男女とも初戦から好カード続出
第94回天皇杯・第85回皇后杯 全日本バスケットボール選手権大会は、ファイナルラウンドを2019年1月10日から1月13日、さいたまスーパーアリーナで開催する。
2018年9月の1次ラウンド、12月の2次ラウンドを勝ち上がってきたチームは男女8チームずつ。内訳は、男子はBリーグ勢、女子はWリーグ勢が占めた。今年の天皇杯を制した千葉ジェッツの3連覇、皇后杯を制したJX-ENEOSサンフラワーズの6連覇がかかる大会で、先日ファイナルラウンドの抽選会が行われた。
準々決勝のカードを決めるドロワーは、元日本代表で現在日本代表アシスタントコーチ、アンダーカテゴリーのヘッドコーチも兼任する「ミスターバスケットボール」こと佐古賢一氏、元日本代表でバスケットボール解説者の中川聴乃氏が、それぞれ男女別で担当した。

Ⓒマンティー・チダ
ファイナルラウンド準々決勝のカードは以下の通り。
【男子】
第1試合 サンロッカーズ渋谷 VS. 栃木ブレックス
第2試合 大阪エヴェッサ VS. 京都ハンナリーズ
第3試合 シーホース三河 VS. アルバルク東京
第4試合 川崎ブレイブサンダース VS. 千葉ジェッツ
【女子】
第1試合 デンソーアイリスVS.トヨタ紡織サンシャインラビッツ
第2試合 トヨタ自動車アンテローブスVS.三菱電機コアラーズ
第3試合 富士通レッドウェーブVS. 日立ハイテククーガーズ
第4試合 シャンソン化粧品シャンソンVマジック VS. JX-ENEOSサンフラワーズ
皇后杯の組み合わせはバランスよく決定
ファイナルラウンドに残った8チームが、どこのゾーンに入るのか。抽選会場には緊張感が漂っていた。
2回目のドロワーとなった佐古氏だが、司会者からの会場への呼び出しに、少し遅れて入った後「緊張しますよ」と苦笑いしながら心境を語った。昨年も「千葉VS.栃木」という好カードを演出したことについては「それには触れないで」と慌てる場面も。
中川氏は初のドロワーに「昨年ドロワーを務めていた大先輩(永田睦子氏)を見て、この立場やりたくないなあと思いながら、ここに立っているのが不思議」と緊張した面持ちだった。実際ドロワーをしているとき、手の震えがしっかりわかるぐらい緊張感が伝わってきた。

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まずは皇后杯の抽選から始まり、前回大会のベスト4が満遍なく分かれる結果となった。前回大会優勝チームの主将として、抽選を見守っていた吉田亜沙美(JX-ENEOS)が「良い抽選だった」とコメントするほど、特に偏りもなく終わった。中川氏は注目カードとして「トヨタ自動車アンテローブスVS.三菱電機コアラーズ」を挙げた。
「現在Wリーグで2位争いをしている両チームが初戦から対戦する」とコメント。「デンソーアイリスVS.トヨタ紡織サンシャインラビッツ」も5位争いを演じているので接戦になるのではないかと期待を寄せた。
天皇杯の組み合わせは驚きのカード続出
皇后杯の抽選が比較的順当に終わったことに対し、天皇杯の抽選は会見場にざわめきが起こるほど、驚きのカードが続出した。
佐古氏がまず手にしたチームの札は「大阪エヴェッサ」で、取り出したボールの番号は1番。前回優勝の千葉が自動的に8番に入ったので、千葉に対して大阪は反対の島に決まった。
その直後だった。
佐古氏は「川崎ブレイブサンダース」と書いてある紙を掴む。手にした瞬間、そばで抽選を見守っていた小野龍猛(千葉ジェッツ)の顔を見た。「なんで見たのですか?」と小野が笑って返した後、佐古氏が掴んだボールの番号は「7」。
会場にざわめきが起こった。川崎と千葉が初戦から顔を合わせることになったのだ。この2チームは、今季のBリーグ先出し開幕戦を戦い、昨季のチャンピオンシップクォーターファイナルでもGAME3までもつれる大接戦を演じていた。
しかし、ざわめきはこれで終わらなかった。暫くして、かつて所属していた「シーホース三河」のカードを手にして、「5」の番号を引く。続けて「アルバルク東京」を引いて「6」を引いたその時、会場は再びざわついた。千葉と川崎の隣に、三河とA東京が入ることになり、4チームが奇しくも同じ島に入ることになった。

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4チームはいずれも優勝経験があり、三河の9回を筆頭に、川崎3回、A東京・千葉2回と続く。反対側はSR渋谷の1回で、他の3チームが優勝未経験となり、何が起こるのか想像がつかない準々決勝の組み合わせとなった。
この組み合わせを演出?した佐古氏は「えっおかしいですか?」とおどけたように笑いを誘うと「トーナメントは一発勝負なので、相手がどこというよりは、顔ぶれに対するプライドが必要になる。少し偏った感はあるけど、千葉の3連覇に期待して頑張ってもらいたい」と偏りを認めるも、3連覇を狙う千葉にエールを送った。
その場に居合わせた小野は「どこが相手でなく、自分たちのバスケをしないといけない。開幕戦のリベンジもできるのでしっかりと準備をして、出だしからしっかりやっていきたい」と意気込みを語る。
「非常にきれいな営業ツールができますね」千葉ジェッツ・伊藤俊亮事業部長
ファイナルラウンドの組み合わせを、会見場の片隅で見守っていた人物がいた。昨季までは千葉ジェッツの選手として天皇杯2連覇に貢献し、現役引退後は事業部長として千葉ジェッツを支える“イートン”こと伊藤俊亮氏である。2mを超す身長を生かして、目線の高いところから写真を撮影するなど、すっかり事業部長の顔になっていた。
「これで良かったと思う。どこに来てほしいというのもない。多分大野さんも気にしないと思う」と伊藤氏。川崎と初戦を迎えることについては「(開幕戦の)やり直しを早いタイミングでさせてもらえるのは、本当にいい機会」と話す。

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昨季のBリーグチャンピオンシップもトーナメントを勝ち上がり、ファイナルでA東京と激突したが一発勝負に泣いた。「どうしても勝たないといけない試合に合わせる練習ができる良い機会」と終始前向きに捉えていた。
もちろん事業部長としての青写真も忘れていない。初戦川崎に勝利すれば、次はA東京と三河の勝者、決勝に勝ち残れば、初代Bリーグ王者で現在東地区首位を走る栃木と顔を合わせる可能性もある。
「川崎、A東京、栃木に勝って天皇杯3連覇となれば最高。非常にきれいな営業ツールができる。皆さんに楽しんでもらえるような素材づくりをしていきたい。レジェンド(佐古氏)に控室でお礼を言わないといけないですね」と最後は笑顔ながらも営業担当としてしっかりコメントした。
設立当初からのクラブチームとしては天皇杯初の3連覇に挑む千葉。3連覇となると、第86回のアイシンが4連覇して以来の快挙達成となる。「ミスターバスケットボール」が演出したトーナメントで、千葉が偉業を成し遂げるか注目したい。