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崖っぷち4連敗から奇跡の快進撃 バスケ男子日本代表W杯出場(下)

2019 2/26 15:02SPAIA編集部
バスケットボール,日本代表,渡邉雄太,フリオ・ラマスHC,Ⓒゲッティイメージズ
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歴史的勝利が日本の快進撃のはじまりに

ワールドカップ アジア1次予選5戦目は、全勝のオーストラリアと全敗の日本の対戦となった。この試合には#22ニック・ファジーカス(川崎ブレイブサンダース)、#23八村塁(ゴンザガ大)が名を連ねたが、相手は世界ランキング10位の強豪。日本の勝利は厳しいと目されていた。

しかし、試合が始まるとファジーカス、八村が次々と得点。さらには各選手が攻守で奮闘し、接戦となる。体格差が圧倒的にあるチームに対して懸命に戦い続けた結果、79-78で大金星を挙げたのである。

この歴史的な勝利に自信を付けたチームはその後も連勝街道まっしぐら。

特に11月からの4連戦は八村、#12渡邉雄太(メンフィス・グリズリーズ)が所属チームとの兼ね合いで出場できない中、豪州戦までは迷いながらプレーをしていた選手たちが躍動。ファジーカスが軸となり、#6比江島慎(栃木ブレックス)、#18馬場雄大(アルバルク東京)がオフェンスで、#7篠山竜青(川崎ブレイブサンダース)がディフェンスで、#15竹内譲次と#24田中大貴(ともにアルバルク東京)が攻守で持ち味を発揮できるようになった。

そして最終戦のイラン戦ではダブルスコアで勝利。まさに“日本一丸”でワールドカップ出場を果たしたのである。

酸いも甘いも噛み分けたゴールデンエイジの存在

快挙達成の原動力となったのはファジーカスを軸に、馬場、田中、比江島、#2富樫勇樹(千葉ジェッツ)と若手から中堅の選手たち。そこにスパイスを加えたのが、#8太田敦也(三遠ネオフェニックス)、#10竹内公輔(栃木ブレックス)、そして竹内譲次である。

“ゴールデンエイジ”と呼ばれる彼らの学年は有望な選手が多く、高校時代から世代の先頭を走ってきた。2007年には彼らの世代を中心にユニバーシアード競技大会でベスト4入りを果たすなど、バスケット界を前進させた選手たちばかりだ。

現在は3名のみが代表に名を連ねているが、彼らの存在は大きく、竹内譲次はファジーカスや八村に触発され、全盛期に近い活躍を見せてくれた。2人との息の合ったコンビネーションプレーや体を張ったリバウンド、速攻の先頭を走りながら3Pシュートを決め、積極的なアタックでフリースローを獲得するなど、こちらの気持ちを突き動かすようなプレーが何度も見られた。

太田もリバウンドに絡んだり、ディフェンスで奮闘したりと短い時間でつなぎ役を果たした。また竹内公輔も出場機会は少なかったが、こちらもファジーカスとの連携で得点を挙げるなど、存在感を発揮。

この3名は10年以上日本代表にを背負い、2006年の世界選手権(現名称はワールドカップ)など幾多の悔しい試合を経験してきた。彼らの苦い経験があったからこそ、今の日本代表の強さがある。

不遇の時代を支え、今なお大きな存在感を放つ3選手はチームの精神的支えになるだろう。

エース比江島とキャプテン篠山の思い

「オーストラリア挑戦は失敗ではない」 今季序盤はオーストラリアのチームに所属した比江島が、日本に帰国後、成長を感じさせる圧巻のプレーを見せてきた。

代表ではエースとしてチームを勝利に導けない悔しさを感じていたが、ファジーカスらの加入で肩の荷が下りた。エースという立場は変わらないものの、純粋に点を取りに行く比江島が復活し、それがチームにいくつもの好循環をもたらした。

またキャプテンの#7篠山竜青(川崎ブレイブサンダース)は日本代表の勝利を目指しながら、常にそれがBリーグの人気につなげるよう活動してきた。彼が掲げた“日本一丸”というフレーズは今や日本代表、Bリーグを象徴する言葉となり、インタビューでも事あるごとにBリーグの発展について述べている。コート内でもディフェンスやルーズボールで奮闘し、コートの内外で日本代表とBリーグのために尽力している。

大いに手腕を発揮したフリオ・ラマスヘッドコーチ、ゴールデンエイジ同様、日本の暗黒期を知る佐古賢一アシスタントコーチ、人材発掘に尽力した東野智弥技術委員長、課題のフィジカル克服に一役買ったトレーナー陣と、日本男子バスケット界の夜明けは誰一人欠けてもなし得なかったことだろう。

日本一丸でチームを作り上げた日本男子バスケット界の未来は明るい。