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日本の至宝・八村塁が秘める可能性と課題 日本人初のNBAドラフト会議1巡目指名

2019 6/25 11:00SPAIA編集部
八村塁Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

順調に成長を遂げたアメリカでの3年間

日本時間6月21日の午前、アメリカ・バークレイズセンターで行われた2019年のNBAドラフト。ここでゴンザガ大3年生の八村塁がワシントン・ウィザーズから日本人初の1巡目9位で指名され、バスケットを始めた中学1年時から憧れていたNBA選手の仲間入りを果たした。

これで日本人としては栃木ブレックス#0田臥勇太、メンフィスグリズリーズ#18渡邊雄太に続く3人目のNBA選手となる。

明成高時代から将来を嘱望され、U17世界選手権では平均22.6得点をあげて得点王に輝くとそこから彼の人生は大きく変わった。

この大会の活躍で世界のスカウト陣から注目を集めると、その中からゴンザガ大を選択し、入学。1年時は出場機会に恵まれなかったものの、2年時はシックスマン、3年時はエースと着実に階段を上がり、“ホップ・ステップ・ジャンプ”で成長を続けた。

そんな彼が入団するウィザーズの現状と大学時代の成績から考察される強み、課題を見ていこう。

勤勉な働きとゴール付近の強さは日本で身に付けた

2018-19シーズンの八村の成績は19.7得点、6.5リバウンド、1.5アシスト。得点はチームで1位、リバウンドは同2位の成績だった。

また2P成功数は全米3位の260本を記録するなど、オフェンス面においては軒並み高水準。まだどれだけ選手が勝利に貢献したかを示すWin Sharesも7.4で10位に入った。

3P試投数が平均1本かつフリースロー試投数が6本、FG%が約6割ということが示しているように八村の主戦場はゴールに近いペイント付近である。

巧みなポストプレーやディフェンスの間を割って入る突破力は全て日本で身に付けたもので、多くのプレーがドリブルからのスタートとなるが、それでもNCAAで八村を止められる選手は少なかった。

それは明成高でポジションにこだわることなくファンダメンタルの強化に励んできた努力の証だ。身体接触にも強く、今季は37試合のうち実に19試合もバスケットカウントを決めていた。日本人選手の場合、ファウルを受けながらシュートを決めるシーンが見られるのはごく僅かだが、八村は半分以上の試合でそんな光景を演出していたのである。

またもう一つ、興味深い数字が得点効率を示すTS%である。これは高いほど効率良く得点をあげていることになるが、八村のそれは.639でチーム2位。昨季1桁得点に終わったのも2試合のみと安定して得点できるのが八村の強みである。

こうした成績を踏まえて現状のウィザーズを考えると、八村が活躍できる確率は非常に高い。今季のウィザーズは多くのフォワードが契約満了となっており、非常に手薄。そこでフロント陣が、両フォワードでイニシアチブを発揮できる八村に目を付けて早い段階で指名したのだろう。

最大の魅力であるミスマッチを作る力――相手が小さければインサイド、大きければアウトサイドでプレーできる器用さが評価されたと考えられる。

外角シュートとディフェンスの改善が不可欠

当然ながら課題もある。オフェンスにおいての課題は3Pシュート。現在のNBAは3Pシュートからの得点が主流と言われており、昨季の1試合試投数は平均32本と前年の29本をさらに更新。1998−99シーズンが13.2本とたった20年間で20本近く増えたのである。

八村は外からのプレーはできるものの、先述したように多くはドリブルから始まるプレー。ドライブやドリブルからゴールに背を向けてのポストプレーが主で、外角シュートを苦手としている。

両フォワードをこなせるというのも、SFではスラッシャー、PFではポストプレーヤーとしての意味合いで、昨季の3P%は41.7%と確率こそ良かったが、平均試投数は僅か1本。NBAで生き残るためには外角シュートの向上は避けては通れないだろう。

またディフェンスにおいても両フォワードをこなせることが裏目に出ると予想され、SFとしてはスピードが不足し、PFではサイズの小ささが課題に。特にNBAでは同ポジションに多くのスター選手がそろっているため、ディフェンスは大きな課題になりそうだ。

ただこれらの課題は、ウィザーズのスコット・ブルックスヘッドコーチが八村をどのポジションで起用するかを固めていけば解決する問題で、SFの場合は外角シュートと機動力、PFならばフィジカルとさらなるポストプレーの強化を目指していけば良い。

いずれにしても器用な選手だということに変わりはなく、ゴンザガ大で急成長を遂げたようにNBAでさらに技量を蓄えた選手になる可能性も十分ある。

日本の至宝と言えども、NBAではまだまだダイヤの原石。厳しい世界で揉まれて、さらなる輝きを放つ日が来るのが今から楽しみだ。