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井上尚弥の挑戦者は韓国版ロッキーになれるのか?王者がワンサイド勝利の可能性も

2025 1/24 06:00SPAIA編集部
井上尚弥とキム・イェジュン,ⒸLemino/SECOND CAREER
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ⒸLemino/SECOND CAREER

両者とも55.2キロで計量一発パス

プロボクシングの世界スーパーバンタム級4団体統一王者・井上尚弥(31=大橋)が24日、東京・有明アリーナでWBO11位キム・イェジュン(32=韓国)を迎えて防衛戦を行う。23日には横浜市内で前日計量が行われ、両者ともリミットを約100グラム下回る55.2キロで一発パスした。

井上が所属する大橋ジムの大橋秀行会長は、2007年から世界王者不在の韓国ボクシング界の現状を説明した上で、挑戦者を「韓国版ロッキー」と持ち上げ、警戒感をにじませた。WBO11位、他3団体ではノーランクと世界的には無名に近いキムをそう例えたのは、かつての大ヒット映画「ロッキー」と状況が似ているからだ。

1976年に公開されたアメリカ映画で、名優シルベスター・スタローンの出世作。30歳になってもボクサーとして芽が出ず腐りかけていたロッキー・バルボア(スタローン)に、対戦相手が負傷したため代役を探していた世界ヘビー級王者アポロ・クリードからオファーが届く。

自堕落な生活を送っていたロッキーは、トレーナーのミッキーの下で気持ちを入れ替えてトレーニングに励んだ。ついに迎えた大一番は、アポロ圧倒的有利の予想を覆すダウン応酬の大熱戦。15回判定に持ち込まれ、ロッキーは惜しくも敗れるが、1979年公開の「ロッキー2」でリベンジを果たし、世界ヘビー級王者となった。

30歳を超えて千載一遇のチャンス…ロッキーと重なるキム

その後もシリーズ化され、日本でも大ヒットしたロッキーは、ボクサーのニックネームとして何度も使われてきた。代表的な選手が「浪速のロッキー」と呼ばれ、関西を中心に絶大な人気を誇った赤井英和。元WBCスーパーバンタム級王者・畑中清詞も「尾張のロッキー」と呼ばれたこともあった。

今回、井上に挑戦するキムは、赤井や畑中以上に「ロッキー」に近い境遇かもしれない。プロデビューは井上と同じ2012年。ここまで25戦して21勝(13KO)2敗2分けのレコードを残し、WBAアジアスーパーバンタム級王座やWBOオリエンタルスーパーバンタム級王座などの地域タイトルも獲得している。

しかし、32歳となった今も世界ランキングはWBOで11位に入るのがやっと。今回もサム・グッドマン(オーストラリア)のキャンセルで急遽、出番が回ってきたが、元々はアンダーカードに登場する予定だった。

オーストラリアで実績のあるジョン・バスタブルトレーナーの指導を仰ぎ、千載一遇のチャンスを活かすべく、この一戦に懸ける思いは強い。王者が圧倒的有利な戦前の予想も、ロッキーと重なる。勝てば、韓国18年ぶりの世界王者。これ以上は用意できないほど舞台装置が整っているのだ。

井上尚弥が中盤以降のTKO勝ちか

しかし、それでもなお、井上が負けるシーンは想像しにくい。むしろ実力差から一方的な展開になる可能性もある。

今回の試合までにどこまで修正できているか分からないが、過去の試合映像を見る限り、キムは攻め込まれると半身になって上体の動きだけでかわそうとする。しかし、スピードとパワーで勝る井上を相手に足を止めると、餌食になるのは時間の問題だ。

キムは決して足を止めることなく動き続け、相打ち覚悟でコンビネーションを打ち込む以外に勝機はないだろう。ロッキーは何度倒されても気合と根性で立ち上がったが、実際のリングで井上に倒されれば立ち上がることは困難だ。ロープに詰まるだけでもレフェリーに止められるリスクが高まる。

昨年5月のルイス・ネリ(メキシコ)戦で人生初のダウンを喫した井上は、不用意なカウンターを被弾することにも細心の注意を払うだろう。ラッキーパンチは当たらない。

早い回でのノックアウトもあり得るが、井上は最大限の敬意を払いながらキムをじわじわと追いつめるはず。待ちに待ったファンを十分に楽しませた上で、中盤以降のTKO勝利で王者が防衛すると見る。

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