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「氷上のチェス」カーリングの面白さとルール解説、北京五輪へ究極の頭脳戦

2021 2/7 11:00田村崇仁
藤沢五月Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

2月8日開幕の日本選手権で優勝すれば北京五輪代表に

2018年平昌冬季五輪のカーリング女子で銅メダルに輝いたロコ・ソラーレは、試合中のエネルギー補給「もぐもぐタイム」や作戦会議で明るく発する「そだねー」が全国的な話題を呼び、一躍人気者となった。北海道稚内市で2月8日に開幕する日本選手権で今回も優勝すれば2022年北京五輪代表に決まる。

司令塔役となるスキップの藤沢五月、ムードメーカーでサードの吉田知那美、セカンド鈴木夕湖、リード吉田夕梨花のメンバーは健在だ。

英スコットランド発祥で「氷上のチェス」と呼ばれ、1998年長野冬季五輪で正式採用されたカーリングの魅力は、何と言っても緻密な戦略性と頭脳戦の要素が大きい攻防の駆け引きだろう。

先の展開を読みながら、妨害工作も作戦の一つ。最近は人工知能(AI)分析も進み、囲碁や将棋の世界のように1万通りから最適な一手を求める研究が進んでいる。そんなカーリングのいまさら聞けない基本ルールを解説しよう。

1チーム4人、10エンドの総得点で勝負

1チームは4人のメンバーで構成され、投げる順番でリード、セカンド、サード(バイススキップ)、スキップの4つのポジションに分かれる。

試合は1人が2投ずつ、相手チームと交互に投げるため、1チーム8回、両チーム合わせて16回を投げ終えると、得点をカウントする。この1区切りを「エンド」と呼び、1試合は10エンドで争われる。この点は野球と似ているのが特徴だ。

4番目に投げるスキップは作戦を組み立て、氷を読み、指示を出す。平昌五輪でも藤沢は最終局面でメダルを懸けた究極のショットが求められた。

40メートル先のハウス(円)狙う

カーリングとは氷上で取っ手の付いた重さ約20キロ、直径約30センチのストーン(石)を滑らせ、約40メートル先のハウス(円)を狙う一見シンプルなスポーツだ。

1エンドごとに、両チームがすべてのストーンを投げ終わった時点で得点を決定。得点できるのは1番中心に近いチームだけとなる。相手より中心に近いストーンすべてが得点になる。ハウスの外にあるストーンは得点にならない基本ルールだ。

それを10エンド繰り返すため、1試合は約2時間30分にも及ぶ。どちらのチームのストーンがハウスの内側か、ストーンはハウスに入っているのか見た目で分からない場合、専用のメジャーを使って0.25ミリまで正しい位置を測定する。

試合中の局面ごとにミリ単位のショットの精度が求められ、同じ頭脳戦といっても盤上に指先で意図した通りに置ける囲碁や将棋とは、そこが決定的に違う点だ。

ブラシで掃くスイープも重要な役割

カーリングと言えば、氷上をブラシで掃く場面も不思議に思う人もいるだろう。これはスイープと呼ばれ、重要な役割でもある。

ゴシゴシと氷の上をこするのはなぜか。氷の表面を溶かして滑りやすくし、ストーンをコントロールして作戦通りの場所に置くのが目的だ。

回転をかけて曲がるように投げたストーンの前でゴシゴシすると、曲がらずに滑っていく。逆にゴシゴシをやめると、すーっと曲がってカーブをかけられる。そのタイミングを指示するのが、スキップでもある。簡単なように見えて、実は非常に繊細でハードなスポーツなのがカーリングだ。

審判おらずフェアプレー大切、ギブアップも

またカーリングは伝統性を重んじたスポーツでもあり、ゴルフと同じく審判員がいないため、フェアプレー精神が大切な要素となる。

スポーツマンシップを基に、相手チームへの思いやりと敬意が求められ、試合途中に勝ち目が無いと判断した場合は、負けを認めてスキップが握手を求め、ギブアップする独特のルールもある。

氷の状態によってストーンの軌道や滑りやすさが影響を受けるため、故意に傷を付けたり、投球後に手をついたりしてはいけない規則も存在する。

妨害も大切な戦略

カーリングは単純に円の中心を狙うショットばかりではない。相手に妨害を図ることも大切な戦略の一つとなる。

相手チームの狙いを妨げるようにストーンを「ガード」として置いたり、既にあるストーンをハウスの外へはじき出す「テイクアウト」のショットを繰り出したり、ゲーム展開は先を読むまさに頭脳戦。両チームが相手のストーンを一つでも減らそうとテイクアウトの応酬になるゲーム展開は「テイクアウトゲーム」と呼ばれる。

一方で「ドローゲーム」と呼ばれ、ハウスにストーンを多く残していくゲーム展開もある。負けている場面では、複数点で逆転を狙うため、ドローゲームに持ち込むのが理想となる。

後攻が圧倒的に有利

攻守の順番は、第1エンドはコイントスによって決め、以降は前のエンドで勝利したチームが先行になるが、カーリングは後攻が圧倒的に有利なスポーツでもある。

後攻はラストストーンを投げるため、それまで相手のストーンが最も近くても最後のショットで弾き出したり、最も中心にストーンを置ければ最低1点は得点が入るからだ。この先行と後攻が入れ替わるタイミングこそ、カーリングの大きな見どころとも言われている。

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