー3戦目となる全英オープンでも初日は-4で17位タイのスタートから、最終的にはトータル-2の27位タイまで順位を下げた。4戦目全米プロゴルフ選手権では初日+4の130位タイと出遅れ、決勝には進めなかった。
この時はまだプロ3年目の18歳だ。世界の一流選手に交じって戦うには、体力も経験も足りなかったのかもしれない。しかし、これは後日PGAツアーに参戦する石川選手を暗示していたようにも思える。
それでも、国内では、3勝を挙げて、賞金ランキングも3位と元気なところを見せた。1ラウンド58の世界新記録を出したのもこの年だ。
PGA参戦で夢は膨らんだが
2013年からはPGAツアーに本格的に参戦する。2013年は22試合に出場したが、予選落ちが10試合もあり、トップ10は1回と満足な成績は残せなかった。最終成績でもフェデックスカップポイント141位、賞金ランキング149位と125位までに与えられる、来季のシード権が取れていない。
そこで下部ツアーとの入れ替え戦に回った石川選手は、WEB.COMツアー・ファイナルを4試合戦い、制限付きシードながら、2014年のPGAツアー出場権を手に入れる。
2014年は可能性を感じさせてくれた年だった。24試合に出場して予選落ちは相変わらず10回と多かったものの、トップテンが3回あり、そのうち1試合は2位タイに入っている。
レギュラーシーズンはフェデックスカップポイント75位で終了して、プレーオフに臨んだ。初戦のザ・バークレイズでは-6の19位とまずまずの成績で、フェデックスカップポイントも56位まで上げ、70位以内が出場できる3戦目に期待を持たせた。
しかし、2戦目のドイツバンク選手権では予選落ちを喫し、ポイントランクも72位に後退、2014年の挑戦は終わりを告げる。
2017年長期休養を乗り越えて再出発
2013年から2014年と成績は上昇し、2015年は飛躍の年かと思われた。出場試合も28試合と多くしたが、予選落ちは11試合あり、トップ10も2回と期待通りの成績は残せなかった。
それでも石川選手の真骨頂は見せてくれる。レギュラーシーズン最終戦を残して、フェデックスカップポイントは130位だった。最終戦も厳しい戦いになり、3日目を終わって47位とこのままではプレーオフシリーズにはすすめない。
しかし、最終日-4と伸ばし、31位タイで試合を終える。この結果ポイントランクは124位に上昇、ぎりぎりでプレーオフへと進めた。何かを持ってる石川選手だからできた、ぎりぎりでのプレーオフ進出だった。
2016年は2月初めに行われたウェイストマネジメント フェニックスオープンを最後に腰痛のため長期休養に入る。無理なフォームが原因だとも言われているが、175cm、72kgのスリムな体で、PGAツアーを戦うには、無理なスイングになったのも仕方がないのかもしれない。
2017年は、腰痛も治り元気な姿を見せてくれた。まだまだ苦戦の連続だが、一筋の光明も見えてきた。フォームが改善でき、ドライバーの飛距離が上がったのだ。これでフェアウェイヒット率が上がり自信を取り戻せば、もう一度輝ける日も、遠くはない。