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Bリーグ三遠に現れた18歳の新星・河村勇輝 参戦7試合ですっかり主力に

2020 2/10 17:00ヨシモトカズキ
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2桁得点にスタメン出場…合流間もない中で三遠の主力に

Bリーグ4年目となる今季も、観客動員数は増え続けている。衰えぬ人気の中、新たなスター候補が誕生した。三遠ネオフェニックス#0河村勇輝、18歳の高校3年生である。

ウインターカップ2連覇を達成し、今春から東海大学に進学が決まっているが、ウインターカップ終了後から大学合流までの期間に“挑戦”の意味合いでBリーグ入りを決めた。

しかし現在の活躍は、ただの“挑戦”ではない。数クラブからのオファーがあった中、最下位の三遠を選んだのは少しでも多くの出場機会が得られる可能性に賭けてなのか。自分の実力がどこまで通用するか試し、通用しなかった課題を大学で克服するための自分探しを最大限にできるクラブが三遠だった。

1月25日の千葉ジェッツ戦で早速デビューを果たすと、いきなり8得点、3アシストを記録。その後は6試合全てで2桁得点、1月29日の新潟アルビレックス戦からはスタメンに収まっている。その新潟戦では4本連続の3Pシュートを含む24得点を挙げた。

これまで三遠を引っ張ってきた先輩ガードを押しのけスタメンに名を連ねるだけではなく、14.7得点、2.7アシスト、1.1スティールに24.6分の平均出場時間は、18歳の数字とは思えない。

高校での環境が即戦力の要因に

今季の三遠は開幕16連敗を喫するなど、非常に厳しいシーズンとなっている。攻守ともにちくはぐで、平均得点、失点ともにリーグワーストだ。FG%は43.7%とそこまで悪い数字ではないが、ターンオーバーの多さやリバウンドの少なさが大きく尾を引いている。

そこで河村が出場した5試合を見てみると、残念ながら勝利に導くことはできていない。チームとしても得点は69.1、失点82.3とシーズン平均を下回る数字だ。河村自身も5試合で21とセンセーショナルな活躍とは裏腹にミスの多さが目立つ。

一方で、チームの日本人選手トップの14.6という得点力は立派だ。3Pシュートの多さは気になるもののしっかりと沈めており、得意のドライブは本数が少ない中、高校とは違う異次元の高さ、身体の強さに苦しみながらもタフショットを決めている。ゲームメイクにおいてもピック&ロールからの展開、外国籍選手との連携はとても合流間もない選手とは思いえないほどだ。

その理由は高校の環境にある。福岡第一高校はアフリカからの留学生を抱え、彼らが攻撃の軸となる。1年時から主力の河村はすでに3年間外国人選手とのプレーを経験しており、日本人にはない高さ、身体能力を計算したパスを繰り出すことができる。三遠の外国籍選手とも数年間プレーしていたかのように連携がうまくいっているのは、福岡第一高校での経験が生かされている証拠だ。

長年、留学生のいる高校に在籍していた選手は大成しないという風潮があったが、河村のように大きなアドバンテージに変えることができるケースもある。

またガードながら2.4本のリバウンドを記録しているが、先のウインターカップでは決勝のトリプルダブル(得点、リバウンド、アシスト)を含め、2試合で2桁リバウンドを挙げた。172cmという身長ながら積極的にボールに絡んでいることが、リバウンドの増加につながっている。

「大学進学不要」は時期尚早な意見

このように素晴らしい成績を残している河村に向けられるのは、「そのままBリーグでプレーすべきでは?」という意見である。確かに5試合で残したインパクトは大きく、すでに三遠で主力になっていることを考えるとこのまま在籍することでチームが好転することも考えられる。

しかし、河村はまだ18歳である。毎週のように試合を行ったことはなく、平均出場時間の長さを考えると、ケガのリスクも試合をこなすごとに上がっていく可能性がある。まだ体作りもできておらず、現役Bリーガーとの差がボディブローのように効いてくるだろう。

そのため、まずは東海大学で試合、リーグ戦の経験を積みながらしっかり体作りを行うことが賢明な判断ではないだろうか。

福岡第一高校がファストブレイクを多用するチームだったため、ゲームメイクにおいて河村自身の引き出しが少ないこともこの5試合で若干見え始めている。大学でセットプレーの理解を深めれば、また違ったバスケットの感覚が生まれる可能性もある。

こうした課題があることは、当然と言えば当然だ。むしろこうしたことを洗いだすために、河村はBリーグに飛び込んだのだろう。活躍ができていることは大きな収穫だが、それ以上に課題が見つかっていることも今後の成長の糧になる。

三遠の河村を見られるのはあと1か月、まだまだバスケットファンを楽しませてくれそうだ。