琉球や島根の健闘で“東高西低”が徐々に変化
宇都宮ブレックスがBリーグ初年度以来2度目の優勝で幕を閉じた今シーズンのBリーグ。結果的に宇都宮はチャンピオンシップ(CS)で負けなしと圧倒的な強さを見せたが、#6比江島慎がエースとして覚醒したこと、シーズンから脅威だった選手層の厚さがここに来てさらに強大になったことが結果に結び付いた。
宇都宮のシーズン成績は僅差ながら東地区4位。CSはワイルドカードでの出場となった。初年度から東地区に強豪が集っている現象は変わらず、千葉ジェッツ、川崎ブレイブサンダース、アルバルク東京とファイナルを経験したクラブが安定した成績を残した。
ただ今シーズンは西地区の奮闘も光った。
その筆頭格が、関東地区以外で初めてファイナルに進出した琉球ゴールデンキングスだ。長年積み上げてきた組織力に年々戦力が加わり、今では東地区の強豪と遜色ない強さに。シーズンを通して日本人のケガ人が多かったものの、#30今村佳太がエースとして独り立ち。#14岸本隆一や#45ジャック・クーリーが安定した成績を残し、新加入#7アレン・ダーラムもチームにフィットした。
残念ながら2年間チームを引っ張った#13ドウェイン・エバンスが広島ドラゴンフライズに移籍することが決まったものの、来シーズンも西地区を席巻するだろう。
そして#3安藤誓哉、#14金丸晃輔の日本代表コンビを獲得した島根スサノオマジックも期待通り結果を残した。
シーズンは40勝15敗で、勝率.727は全体5位の数字。CSでも完全なメンバーではなかったA東京を下し、セミファイナルに進んだ。その後琉球に連敗でシーズン終了となったものの、試合自体は最後まで分からない展開だった。金丸が僅か1年で退団することになり、代わりのスウィングマンの獲得が急務だろう。
そのほか、7割近い勝率を残した名古屋ダイヤモンドドルフィンズも奮闘し、年々西地区のクラブが侮れない存在になっている。来シーズンはクラブ数が24になることで、3年ぶりに東中西の3地区制が復活するが、変わらず東地区に強豪がひしめき合っている以外はバランス良い地区分けとなった。
来シーズンこそ中地区、西地区から優勝クラブが出るのか、注目したい。
アジア枠と帰化選手の活性化で日本人ビッグマンの存在意義が薄れる
2020-21シーズンより導入された「アジア特別枠」。オンコートでは競技力の向上、オフコートで世界2位のリーグを目指す足掛かりとして、アジアを掌握することが狙いだ。
実際、フィリピンから若手の有望株から実績のあるベテランまで、シーズン開幕時に8人が加入。来シーズンも新規選手が加わるなど、さらにこの制度を利用する選手は増えるだろう。
そして日本での競技歴が長い選手は、次なるステップとして帰化を選ぶ傾向になっている。今シーズンのB1で帰化枠、アジア特別枠を一度も使わなかったのは、レバンガ北海道、サンロッカーズ渋谷、シーホース三河の3クラブのみだった。
帰化枠とアジア特別枠は外国籍選手2人と併用ができるため、先述した3クラブを除いたB1、さらにはB2でも運用が広がっている一方で、日本人選手の出場機会の減少を招いている。特にビッグマンは顕著だ。
パワーフォワードとセンターのポジションで、平均出場時間で20分を超えているのは三河の#32シェファーアヴィ幸樹のみで26.5分。続くビッグマンは18.3分で京都ハンナリーズ#43永吉佑也となっており、ローテーション入りこそ果たしているものの、十分な出場時間を与えられている選手は少ない。
こうした状況は日本代表の活動にも影響を及ぼしている。現在、来年開催予定のワールドカップ予選を日程間隔を空けて開催しているが、八村塁や渡邊雄太はNBAシーズン中もしくは休養に充てるため出場できないことが多い。そのためインサイドは帰化選手1人と国内のビッグマンに頼らざるを得ない状況だ。
これらのビッグマンは自チームで十分な出場機会を与えられておらず、実際、今年2月26日に行われたチャイニーズ・タイペイ戦では茨城ロボッツ#55谷口大智が35分を超える出場時間だったが、自チームでの平均は僅か9分。茨城では短い時間で外国籍選手のつなぎ役となるが、日本代表では身体を張って長時間相手と対峙するため、役割が大きく異なる。役割のアジャストにも時間がかかるだろう。
Bリーグが日本代表の強化と位置付けるのであれば、オンザコートのルールは改定するタイミングに来ているのかもしれない。
優勝を経験した指揮官が交代、大改革でチームの状況は好転するか?
選手の移籍が徐々に固まりつつあるが、今オフのサプライズと言えば優勝経験のあるヘッドコーチの退任だ。
2017−18、18−19に連覇を果たしたA東京のルカ・パヴィチェヴィッチヘッドコーチが退任を発表。今シーズンは大型補強を敢行したものの、ケガ人続出で後半戦に失速し、CSでも初戦で姿を消した。#24田中大貴ら主力選手が残るだけに、実績のある選手と新指揮官がアジャストすれば十分優勝も狙える。
また昨シーズンの王者・千葉を強豪に押し上げた大野篤史ヘッドコーチも契約解除となった。今シーズンも東地区で優勝したが、A東京同様に後半に不安定な戦いが続き、CSでも宇都宮に敗戦。#2富樫勇樹、#31原修太ら中堅選手は残留する方向だが、千葉のスタイルを作り上げた大野ヘッドコーチがチームを離れることは痛手だ。
そして今シーズン優勝の宇都宮を率いた安齋竜三ヘッドコーチも退団となる。選手、アシスタントコーチ、ヘッドコーチで優勝を経験し、15年在籍した功労者なだけに惜しまれつつの退任だが、主力の多くが残留するため大きく力が落ちるということはないだろう。
ただ、この3人の指揮官がリーグに与えたインパクトは大きく、シーズンの勢力図を大きく変える出来事になる可能性もある。
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