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【eスポーツが知りたい!】闘会議2018の取材とレポート②~韓国のeスポーツ団体「KeSPA」

2018 2/23 19:12SPAIA編集部
eスポーツ
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闘会議2018の取材とレポート②~韓国のeスポーツ団体「KeSPA」

 2018年2月10日(土)、11日(日)に開催された闘会議。最終日の目玉の一つとして行われた「闘会議選抜!クラロワ日韓戦」。この日のために選出された日本チームと韓国のトップチームによる白熱の試合は、韓国の勝利に終わった。SPAIA編集部は、試合直後の選手たちに感想を聞くことができた。

奥の3人が日本の選手(左からローラ、天GOD、RADWIMPS)、手前の3人が韓国の選手(左からHemos、X-Bow Master、Chasyu Rice)。負けた日本チームは悔しさをにじませていた。

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▲奥の3人が日本の選手(左からローラ、天GOD、RADWIMPS)、手前の3人が韓国の選手(左からHemos、X-Bow Master、Chasyu Rice)。負けた日本チームは悔しさをにじませていた。

 

 韓国チームの選手は全員20代で、就職活動中の大学生。現在はプロではなくアマチュアとして活動しており、今後はゲームの制作者、プロゲーマーなどを目指しているそうだ。
 一方、日本チームの選手は全員高校生。今後プロになりたいか、という質問に対しては、趣味として、別の仕事をしながらゲームを続けたいという答えで全員一致していた。
 ロンドン大会にも出場経験のある韓国のX-Bow Master選手は、闘会議がロンドンと同じくらい盛り上がっていて驚いたと感想を述べた。両チームともに、国旗をユニフォームに刻んでの試合は普段よりも緊張感があったようだ。

オンラインストラテジーゲーム「クラッシュ・ロワイヤル」の日韓戦。真剣勝負が繰り広げられた

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オンラインストラテジーゲーム「クラッシュ・ロワイヤル」の日韓戦。真剣勝負が繰り広げられた

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▲オンラインストラテジーゲーム「クラッシュ・ロワイヤル」の日韓戦。真剣勝負が繰り広げられた

 

 編集部では同日、韓国のeスポーツ団体「KeSPA(KOREA e-SPORTS ASSOCIATION)」に取材を行う機会を得た。韓国はeスポーツ強豪国と言われており、国内でもプロゲーマーに女性ファンがつくなど人気があるという。PRマネージャーのルーシー・ジョン氏にeスポーツ事情を詳しく聞いてみた。

左がPRマネージャーのルーシー・ジョン氏

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▲左がPRマネージャーのルーシー・ジョン氏

 

―韓国は世界的に見てもeスポーツ大国ですが、そのなりたちを教えてください。
ルーシー氏:韓国には20年前から漫画喫茶のPC版のようなものがあって、とても安く利用できます。それが、PCゲームが国民に浸透した大きな要因です。子供から大人までゲームに触れる機会が多く、やり続けることによって上達します。それに伴いeスポーツのテレビ番組も放送されるようになりました。
また、韓国では通信速度がとても早いので、それもコンシューマーゲームよりPCゲームが発展した理由です。

―韓国のeスポーツ史の中でも歴史的なゲームタイトルはなんですか?
ルーシー氏:一番は「スタークラフト」です。ここ5~6年は「League of Legends」が人気です。そういったゲームとともに成長してきました。国産ゲームだと「バトルグラウンド(PLAYER UNKNOWN'S BATTLE GROUNDS)」というゲームが出て、反応も良いので期待しています。

日本におけるeスポーツで最も一般的なジャンルは格闘ゲーム。国によって人気のジャンルやゲームは異なる。

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▲日本におけるeスポーツで最も一般的なジャンルは格闘ゲーム。国によって人気のジャンルやゲームは異なる。

 

―プロゲーマーの状況についてお伺いします。韓国では選手に最低賃金を定めているという話を聞いたのですが、どのようなシステムでしょうか。
ルーシー氏:チームが選手に対して最低賃金を払っているかどうかのチェックを協会で行っています。年俸制として1年で最低2000万ウォン(約200万円)と定めています。そのため、チームとトラブルがあると協会に相談できるようになっています。

