大器の片りんを見せたアマチュア時代
2016年USLPGAにはアリヤ・ジュタヌガーン旋風が吹き荒れた。2015年賞金ランキング35位、世界ランキング63位、ツアー未勝利のタイ王国人プレーヤーが、年間5勝を挙げ、賞金ランキング1位のほかに、CMEポイントレース年間女王、最優秀選手をも獲得して、年間3冠を達成したのだ。
残された主要なタイトルは、3位に甘んじた平均ストロークと、世界ランキングのみになった。その世界ランキングは1年以上もリディア・コ選手が君臨している。2017年アリヤ・ジュタヌガーン選手は世界ランキング1位の座を、つかめるのだろうか。
アリヤ・ジュタヌガーン選手は、これまで無名だったわけではない。その素質は早くから垣間見えていた。USLPGAのトーナメント初出場は2007年、まだ11歳の頃だった。自国で行われるホンダLPGAタイランドでLPGA最年少出場記録を作っている。
2011年には全米女子アマチュア選手権で優勝、2012年にはカナダ女子アマチュア選手権で優勝と活躍して、全米ジュニア協会の女子最優秀選手に選ばれるなど期待をされた存在だった。そして2012年にはプロに転向、しばらくは欧州ツアーを主戦場にする。
2015年無冠時代の戦い
2015年は主戦場をUSLPGAに移し、29試合に出場した。開幕戦のコーツゴルフ選手権は11位とまずまずのスタートを切ると、次戦ピュアシルク バハマ LPGAクラシックでは、さっそく優勝争いを演じる。
初日7位タイ、2日目4位タイ、3日目3位タイと順位を上げ、最終日に追いつき3人でのプレーオフに入った。しかし、プレーオフ1ホール目でバーディーを奪われ2位タイに終わってしまった。次戦ISPSハンダオーストラリア女子オープンでも優勝争いを演じる。3日目を終わってリディア・コ選手と並んで首位タイで最終戦に臨んだが、+3とスコアを崩し3位になってしまった。
この試合の優勝は最終日-2とスコアを伸ばした、リディア・コ選手だ。格の違いを見せつけられる結果となった試合だった。
序盤はまずまずの戦いを見せるものの、中盤は予選落ちが続く。5月初めのノーステキサスLPGAシュートアウトから8月最初の全英リコー女子オープンまでの3か月間は1度も予選をとおることはできなかった。それでも終盤持ち直し、日本開催のTOTOジャパンクラシックでは5位に入るなど、2016年に期待を持たせた。
2016年大躍進の要因を探ってみる
2016年になるとアリヤ・ジュタヌガーン選手のゴルフが変わる。もともとアリヤ・ジュタヌガーン選手は飛ばし屋だ。しかし、実戦ではほとんどドライバーを使わない。USLPGAの計測では2015年平均飛距離は256.682ヤードで28位、2016年は263.747ヤードで22位と、ゴルフが変わるほどの変化ではない。
パーオン率を見てみると、2015年64.9%の99位から2016年は72.2%の19位へと大躍進だ。1試合で5ホールほどの違いがでる。
平均パット数(パーオンホールのパット数)は2015年が1.8で25位だったのが、2016年は1.751で3位とこちらも大躍進だ。この差は大きく、具体的に比べてみると一目瞭然だ。
2016年は28試合に出場して、パーオンが1403回ある。パット回数は平均パット1.8だと1403X1.8で約2525回、1.751で2456回だ。2パットの2806回との差がバーディ数になり、281回と350回だ。つまり69個もバーディ数が多くなる計算だ。28試合で69個は1試合で約2.46だ。実際平均スコアは2015年が72.099、2016年が69.870と2.229もよくなっている。パットの差が2016年大躍進の原因と言えそうだ。
世界中が驚いた初優勝からの3試合連続優勝
2016年は、1月末のピュアシルク バハマ LPGAクラシックで幕を開けた。しかしこの試合は決勝に進めず予選落ちを喫する。序盤戦はベスト10が数試合あるものの、これといった成績は残せなかった。
そして4月末のボランティア・オブ・アメリカ テキサスLPGAシュートアウトで6位と調子を上げて、ヨコハマタイヤLPGAクラシックに臨む。
初日は-2の8位タイ、2日目は-3とスコアを伸ばすもトータル-5で8位タイだった。3日目に10バーディ1ボギーの-9と爆発的なスコアがでて、トータル-14で首位に立つと、最終日は1打差でなんとか逃げ切り、USLPGAツアー初優勝を飾った。
そして好調のまま臨んだ次戦キングスミル選手権でも優勝を飾る。この試合は初日-2の19位タイから追い上げ、3日目?10までスコアを伸ばし、首位で最終日を迎えたところまでは、前回と同じだった。
しかし、この試合では最終日も-4とスコアを伸ばし逃げ切る。結果は同じ優勝でも、成長の跡が見られた優勝だった。
そして次戦LPGAボルヴィック選手権でも優勝を果たし、3連覇を達成した。今回の優勝は最終日1打差首位でスタートしてスコアを伸ばし2位以下に5打差をつけての優勝だった。
メジャー初優勝と3冠達成
3連勝で勢いをつけて臨んだメジャー2戦目全米女子オープンでは、いい日と悪い日が交互に来る展開で17位タイと不満が残る内容だった。それでも翌週のマラソンクラシックでは、最終日の追い上げでプレーオフまで進み、2位タイと調子を取り戻してきた。
そして迎えた全英リコー女子オープンで、念願のメジャー初優勝を飾った。この試合は初日-7の2位でスタートすると、2日目-10で2位タイ、3日目には2位に2打差をつける単独首位に立ち、最終日スコアを伸ばせないもののそのまま逃げ切ってしまった。
続いて行われたリオオリンピックでは、初日-6で首位スタートを切ったが、途中棄権で不安を抱かせた。しかし、すぐにカナディアンパシフィック女子オープンで優勝して不安を払しょくする。今季5勝目となったこの優勝は初日9位タイから追い上げ2日目に首位に立つと、3日目は最終日とスコアを伸ばす理想的な優勝だった。
そしてCMEポイントトップで迎えた最終戦では4位だったが、ポイント年間女王となり3冠を達成した。2016年3位に甘んじた平均ストロークのタイトルが取れれば、世界ランキング1位の座も近くなる。