世界への「登竜門」で鍵山優真が5年ぶり表彰台
日本人6人目の頂点には届かなかった。フィギュアスケート男子の新星で同世代のライバルでもある16歳の鍵山優真(神奈川・星槎国際高横浜)と佐藤駿(埼玉栄高)。3月6日、エストニアのタリンで行われた世界ジュニア選手権でショートプログラム(SP)1位だった冬季ユース五輪王者の鍵山はフリーで5位にとどまり、合計231.75点で同種目の日本勢5年ぶりの表彰台となる2位となった。
昨年12月のジュニア・グランプリ(GP)ファイナル覇者でSP5位だった佐藤駿(埼玉栄高)はフリー6位となり、221.62点で6位。4回転トーループを2度決めたアンドレイ・モザレフ(ロシア)が245.09点で初制覇した。
過去に2002年の高橋大輔(関大KFSC)や2010年の羽生結弦(ANA)、2015年の宇野昌磨(トヨタ自動車)らが制した世界への「登竜門」。来季からシニア本格参戦を表明した日本フィギュア界の未来を背負う2人は課題と収穫を持ち帰り、2年後の北京冬季五輪へ再スタートを切った。
サラブレッドの鍵山は高い総合力
フリーの演技を終えた鍵山は悔しそうに両手で顔を覆った。映画「タッカー」のアップテンポな音楽に乗せ、今季は10代の冬季ユース五輪などでも伸び伸びとした演技を見せてきたが、冒頭の4回転トーループから回転不足で転倒。続く3回転ループ、4回転トーループからの連続ジャンプは美しく着氷したが、SPで成功させた終盤のトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)もまさかの1回転半になるなど、ジャンプで精彩を欠いて、冬季ユース五輪2位のモザレフに逆転を許した。
五輪に2度出場した父、正和コーチの血を受け継ぎ、巧みなエッジワークやリズミカルなステップ、ジャンプの非凡なセンスを誇るサラブレッド。フリーでは定評のあるスピンで最高難度のレベル4も獲得し、総合力の高さを改めてアピールした。
2月の四大陸選手権では4回転トーループなど安定したジャンプや躍動感あふれる演技を見せてシニアの中で3位に入った。あと少しで手の届くところにあった「ジュニア世界一」のタイトルだけに、惜しい演技となった。
ジュニアGP覇者の佐藤駿はジャンプが武器
昨年のジュニア・グランプリ(GP)ファイナルを制覇した佐藤は冒頭の4回転ルッツで2回転と回転が抜け、さらに4回転トーループで転倒と得意のジャンプで乱れた。
SPでは冒頭のトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)を決めて波に乗り、自己ベストを更新したが、目標の「ジュニア2冠」には届かなかった。
仙台市出身の羽生と同じリンクでスケーティングを磨いてきた「羽生2世」とも呼ばれる大器。GPファイナルでは最高難度の4回転ルッツを成功させ、ジュニアの世界最高255.11点で頂点に立った。5年前に宇野が頂点に立ち、山本草太(中京大)が3位に入った同じタリンの会場で、日本勢のダブル表彰台は再現できなかったが、憧れの存在で背中を追う羽生からもその才能には太鼓判を押されている。
次世代のエース候補は来季シニア本格参戦
次世代のエースを争う鍵山と佐藤はジュニアを卒業し、ともに来季からシニアに本格参戦する。
鍵山はスケート技術の高さを示す技術点、表現力を示す演技点とも世界で評価が高く、総合力で勝負できる才能を冬季ユース五輪でも証明した。憧れの選手と公言する宇野以来となる世界ジュニアの頂点には立てなかったが、次の目標に掲げた2年後の北京五輪へ伸び盛りの楽しみな存在だ。
佐藤も4回転ジャンプを武器に、ジュニアGPファイナルでは同種目の日本勢で4人目の王者となった。ジュニアより年齢区分が下のノービスで4年連続日本一に輝いた素質が開花し、羽生の動画を参考にして既にフリップを除く4種類の4回転を習得している。
昨年11月の全日本ジュニア選手権では鍵山がフリーで2度の4回転トーループを決めて優勝、佐藤が2位だった。ともに伸び盛りの16歳。2人の「ライバル物語」はフィギュア界を今後も盛り上げてくれそうだ。
フィギュアスケート関連記事一覧