―最低賃金のほかにスポンサーからのサポートがあるのですか。
ルーシー氏:スポンサーに関しては、本当にプロの野球・サッカー選手と考え方は同じです。韓国だとサムスンやLGなど野球のプロリーグを持っているスポンサーが存在しますが、そういった企業がチームと契約することによって、選手はユニフォームに企業のロゴを入れたり、スポンサーの方からチームにお金が支払われたりします。

―アスリートのように協会からビザが発行されたりするのですか?
ルーシー氏:それに関しては現在努力中です。韓国では徴兵制があるため、選手を海外に送っても良いのかという許可を政府にもらわないといけないですし、国内ではプロ選手として認められていても、他の国ではスポーツ選手として認められない場合もあります。なので、ビザの発行は正直難しいです。ただ、そのような支援は前向きに行っていきたいと思っています。

―韓国のプロライセンス制度について教えてください。
ルーシー氏:昔は「スタークラフト」のプロライセンスを発行していました。今は「スタークラフト」のライセンス制度はなく、協会の名簿に名前がある人をプロと認識しています。つまり、ライセンスがなくても名簿に名前があればプロです。
協会としては、選手を登録するときに、個々の選手ではなくチームを登録します。判断基準としては、実力や国際大会の出場歴などを見ます。例えば登録されたチームに新しい選手が入った場合、その選手はプロとみなされます。
eスポーツは発展途上なので、制度も色々変わってきています。まだ確定ではありませんが、これからはライセンスが発行できるよう、関係部署と協議を行う予定です。

闘会議2018にて、プロリーグ設立を目指して開催された「PURG JAPAN SERIES αリーグ」。オンライン予選を勝ち抜いた20チームが対戦した。

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▲闘会議2018にて、プロリーグ設立を目指して開催された「PURG JAPAN SERIES αリーグ」。オンライン予選を勝ち抜いた20チームが対戦した。

 

―プロライセンス制度のメリットは何だと思いますか?
ルーシー氏:協会からすると、管理が楽であることがメリットです。その代わり、他のライセンスをもらえていない人が実績を出す前につぶれてしまうというデメリットがあります。韓国には有能な選手がたくさんいますが、上手い選手は海外のリーグに入ったり、大会に出たりということが多いです。そこでちゃんとした報酬をもらえていなかったり、トラブルがあった時に協会としてサポートをすることもできます。

―日本のプロライセンス制度でクリアしなければならない課題は何だと思いますか?
ルーシー氏:韓国でもライセンスが発行できていないので、お伝えするのが難しいのですが……。例えば野球・サッカーは30年後もあまり変わっていないと思います。eスポーツの場合、ゲームの人気やバランス調整によって色々変わったりという変化が激しいんです。
そういったゲームのライセンスを発行しようとしても、どうしても手続きに時間がかかったり、その間にそのゲームが衰退してしまっていたりということがあります。例えば「スタークラフト」のライセンスを申請している間に「League of Legends」の人気が出るかもしれません。どのゲームにライセンスを出せば良いのかはとても難しいんです。

―最後に、日本のeスポーツのビジネスモデルに対してどう思われますか?
ルーシー氏:日本と韓国のビジネスモデルは少し異なります。日本のようにゲームメーカーがお金を出して大会を開くと反響は良いかもしれませんが、長期的な目線で見ると長くは続かないのではないかと思います。
資金力のあるスポンサーに協力してもらうことによって、よりeスポーツの文化が発展すると思います。集めた資金を選手に分配することによって、プロ選手になりたいと思う人たちの層も育成できると思います。

ルーシー・ジョン氏

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 eスポーツ先進国の韓国からリアルな状況を聞くことができた。闘会議では日本初のライセンスが発行される大会が開催されたが、これはほんの小さなステップで、これからクリアしていかなければならない課題はたくさん存在する。もともとゲーム大国である日本において、今後のeスポーツの発展に期待したい。