18日にサウジアラビアで世界ヘビー級4団体王座統一戦
プロボクシング史上初の世界ヘビー級4団体王座統一戦が迫ってきた。WBCヘビー王者タイソン・フューリー(35=イギリス)とWBA・IBF・WBO同級王者オレクサンドル・ウシク(37=ウクライナ)が対戦する12回戦が5月18日、サウジアラビア・リヤドで行われる。
プロボクシング草創期はヘビー級(重量級)とライト級(軽量級)しかなく、長い歴史と高い人気を誇るヘビー級だが、主要4団体を統一したボクサーはいない。
あのマイク・タイソン(アメリカ)でもWBA・WBC・IBFの3団体統一王者。主要4団体で最も新しいWBOが発足した1988年当初は、新興団体としてタイトルの価値が低く見られていたこともあるが、イベンダー・ホリフィールド(アメリカ)もレノックス・ルイス(イギリス)もウラジミール・クリチコ(ウクライナ)も3団体どまりだった。
クルーザー級で4団体統一し、ヘビー級でも3団体統一王者のウシク
3団体統一王者のウシクはロンドン五輪ヘビー級で金メダルを獲得するなどアマチュアで93勝16敗の戦績を残してプロ転向。2018年にヘビー級より1階級下のクルーザー級で4団体統一王者となった。
その後ヘビー級に上げ、2021年9月にはロンドンのトッテナム・ホットスパースタジアムに詰め掛けた6万人以上の大観衆の前で、地元の英雄アンソニー・ジョシュア(イギリス)に判定勝ちし、WBA・IBF・WBOヘビー級王座を獲得。2階級制覇を達成した。
さらに翌2022年8月には、サウジアラビアでジョシュアとの再戦に判定勝ちし初防衛。2023年8月にはダニエル・デュボア(イギリス)に9回TKO勝ちして2度目の防衛に成功しており、21戦全勝(14KO)と無敗を誇っている。
元3団体統一王者で現WBC王者のフューリー
一方、父親がマイク・タイソンにちなんで命名したという現WBC王者タイソン・フューリーは、2015年にウラジミール・クリチコに判定勝ちしてWBA・IBF・WBOヘビー級王座を獲得。しかし、その後ドーピング違反や自身の健康問題などもあってベルトを返上し、イギリスアンチ・ドーピング機関から2年間の資格停止処分を受けた。
フューリーは2018年6月にリング復帰すると、同年12月にWBCヘビー級王者デオンテイ・ワイルダー(アメリカ)と引き分け。2020年2月の再戦で7回TKO勝ちし、WBC王座を獲得した。さらに2021年10月にはワイルダーとの3度目の対戦で11回KO勝ち。その後3度の防衛に成功しており、34勝(24KO)1分けとこちらも無敗をキープしている。
ウシクは昨年8月の前戦でダニエル・デュボア(イギリス)に9回TKO勝ちしたものの、5回にボディーを打たれて奪われたダウンがローブローと判定されたことが物議を醸した。デュボア陣営はローブローではなかったとして提訴したが却下された経緯がある。
フューリーも昨年10月の前戦は総合格闘家のフランシス・ガヌー(カメルーン)とのノンタイトル10回戦でダウンを奪われる大苦戦。辛くも2-1の判定勝ちを収めたが、判定を疑問視する声もあるほどだった。
さらに2月17日に決まっていたウシクとの大一番は、フューリーが練習中にケガをしたため延期。両者とも前戦で評価を落とした状況ではあるが、ついに雌雄を決する時がやってきた。
前回はウシクにPFP1位を明け渡した井上尚弥
ウシクが勝てば、テレンス・クロフォード(アメリカ)と井上尚弥(大橋)に次いで史上3人目の2階級で4団体統一となる。気になるのはパウンド・フォー・パウンド(PFP)の行方だ。
井上はルイス・ネリ(メキシコ)を豪快に倒して、世界で最も権威があるとされるアメリカのボクシング誌「ザ・リング」が選定する最新のPFPランキングで1位に返り咲いたばかり。しかし、ノニト・ドネア(フィリピン)に2回TKOして1位になった前回の2022年6月は、短期間で2位に陥落した。
その際、1位の座を譲ったのが、同年8月にジョシュアとの再戦に勝ったウシクだったのだ。
現在もウシクは井上、クロフォードに次いでPFP3位。中身の濃いKO勝利で史上3人目の偉業を達成すれば、井上は再びウシクに1位を明け渡す可能性もある。
いろいろな意味で目が離せない世界ヘビー級4団体王座統一戦。勝つのはウシクか、フューリーか、そしてPFPの行方は果たして…。
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