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崖っぷち4連敗から奇跡の快進撃 バスケ男子日本代表W杯出場(上)

2019 2/26 07:00SPAIA編集部
バスケットボール,日本代表,渡邊雄太,八村塁
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Ⓒゲッティイメージズ

4連敗から始まった船出

4連敗から8連勝でワールドカップの切符をつかむ――。この奇跡を何人が想像しただろうか?

バスケットボール男子日本代表は、2月24日のワールドカップ アジア最終予選の最終戦でカタールに96-48で勝利し、2007年以来3大会ぶりの本戦出場を決めた。自力での出場は実に21年ぶりの快挙である。

2019年の中国大会から、約1年をかけてホーム&アウェイ方式で出場国を決めるシステムになり、2017年の11月から1次予選がスタート。

しかし日本は初戦のホーム戦で、フィリピンに71-77で敗戦。その後もことごとく接戦を落とし、開幕から4連敗。ワールドカップ出場どころか、1次予選敗退の危機に直面していた。

チームの課題を挙げるとすれば一つは得点力不足だった。

再三、フリオ・ラマスヘッドコーチは選手たちにゴールにアタックすることを求めてきたが、ラマスヘッドコーチと前ヘッドコーチのバスケットが異なり、スタイルの変化に選手たちがアジャストできなかった。

結果的に#6比江島慎(栃木ブレックス)の1対1、#3辻直人(川崎ブレイブサンダース)の外角シュート頼みになってしまう。インサイドでの得点が少なく、勝負どころのフリースローミスも目立っていた。

速い展開を持ち味としている日本だが、ディフェンスやリバウンドを得た直後の陣形が機能せず、いい形で速攻につながらない。結局は苦し紛れのハーフコートオフェンスを展開するしかなかった。

敗戦は自信をも奪っていく

もう一つの原因は選手たちが自信を失っていたこと。

2016年にBリーグが始まり、国内では「日本人選手のレベルは上がっているのでは?」と囁かれていた。事実、初年度のシーズン中に行われた親善試合やラマスヘッドコーチを迎えて最初の大会も、内容としてはそこまで悲観するものではなかった。

それが蓋を開けてみれば、ワールドカップ予選で4連敗というスタートになり、選手たちが期待を抱いていた自身の“成長”は打ち砕かれた。

試合を重ねるごとにラマスヘッドコーチが掲げるバスケットは完成形に近づいたが、自信を失った日本代表選手たちは半信半疑のままプレー。そうした迷いがミスを引き起こし、疑心暗鬼という負の連鎖に陥ってしまう。

この4連敗により、一度でも負けたらワールドカップ予選敗退、加えて国際バスケットボール連盟から2020年の東京オリンピックに向けた地元枠獲得のために課せられた「ワールドカップでベスト16以上」の挑戦権すら得られないという絶体絶命に直面した。

救世主登場 自信を取り戻した代表

そんなチームに救世主が現れた。元々、三屋裕子会長の体制になってから「日本国籍を持つ海外の隠れた人材の発掘」「帰化選手の発掘」を掲げ、東野智弥技術委員長を中心に様々な働きかけを行ってきたが、2018年4月に#22ニック・ファジーカス(川崎ブレイブサンダース)が日本国籍を取得した。

ファジーカスといえば、ここ数年で最も成績を残している外国籍選手にして、Bリーグの初代MVP。かねてより日本に対する愛情を表明していたファジーカスは、日本のユニホームに袖を通した。

さらにはアメリカで活躍する#12渡邊雄太(メンフィス・グリズリーズ)、#23八村塁(ゴンザガ大)の参加も決まり、大きな追い風になった。

練習で圧巻のプレーを見せる3選手を目の前にし、自信を喪失していた選手たちに再び闘争心が芽生える。改めて“ワールドカップ出場”への思いを確認したチームは新たな戦力を加えて、2018年6月29日、グループ全勝のオーストラリアを千葉ポートアリーナに迎え入れた。


崖っぷち4連敗から奇跡の快進撃 バスケ男子日本代表W杯出場(下)